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デルタのスナイパー  作者: 二条路恭平


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204/211

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大きな炎に包まれている別荘から、俺に向かってアサルトライフル銃を発砲してきた者が居るのだがその人物は燃え盛る炎を盾にしている状態なので、どの様な人物がアサルトライフル銃を発砲してきているのか全く分からない。

ただし、俺に向かって発砲してきている人物は実践慣れをしているのか巧みに炎に姿を隠しており、容易に俺から見付からないようにしているだけでなく、発砲した俺の姿を見付けたわけでもないのだろうが、発砲音を聞き分けて的確に俺が潜んでいる箇所へ向けて発砲していきて結構近くに着弾している。

そのため、俺も構えているTFMボルトアクション・ライフル銃に一旦安全装置を掛けたうえで狙撃場所を変更しなければ、そのうちに俺が被弾することになって死傷することになる。

ただし、あまり慌てて移動するとビバーナム・エデュールが群生している茂みの中から狙撃をしているので、ビバーナム・エデュールの樹木が不自然な揺れ方をしてしまうので、相手に居場所を教えてしまうようなことになる。

安全装置を掛けたTFMボルトアクション・ライフル銃を左手に持って、可能な限り周囲の樹木が揺れないように注意を払いつつ上体を屈めながら移動を開始する。

俺としても、このような手練れがいるであろうことは全く想像していなかったわけではないが、このような状況となれば完全にスナイパー同士での駆け引きが必要となり、少しでも気を許したり焦った方が負けとなり死を受け入れなければならない。

ただし、俺にとって僅かな利点は使用している銃器がボルトアクション・ライフル銃であるために精密な狙撃に向いているという点になるが、現状での射程距離であるならばアサルトライフル銃であっても充分に対応できる状態なので、必ずしも射程距離による有利不利が存在するわけではなく、逆に相手の方はアサルトライフル銃であるために速射性能に優れているので、俺の居場所が特定できたのであれば続け様に連射して俺に致命弾を繰り込むことができるという利点がある。

しかも、この敵は戦い方を充分に熟知しているようで連射をしてくることはあっても決してフルオートでの発砲はしてこない。

これが、フルオートで発砲してくるような敵であれば通常のアサルトライフル銃に装填できるマガジンには多くても40発くらいの弾薬しか込められないので、フルオートで発砲すれば十数秒くらいの発砲でマガジンは空となり、フルオートでの発砲がある間は飛来してくる弾丸で被弾しないように身を隠しておかなければならないが、一旦発砲が中断されたのであればマガジンが空となって予備のマガジンへとチェンジしなければいけないので、その間に新たな場所へ急いで移動して敵よりも狙い易い場所から狙撃を行えば良いことになるが、この手練れはフルオートでの銃撃を行ってこないのでマガジンの弾薬を温存しながら対処しているので、俺も慎重に行動しないと簡単に被弾して死ぬかもしない。

ただ、1つの可能性としては敵も近くに予備のマガジンがないので現時点で銃器に装着しているマガジンが空となれば銃撃できずに逃亡するか、或いは俺からの銃撃を受けて死を選択する以外にないかもしれないと考えることもできるが、それは単に俺にとって有利な状況を想像しただけの話で、実際に敵が保有している弾薬の情報までを把握しているわけではないのだから、当てにできない想像に任せて行動するわけにもいかない。

先ずは先方の姿を少しでも捉えやすそうな場所へ移動して、敵の状況を把握したうえで必要な銃撃を加える必要があり、本来ならば別荘の正面に廻り込めば良いのだが、そうなると暫くの間は狙撃を行うことができなくなるので、そうなれば敵とて馬鹿ではないだろうから別荘の正面へ移動しているであろうことを想像したとすれば、敵も居場所を変えて別荘の正面方向から見えずらい位置へと移動することになるだろう。

それよりは、徐々に居場所を変えながら狙撃を実行して別荘の正面方向へ向かっていることを敢えて分かるようにしながら、俺が狙っているのは持久戦であることを教えるようにした方が俺にとって有利な戦局を展開できそうである。

そこで、ビバーナム・エデュールが群生していた場所から20メートルほど時計回りに移動した場所で、太い樹木の幹を見付けて別荘方向から陰になる位置に身を屈めて左手に提げているTFMボルトアクション・ライフル銃を構えるため、右腕にスリングを絡めてニーリングの射撃ポジションをとる。

先程の位置から多少の距離を移動したとしても、敵を容易に捉えられるとは思っていないこともあるが、燃え盛る炎や徐々に瓦礫となっていく別荘の残骸が邪魔をして敵を確実に捉えられる状況には至っていない。

しかし、俺は一切構わずに盛大な勢いの炎へ向けてTFMボルトアクション・ライフル銃を1発だけ発砲する。

それに呼応するように敵からも1発だけ発砲してくるのだが、やはり炎の陰から発砲してくるので相手の姿を捉えることはできていないが、今回は俺が身を隠している幹に相手が発砲してきた弾丸が命中し、幹から砕けた樹皮が飛び散って頭上に降り掛かってくる。

あまりにもジャストで幹に命中したのに多少とも驚きはしたものの、一切構わずに新たな狙撃場所を求めて移動を始め、更に別荘の正面玄関があった所へ近付いていく。

居場所を移動するにあっては、できる限り敵から見えないようなルートを選んでいるせいもあるだろうが、敵から発砲してくる気配はなく俺からの銃撃があった際に1発だけ反撃してくる程度である。

まさかとは思うが、想像していた通りに敵には予備のマガジンや弾薬が少ないために必要以上の発砲を控えているのでだろうか?

確かめてみたい気はするが、それにはリスクが大き過ぎるし、そうまでして確かめなきゃならないわけでもない。それに、予定した通りに持久戦へ持ち込んでいけば何れは分かることになる。

次の狙撃場所は、別荘の正面玄関を0時の位置とすれば概ね9時くらいの場所になり、身を隠して狙撃するのに都合の良さそうな岩があり、高さは俺の腰近く程となるのでTFMボルトアクション・ライフル銃のフォアエンド先端に取り付けているバイポッドを使った委託射撃にすれば照準も楽に行えるし、照準している最中に敵から発砲されて被弾する確率も低くて済む。

TFMボルトアクション・ライフル銃を左手で持っている状態で、右手で前方であるマズル側へ倒していたバイポッドの両脚を引き起こして、岩の比較的平らな部分にTFMボルトアクション・ライフル銃を乗せて、スコープの対物レンズと接眼レンズを保護するためのプラスチック製キャップを跳ね上げて接眼レンズを覗きながらバイポッドの脚の高さを調整する。

接眼レンズを覗いた際、レティクルのセンターで狙点としたエリアを狙える状態となったところで、岩に凭れ掛かるような姿勢となってTFMボルトアクション・ライフル銃を構え、オンにしていた安全装置をオフにしてトリガーに左手の人差し指を添える。

「ドォーンッ」という発砲音と共に、岩の上に置いたTFMボルトアクション・ライフル銃のバットプレートが左腕の付け根を勢い良く押してくるのを受け止めて、狙った炎をスコープ越しに見ていると、338ラプアマグナム弾が炎を通過する際に衝撃波等の影響で一時的に若干だが勢いが弱まり炎が揺らぐ。

暫くすると、炎の陰から発砲音が聞こえて敵が発砲したアサルトライフル銃のマズルから飛び出た衝撃波によって炎が揺らいだ後に、岩の右側上端を7.62ミリメートル弾が掠めていく。

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