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お疲れ女神の無茶振り世直し転生 不老不死おじさんの苦悩  作者: mojito
第2章 町のギルドとスラム編

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応急処置と、変わり者と呼ばれる

方針が決まってからのメレン村の動きは早かった。

誠二の指示のもと、村の男たちが総出で作業に取りかかる。まずは井戸の目と鼻の先にあった豚小屋の解体と移設だ。豚たちを井戸から遠く離れた、下傾斜の敷地へと移し替える作業だけでも一苦労だったが、本当の勝負はそこからだった。


「セージさん! 次はどこを掘ればいいんだ!?」


「井戸と元の豚小屋があった場所の間に、横幅二メートル、深さ一メートルほどの溝を掘ってください! 汚水の地下ルートを遮断します!」


「よっしゃ、任せろ!」


誠二もまた、自らスコップを手にして土を掘り起こした。

この世界に転生した際、不老不死の体とともに得た「規格外の怪力」が、ここでは遺憾なく発揮された。大人の男が二人がかりでようやく持ち上げるような粘土混じりの巨大な岩や根っこを、誠二は軽々と片手で掘り起こし、放り投げていく。


「な、なんだあの兄ちゃんの腕力は……!」


「まるで岩石ゴレムじゃないか……!」


周囲の村人たちが目を丸くしてどよめいたが、誠二は苦笑いを浮かべながら誤魔化した。


「力仕事だけは得意なんです! さあ、どんどん土を運びましょう!」


溝を掘り終えると、今度は村の近くで採れる密度の高い質の良い粘土を敷き詰めていく。粘土を幾重にも重ね、木槌で強く叩いて突き固めることで、地中の汚水が井戸側へ染み出すのを防ぐ「遮水壁」を作り上げるのだ。

泥にまみれながら、作業を続けることおよそ半日。太陽が西の空へと傾きかけた頃、なんとか応急の遮水対策が完了した。

井戸の底に残っていた濁った水を桶で何度も汲み出し、底に溜まった泥を浚(さら)うと、やがて井戸の底から湧き出してくる水は、泥の混ざらない透明度を取り戻し始めていた。完全な浄化にはもう少し時間がかかるだろうが、これ以上の汚染は確実に防げるはずだった。


「出た……! 澄んだ水だ! 澄んだ水が出てきたぞーっ!」


井戸の底を覗き込んでいた村人が歓声を上げると、広場に集まっていた村人たちから一斉に歓声と拍手が巻き起こった。抱き合って喜ぶ者、涙を流しながら井戸水で顔を洗う者たちの姿があった。


「セージさん、本当に……本当にありがとうございます!」


村長は誠二の手を力強く握り締め、何度も頭を下げた。


「あんたのおかげで、村が……子どもたちが救われた。何とお礼を言っていいか……!」


「いいえ、皆さんが一丸となって作業してくれたおかげですよ。完全に水が綺麗になるまでは、もう少し煮沸してから飲むようにしてくださいね」


「ああ、言われた通りにする! ……バロンさん、このお方は素晴らしいお連れさんだな。次からもぜひ、この村に寄っていってくださいよ。精いっぱいの恩返しをさせてもらうから!」


「おう、任せとけ。次に来るときは、うまい酒でも持ってきてやるよ」


バロンは満足げに豪快に笑うと、泥だらけの誠二の肩をぽんと叩いた。


夕闇が迫る中、誠二たちは惜しまれながらメレン村をあとにした。

街道へと戻った荷馬車の荷台で、誠二は疲れた体を投げ出し、ほっと深く息をついた。服は泥だらけだったが、胸の中にはさわやかな達成感が広がっていた。


御者台から手綱を握るバロンが、ちらりと後ろの誠二を振り返る。


「お前、通りすがりの村の面倒までわざわざ見るなんてな。おまけにあの怪力だ、一体全体何者なんだか」


「……なんででしょうね。困ってる人が目の前にいると、昔からどうにも放っておけなくて」


「変わってるな、お前。普通の旅人や冒険者なら、金にもならねえ作業に半日も費やしたりしねえよ」


「あはは、よく言われます」


(……この性分、たぶん一生治らないんだろうな)


誠二は苦笑いしながら、荷馬車の荷台で長足を伸ばした。

前世の記憶が脳裏をよぎる。日本の会社員だった頃もそうだった。自分の担当でもないのに、困っている後輩の手伝いをしたり、取引先の無理な相談に乗り過ぎて残業が増え、「お前は人が良すぎる。要領が悪いんだよ」と上司に呆れられたことが何度もあった。

世界が変わっても、不老不死になっても、人間の根底にある根っからの「お人好し」は変わらないらしい。


「次はどこに寄るんですか、バロンさん」


誠二が尋ねると、バロンの表情が少し曇った。


「もう寄り道はなしだ。次は大きな町まで一直線……のはずだったんだがな」


「……? はずだった、ってどういうことです?」


「いや、ただの勘だ。長年この街道を行き来して商売してると、なんとなく空気でわかるんだよ。今日は、どうも街道が荒れる日だってな」


「荒れる……盗賊とかですか?」


「さあな。だが、商人の勘ってのは意外と馬鹿にできねえもんだ。警戒しておくに越したことはねえ」


バロンの言葉には、長年の経験に裏打ちされた独特の重みがあった。誠二は半信半疑ながらも、その言葉を頭の片隅に留め、身構えることにした。


「そういえばセージ、お前、セリオン村を出るときもそうだったが、随分みんなに慕われてたな」


「そうですか? 普通ですよ」


「あんなに大勢の村人に涙ぐまれながら見送られる流れ者なんて、俺は今まで見たことねえよ。よっぽどいいことをしてきたんだろうな」


「大したことはしてないんですけどね。ただ、頼まれたことをやっただけで……」


「またそれか。お前、謙遜が過ぎるぞ。そういうところも変わってるんだよな」


バロンは呆れたように笑いながら、手綱を握り直した。

馬車が進むにつれて、街道の先には鬱蒼とした深い森が迫り、薄暗い木々が不気味な影を落とし始めていた。風が木々を揺らし、どこか胸騒ぎのするざわめきを運んでくる。

拙作、お読みいただきありがとうございます!

まだ試行錯誤してますので改稿する可能性があります。

よろしくお願いいたします。

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