塗り薬の改良
「メイベルさん、この薬なんですが」
「なんだい、藪から棒に」
「効能はいいのに、匂いがきつくて、傷口に塗るとひどく沁みますよね」
「そりゃあ、効くものは大抵、痛いんだよ」
「子どもたちが嫌がって、塗るだけで一悶着になってるのを見ました」
「……それは、まあ、そうだね」
「匂いのきつい草を減らして、その分、香りの穏やかな別の薬草や花からとった香料を混ぜてみるのはどうでしょう。あと、蜜蝋のようなもので軟膏状にすれば、塗ったときの沁みる感じも和らぐはずです」
「……あたしの配合に、文句をつける気かい」
「いえ、否定はしません。効能はそのままに、使い勝手だけを変えたいんです」
「効能はそのまま、ねえ」
(――ここは慎重にいかないとな。前世でも、既存の商品にケチをつけるみたいな言い方すると、一発でへそ曲げられたもんだ)
誠二は言葉を選びながら続けた。
「試すだけ、試してみましょう。効かなければ、元の配合に戻せばいいだけです」
「……まあ、それもそうだね。お前さんの言う『試すだけ』ってやつには、大抵世話になってるし」
何度か配合を試すうち、効能をほとんど落とさずに、匂いも沁みも和らげた新しい塗り薬が完成した。
「セージ! 今度の薬、全然痛くない!」
子どもたちが口々にはしゃぐのを見て、メイベルは満足げに頷いた。
「セージ、お前さんのおかげで、あたしの薬も少しは進化したね」
「メイベルさんの土台があってこそです」
「そういう謙遜、ドーランやガレンにも言ってやんな。あの二人、お前さんのこと自慢げに話してるよ」
「……それは、なんだか恥ずかしいですね」
誠二はぼそりと呟いて、頬をかいた。




