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執事と思われる男が身体を隠した岩に向けてTFMボルトアクション・ライフル銃を発砲してみるが、岩に338ラプアマグナム弾が命中したことで砕かれた一部の破片と土煙を舞い上げただけに終わる。
この発砲についても、執事の身体が一部でも見える状態ならば致命弾を送り込むため充分に照準をして発砲するところだが、今の状況では執事と思われる男が岩に隠れているのは間違いないものの、岩から身体の一部でも見えているわけではないので、とにかく執事と思われる男に対して居場所が分かっているから攻撃しているという意思表示をすることが精一杯でしかなく、それで執事と思われる男から応射させて1発でも多く執事と思われる男が保有しているであろう弾薬を消費させねばならない。
しかし、それまで応射してきたはずの執事と思われる男が撃ち返してこない。
もしかしたら、執事と思われる男が所持しているアサルトライフル銃の弾薬が尽きたのだろうか?
確かに、意を決したように俺が潜んでいる方へ突撃してくるのはリスクが大き過ぎる行為で、それを敢えて選択しているのは弾薬が尽きたと想像できなくもない。しかし、俺が潜んでいる方へ突撃してきている事実を踏まえれば、執事と思われる男はアサルトライフル銃の弾薬は尽きたにしても拳銃を所持している可能性があるということになる。
今の状況では、俺と執事と思われる男の射程距離は少なくとも200メートル以上はあるのでアサルトライフル銃であるならば充分に届く距離であるばかりか、拳銃で狙うよりも遥かに精度のある銃撃が可能になる。
ただし、特殊部隊に居た経験があったとして必ずしもアサルトライフル銃での射撃が平均以上のスキルがあったとしても、実は拳銃による接近戦の方がスキル的に秀でている可能性もあり、執事と思われる男が拳銃による射撃のスキルが高く接近戦を得意にしている可能性も捨てきれない。
そうなると、執事と思われる男が接近戦を展開してくるとなれば、俺の方が俄然不利な状況となってしまう可能性が高い。
俺にも、バックアップ用にニュースーパー・ブラック・44マグナム拳銃があるものの、持っているのはシングル・アクション・リボルバー拳銃であり使用する弾薬は44マグナム弾となれば、如何に俺が拳銃による射撃スキルがマスタークラスであったとしても相手が9×19ミリメートル弾薬や45ACP弾薬を使用するセミオート・マチック拳銃であるならば、発砲による反動の大きさや連射速度、更には相手がマガジンチェンジを行えば直ぐに発砲できるのに俺の方はシリンダーから1発ずつ排莢して補弾するしかない時間的なケースを想定してみると明らかに俺の方が不利な状態である。
いざとなれば、ニュースーパー・ブラック・44マグナム拳銃を使って接近戦を展開しなければならないが、出来ることなら手にしているTFMボルトアクション・ライフル銃で決着を付けてしまいたい。
本気で執事と思われる男を仕留めるべく、スコープを左目で覗き右目では広い視野で執事と思われる男の動きを探っているが、流石に手練れなこともあり移動している最中の動きを容易に捉えることができない。
本来なら、人間が動くわけだから群生している周囲の草木が不自然に揺れたりすることで敵の居場所が凡そ把握できるのだが、この執事と思われる男は移動していても草木等が不自然に動くような感じが見受けられないので、容易に居場所を把握し難い。
そんな状況で、気が付けば執事との距離は200メートルを切ってしまいTFMボルトアクション・ライフル銃で狙撃するのが徐々に難しい距離になってきている。
ニュースーパー・ブラック・44マグナム拳銃には、別荘へ近付く前に遭遇したクロクマを射殺するために6発の弾薬を使ってしまっているので、既に新たな44マグナム弾薬6発を装填しているから、ライフル銃での対応が難しい射程距離となれば直ぐにスイッチできる状態にはなっている。
仮に、執事と思われる男の接近を許したとして射程距離が100メートル前後になってしまえば、ライフル銃での狙撃を諦めてニュースーパー・ブラック・44マグナム拳銃にスイッチしなければならないだろうと覚悟した。
その時、ほんの一瞬だがビバーナム・エデュールが群生している枝が不自然に動いたような気がしたので、レティクルのセンターを不自然に動いたように見えたビバーナム・エデュールの生い茂る部分へ発砲する。
338ラプアマグナム弾の発砲に伴う大きな反動によってニーリングの射撃姿勢であっても上体は仰け反るようになり、TFMボルトアクション・ライフル銃のマズルも上方へ向いてしまう。
そのため、確実に肉眼では捉えることはできなかったが着弾したビバーナム・エデュールの枝葉が飛び散った直後、少し離れた枝が不規則に揺れているように見えた。
執事と思われる男を捉えたような手応えを感じることはなかったので、命中したとは思えないが放った338ラプアマグナム弾が掠りでもして執事と思われる男に負傷を負わせたのではないかと思える。しかし、戦場に慣れている手練れなのか呻き声1つ漏らしてこないので、本当に執事と思われる男が負傷しているのかさえ判断できない。
この距離ならば、銃弾により負傷したのであれば多少なりとも呻き声を漏らすだろうから微かではあっても呻き声らしき音を聞くことができるのだが、それすら聞こえてこないのは相当の訓練を受けてきたことを証明している。しかし、ビバーナム・エデュールの枝が不規則に揺れたのは1度きりで、後は何事も無かったかのように静けさだけが辺りを包んでいるだけである。
だが、執事と思われる男が負傷したのであれば周囲の草木等が不自然に動かぬよう移動する場合に、それまでとは違って全くの無音ということはなく何等かの音がすると考えた俺は耳に全神経を集中して違和感を感じるような音を把握しようと努める。
暫くは不自然に感じるような音すら聞こえてくることはなかったが、微かではあるが草木に何かが擦れるような少し不自然な音を感じるようになってくる。
漸く執事と思われる男が移動してくる痕跡を把握することができるようなったのだが、それは逆に敵である執事と思われる男が徐々に近付きつつありTFMボルトアクション・ライフル銃が使えぬ接近戦が近付いていることを意味しており、俺は腰のホルスターからニュースーパー・ブラック・44マグナム拳銃のグリップを握って抜き出し始める。




