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事前予約で確保していたロッジへ戻ると、一息をつく間も無く自分の荷物をバックパックへ纏め始めることにした。
少なくともミッションの遂行を完了した今となっては、何時までもアラスカに留まっている理由はないので、一刻も早くレンタル・ロッジを引き払ってフォート・ブラック基地へ帰還して自宅でゆっくりと寛ぎたい。
バックパックに荷物を詰め込み、このロッジを借り受けた際に渡されていた鍵を持ってロッジの玄関を出て管理人が居る事務所へ向かい、使用した日数分の料金を払いロッジの鍵を返却するのと交換するように俺が乗ってきた車のキーが渡される。
事務所の前にはロッジの利用者だけが自家用車を停めておける駐車場があり、俺も乗ってきたシボレーのトラバースを駐車していたので、事務所で渡されたキーで運転席のドアを開けて運転席シートの脇にあるレバーを引いて、後部のハッチバックドアを開ける。
開けたハッチバックドアの方へバックパックやTFMボルトアクション・ライフル銃を収納しているナイロン製のソフトケースを持って向かい、車両後部のラッゲージ・スペースにバックパックやソフトケースを積み込んでハッチバックドアを閉めて、改めてドライバー・シートへ戻って乗り込んでからシートベルトを締めて、エンジンをイグニッションさせて暫くアイドリングを行う。
油温や水温が充分に温まったところで、一度ブレーキを踏んでからギアをドライブにシフトさせてブレーキ・ペダルから足を離してサイドブレーキを外すと、トラバースは人が歩くくらいのスピードで前進を始めるので、更にアクセルを踏み込んでトラバースを加速させてロッジの管理事務所を後にする。
ここからはアラスカのアンカレッジにあるエルメンドルフ空軍基地を目指すことになる。
フォートブラックへ戻るにしても、交通手段が陸路となればカナダを通過しなければならず、その度にカナダへの入国と出国の手続きを要するだけでなく車での移動では数日も掛かるのでは時間の無駄となってしまう。
それならば、エルメンドルフ空軍基地から空路でフォートブラック基地まで移動した方が効率的と言えるし、アメリカ軍基地の移動であれば煩わしい入出国手続き等は不要でもある。
だが、同じアラスカ州とは言っても近くのスーパーへ買い出しに行くような具合で車で1時間以内の移動で済むわけではなく、片道でも数時間を要するので気を抜いた運転をしていると交通事故を引き起こすことに繋がり、気楽な一人ドライブというわけではない。
山道を下り終えて、比較的平坦な道路に変わって運転している最中、バックミラーに結構なスピードで迫って来るピックアップトラックが映っているのを視認する。
最初のうちは大して気にも留めることもなく、広いアラスカ州では多少とも飛ばす人間もいるだろうくらいにしか思っていなかったが、ルームミラーに映るピックアップトラックは徐々に距離を詰めてくるだけではなく、時折ヘッドライトを点灯させて威嚇をしてくる。
ミッションを終了したばかりで、変に拘わりたくはないのだが執拗に絡んでくるようならば多少は脅して退けなければならないと思い、助手席に置いていたニュースーパー・ブラック・44マグナム拳銃を何時でも掴んで使用できるように準備をしておく。
ただし、44マグナム弾薬となれば下手な所を狙えば簡単に死傷させてしまう可能性が高いので、仮に使うような事態となっても狙い処だけは充分に注意する必要がある。
直前まで迫ってきたピックアップトラックは、可成りのスピードで追い越していくが丁度真横に来たくらいで追い越して行くピックアップトラックの車内を横目で見ると20代前後と思われる男が3人乗車しており、人相としても地元のチンピラという感じがして印象は決して良くない。
追い越したピックアップトラックが、俺の前に車線変更しかけた際にピックアップトラックの助手席側から1人が箱乗り状態で姿を見せると俺の方へ何か固形物を投げつけてきた。
それを捉えた俺は、咄嗟にステアリングを切って投げつけてきた固形物が車体に当たるのを回避することに成功するが、流石に走行中の車から物を投げつけてくる危険な行為に、気分を害した俺はサングラス越しにピックアップトラックの方を睨んでいると、前方を走行しているピックアップトラックが急ブレーキを掛けるので「キッ-イ」というタイヤがロックした状態となって白い煙が立ち上るだけでなく、車間距離が急速に狭まってきたので俺も慌ててブレーキを掛けて停車寸前くらいになるまでスピードを落とす。
前方のピックアップトラックは、ステアリングを左に切ったようで車体が横向きになり道路を塞ぐような状態となって停車すると、左右のドアが開いて人相の良くない3人の若い男が降りてくる。
俺もトラバースを停車させて降りてきた3人を見ると、手にはセミオートマチック拳銃らしき物を持って不敵な笑みを溢しているのが確認できるので、俺は手元に引き寄せていたニュースーパー・ブラック・44マグナム拳銃を右で掴むと、外に居る3人には見えないようにして左手に持ち替えてから右手の親指でハンマーをコッキングして、ゆっくりと運転席側のドアを開けて車外に出る。
トラバースから俺が降りてくるのを見た3人のうちの1人が
「これが見るのなら、直ぐに有り金全てを出しなぁ」
と言って、手に持っている拳銃を見せつけるような仕草をする。
それを聞いた俺は
「子供の悪戯にしては少々度が過ぎている。そろそろママのオッパイが欲しい時間だろうから、直ぐにお家へ帰るんだなぁ」
黒いサングラスを掛けたままの状態で、低く冷静な声で言ってやる。
「てめぇ、この拳銃を見ても未だ嘗めてんのかぁ」
と最初に声を掛けてきた1人が、叫びながら右手に握っている拳銃を構えようとする。
それを見た俺は、開けたドアの後ろから左へ軽くサイドステップをしながら左手に持ったニュースーパー・ブラック・44マグナム拳銃を男の後ろで停車しているピックアップトラックの車体へ狙いをつけて発砲する。
3人の若い男達との射程距離は、5ヤード(4.57メートル)くらいなのでニュースーパー・ブラック・44マグナム拳銃から「ドォーン」という大きな発砲音が鳴り響くのと同時に「バコンッ」というピックアップトラックの車体に44マグナム弾が着弾した音が聞こえる。
目の前の若い3人は、余りにも大きなニュースーパー・ブラック・44マグナム拳銃の発砲音によって、一瞬ビックと身体を震わせると少し前までの余裕のある不敵な笑みは完全に消え去り、怯えたような表情となって俺の方へ視線を注いでいる。
そんな3人の様子に構うことなく、俺はニュースーパー・ブラック・44マグナム拳銃のハンマーをコッキングすると同時に再び発砲すると、「ドォーン」という発砲音が聞こえた瞬間に3人は「ヒィーッ」と悲鳴を挙げながら両手で顔の辺りを隠すような仕草をするが、1人は顔を隠す際に手に持っていた拳銃を落としてしまい「ガシャン」と路面に落下した拳銃は、安物のバジェット・ガンだったのか落下した衝撃を受けてスライド部とフレーム部分が壊れたのか分離して、フレーム部分の内部からは小さなスプリング等数個が散らばってしまって使用不能な状態となってしまった。
手にした拳銃を落とさなかった2人は、顔を覆っていた両手を前方へ突き出して拳銃を構えて俺に向かって発砲しようとしているので、俺は三度ニュースーパー・ブラック・44マグナム拳銃のハンマーをコッキングして2人の発砲に備えていると、2人は俺に拳銃を見せつける前にスライドを後方へ引いてチャンバーに弾薬を装填していなかったのか、右手の人差し指でトリガーを引いているが肝心のトリガーはスカスカと後方へ動くだけで必要としている発砲は起こらない。
焦った2人は、両腕で保持していた拳銃からサポート・ハンドである左手を離して右手で握っている拳銃を顔の前にもってきて拳銃の表面を眺めているが、拳銃自体に損傷がないのは俺から見ても判断できて拳銃本体に問題があるわけではない。
俺は、3人にニュースーパー・ブラック・44マグナム拳銃のマズルを向けた状態で、右手の親指でハンマーをコッキングし「カチャッ」というシリンダーが回転してハンマーがエンゲージした音が聞こえると、拳銃を地面に落とした男と別の男は履いているジーンズの股間辺りが徐々に青黒く変色したかと思うと、その染みは太腿から内股を伝って足元に黄色の水溜まりを作り始めている。
流石に、安物の拳銃を見せて脅しを掛けても通用しない相手であることを悟った3人は
「こりゃ、やべぇ逃げるぞぉ」
と言うなり、慌ててピックアップトラックのドアを急いで開けて乗り込んで急発進をするので、タイヤが空回りしてタイヤの焦げた匂いが充満してからタイヤのグリップ力が取り戻されてきたことで小刻みに車体を左右に揺らしながら走り去っていく。




