幕間 女神、また無茶振りに来る
その夜も、誠二はちゃぶ台の前に座らされていた。
「誠二さん、薬の改良、お疲れさまでした! 子どもたち、喜んでたみたいですね」
「……はい、おかげさまで」
(『おかげさまで』って、あんたのおかげじゃないんだけどな)
「実はですね」
「……また、ですか」
「隣の谷の村、結局あれから誰も行ってないみたいで。それと、そこからさらに向こうの町にも、スラムがあるらしいんですよ。治安が悪くて、人が全然寄り付かないとか」
「……女神様、担当地域、広すぎませんか」
「わたくし一人で管理してるので、しょうがないんです」
「予算も人手も足りないって、最初に言ってましたよね」
「よく覚えてますね! そうなんです、なので、誠二さんが頼りで」
(結局、全部俺に投げるんじゃないか、これ)
誠二は深いため息をついた。だが、不思議と「嫌だ」とは思わなかった。困っている人がいる、と聞かされてしまうと、放っておけない。それが、良くも悪くも自分の性分なのだと、この二年ですっかり思い知らされていた。
「……わかりました。この村が落ち着いたら、町の方も見てみます」
「本当ですか! さすが誠二さん、頼りにしてます!」
「あの、期限とか優先順位とか、もう少し具体的に――」
「それじゃ、おやすみなさい!」
(結局、最後まで話聞いてくれないんだよな、この人)
誠二は夢の中で肩を落としながら、それでも小さく笑ってしまった。
目を覚ますと、いつもの村の朝だった。




