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厄介な相手だと思った執事と思われる男を何とか始末したが、これでルシェンコ・ボルツォフの別荘に居た全員を始末できたのかは定かではない。
それを確かめるためには、改めて燃え残っているルシェンコ・ボルツォフの別荘へ戻って確認しなければならず、そのために地面に落としてしまったニュースーパー・ブラック・44マグナム拳銃を拾い上げると、右手でローディング・ゲートを開けてシリンダーを回転させて発砲済みとなったチャンバー部へ動かして空薬莢を排出し、新たな44マグナム弾薬をベストの胸ポケットから取り出してシリンダーのチャンバーへ装填していく。
これからルシェンコ・ボルツォフの別荘へ向かって生き残りが居るかの確認を行うとなれば、余程の条件が整わない限りTFMボルトアクション・ライフル銃を使用するケースは考え難いと思われる。
仮に、別荘から逃走している人間が居たとしてもTFMボルトアクション・ライフル銃であれば、相当の射程距離であっても対応が可能であるのと野生動物のようなスピードで走って逃げることは想定できない人間であれば、そんなに焦って発砲することもなく充分にスコープで照準したうえで仕留めることができることから、メインはニュースーパー・ブラックホーク・44マグナム拳銃ということになる。
44マグナム弾薬の装填を終えて6発全弾が発砲可能となったニュースーパー・ブラック・44マグナム拳銃を左腰のホルスターに差し込んで戻してから、徐に別荘へ向けて歩き出す。
目前に見えてきた別荘は、発生していた火災は殆ど火が弱まり始めて白い煙だけが立ち込め色々な物が燃えた独特な臭いがしている状況で、焼け残った別荘を詳細に見廻しているが射殺された後に火災の炎で焼かれた数体の死体以外に発見できる人間は見当たらない。
その時、数十メートルくらい先で「ガサッ、ガサッ」という叢から不自然な音が聞こえてきたので、俺は咄嗟に瓦礫の陰に身体を隠すようにして音の聞こえた方へ視線を走らせる。
可能性とはしては、野生動物が俺の存在に気付いて逃げたということが考えられる。しかし、火災のきっかけとなったガス爆発によって一時的にせよ野生動物なら周辺から逃げており、戻ってくるにしては少し時間が早過ぎるように感じる。
手元に双眼鏡等はないので、スコープで音が聞こえてきた周辺を隈なく覗いてみると一瞬だが、覗いている接眼レンズの端に折り重なった枝の隙間に服のような布地が見えた。
咄嗟にスコープを引き戻して、布地が見えた辺りへスコープを向けると顔面の所々から出血痕が見て取れる男が怯えたような表情をして、息を切らせながら俺の方へ視線を向けているのが見えた。
俺は、ベストのポケットに忍ばせている携帯電話を取り出してエレベーション修正用の計算ソフトを起動させてスコープで確認した男との距離を入力するにあたり、俺が見た感じでは概ねの距離は300メートルくらいと思われるので、その数値を入力してやると瞬時に計算結果が表示される。
表示された値を参考にしてスコープのエレベーション・ダイヤルを廻して修正してから、安全装置をオフへ切り替えて肉眼でターゲットの方向を確認するために瓦礫から顔だけを瞬間的に出して確認する。
本来なら、じっくりと確認して確実な方向へTFMボルトアクション・ライフル銃を向けて照準を行いたいところだが、肉眼での確認に時間を掛けてしまうと相手にも俺が狙っていることを知られてしまい、走って逃げようとするくらいなら良いとしても実際にスコープによる照準を行う際に叢のなかに潜まれてしまわれたのでは、スコープでも捉えようがなく照準できなくなってしまい精度の高い狙撃を行えない。
この状況での射撃は、ニーリングの姿勢で行うことになるので構えたライフル銃の固定を確実にするために、右腕に巻き付けたスリングの張り具合を充分にチェックしてから瓦礫から身体半分を出すようにして、TFMボルトアクション・ライフル銃を構えてスコープを左目で覗く。
更に、この狙撃では撃ち上げの状態であるばかりではなく、風も4時から11時の方向へ流れており風速も割と強いので、如何に338ラプアマグナム弾で射程距離が300メートルと弾薬の能力としては短すぎるものの、弾道には充分に影響を与えそうでスコープのレティクル・センターで合わせた位置よりも多少とも左に逸れるだろうと判断した。
男が潜んでいる叢に対して、スコープのレティクル・センターを3時方向にある目盛りをガイドにして、過去の狙撃経験から目盛り5つ分だけレティクルのセンターを右へ移動させてから、左手の人差し指をトリガーに添えて引き始める。
「ダッァーン」という発砲音が響くのと同時に表面全体が炭化した瓦礫から黒い煙状になって細かい煤も吹き飛ぶと、大した間を置かずに338ラプアマグナム弾が「ガサッ」という音を発して叢に飛び込んでいく。
弾丸が叢に飛び込んだ音に紛れていたようだが、微かに「ウッ」という人間が発した極短い声が聞こえると、「ガザッ、ガザッ」といった叢の上に物が落ちてきたような音がして静まり返ってしまう。
確実な手応えを感じた俺は、TFMボルトアクション・ライフル銃を両手で保持した状態で立ち上がり、338ラプアマグナム弾が飛び込んでいった叢へ向かって歩き出すが周囲への警戒だけは怠らない。
射程距離が300メートルくらいならば338ラプアマグナム弾薬の能力すれば、あまりにも短すぎるのでターゲットが人間であるならば、例え急所に被弾しなくても充分に殺傷するだけの威力がある。
338ラプアマグナム弾が飛び込んだ叢に着いてみると、地面には顔の右半分が消失している男が横向きに倒れているのを見付ける。
焼け残った別荘の建物から男が倒れている場所までに応分の時間が経過している関係で、男が倒れている周囲は消失した頭部の右側から漏れ出た血液いよって相当に血の匂いが漂っており、このまま放っておけば直ぐに肉食獣が現れて餌として処分してくれるだろう。
しかも、周辺には他にも死体が転がっているだから一帯の肉食獣からすれば餌の宝庫と言っても過言ではないが、アラスカの消防が火事の現場検証ということで近いうちに訪れるだろうから、その時に死体に群がっているようだと消防職員が携行している銃器によって射殺されることになるだろうから、肉食獣達も充分に餌を食べる時間があるわけではない。
仕留めた相手の服装等を見ると、恐らくルシェンコ・ボルツォフのボディガードであったと思われるが、ガス爆発による影響で着ている服は所々がズタズタに割かれてしまっている。
射殺した人物のチェックを終えた俺は、再び別荘の方へ向かい瓦礫の近くに置いていたTFMボルトアクション・ライフル銃を収納するナイロン製のソフトケースを回収し、そのソフトケースにTFMボルトアクション・ライフル銃を収納する必要がある。
別荘に居た人間を全員殺すことには成功したので、もう此処には用があるわけでもないので借りているロッジへと戻るのだが、ソフトケースを回収しないままでは証拠の品を置いていくことになるので、流石にそれは軍にしろCIAにしても許してくれるわけはない。
銃器から排出した空薬莢程度ならば、例え証拠物として回収されたとしても銃器のファイヤリング・ピンやエジェクター等の部品を交換してしまえば、別のミッションにおいて当該銃器を使用しても何ら問題にはならないが、ソフトケースの場合は購入ルート等を探られる事態になれば結構厄介なことに発展する可能性があるし、第一にロッジを引き払う場合にTFMボルトアクション・ライフル銃を直に持って行くのは好ましい状況とは言えない。




