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ルシェンコ・ボルツォフの別荘の裏手側へ廻って様子を伺っていると、突然だが別荘の方からアサルトライフル銃を連続的に発砲してくる。
頭上の近くを不気味な衝撃波は何発も通り過ぎていくので、俺はとにかく頭を引っ込めて防御の姿勢を取る以外の選択肢はなく、最悪の事態となれば左腰のヒップホルスターに突っ込んでいるニュースーパー・ブラック・44マグナム拳銃を使用して応戦するつもりだが、相手は連射性能に優れているアサルトライフル銃であることに加え射程距離が200メートルであることを考えると、シングルアクション拳銃では如何にも分が悪いと言え、338ラプアマグナム弾薬を使用するTFMボルトアクション・ライフル銃では連射もできないし、次弾を発砲するにもボルトを操作する分だけ余計な時間が掛かってしまい、正直な話としてシングル・アクション・リボルバー拳銃よりも更に厳しい選択肢となる。
如何に弾薬の威力があったとしても、射程距離が200メートルと狙撃距離としては近距離の部類になるようなシュチエーションでは、圧倒的に連射性能に優れるアサルトライフル銃の方が確実に有利なことになる。
幸いないことに、敵の発砲は連射といっても3発前後の連射を行うと一旦射撃を中断して、別な方向へ向けて3発前後の連射を繰り返してくるので発砲が中断された瞬間を狙って少しずつ離脱していけば、無用なと言うよりも不利な銃撃戦を展開せずに済むことになる。
「ヒューンッ、ヒューンッ、ヒューンッ」というルシェンコ・ボルツォフのボディーガードがアサルトライフル銃を連射するたびに、不気味に飛び去っていく弾丸が発する衝撃波が聞こえるなかを少しずつ這うような感じで後退を行い、相手の距離を空けていくと発砲してくる方向が徐々にではあるが、俺が居る場所から離れていくのが分かってきた。
そこで、一気に姿勢を低くしながら小走りにルシェンコ・ボルツォフの別荘から離れることにしたのだが、本音からすれば携行しているTFMボルトアクション・ライフル銃を使えば射程距離的には充分なのだが、ここからアサルトライフル銃を発砲しているボディーガードを狙ったとしても周囲には木立が相当の数が茂っているので、仮に発砲したとしても枝等に弾丸が命中すれば枝を折って弾丸が飛翔するけれども弾道が僅かであっても逸れる可能性があり、それによって狙撃に失敗して相手に俺の位置を教える結果となっては、更に多くの銃弾が俺を目掛けて飛んでくることになるので俺にとって有利な展開が望めない。
それよりも最初から、狙撃している位置を相手に悟られ難い場所に居る状態で確実に狙撃を実行した方が間違いなく、そのような条件の際に今日の借りを存分に返してやれば良いと判断して、多少腹立たしが今回は大人しく撤退することにした。
冷静になって振り返ると、ルシェンコ・ボルツォフの別荘には敷地から200メートルくらい離れた場所から対人センサーやサーモカメラ等の警備機器が設置されているのが判明したことになる。
しかも、200メートルの距離であればアサルトライフル銃でも充分に侵入者への狙撃も可能であるし、当然ならが威嚇射撃すら可能となる。
そうなれば、ルシェンコ・ボルツォフを別荘で滞在中に狙撃しようとするならば、最低でも射程距離を200メートル以上は確保しないことには確実な狙撃ができないということになる。何せ狙撃の場合は、スコープ等の照準器を使用したうえで周囲の状況、特に風等の状態を加味したうえで狙点を決めてからの発砲となるので、素早い連射を行うというわけにはいかない。そのため、スナイパーは自身の姿を極力周辺に馴染むようカモフラージュを施して、相手に存在位置が分からぬようにしなければならず、仮に照準を始めた時点で相手に位置がバレてしまえば俺の方は容易に身体を大きく移動させるわけにもいかないので、今回のように相手側が連射性能を有するアサルトライフル銃等を持っているようだと連射を継続させながら着弾修正すれば良いので恰好の標的として狙われることになる。
やはり、ターゲットであるルシェンコ・ボルツォフを狙撃するのであれば出猟中に俺が茂みの中に潜んだ状態で、特にボディーガード達に発見されぬよう行うのがベストなのかもしれない。
なるべくルシェンコ・ボルツォフの別荘を遠回りするようなルートを選択して自分のロッジへ戻るべく歩いているが、気が付いたのはルシェンコ・ボルツォフの別荘から概ね500メートルくらいの圏内には大型の野生動物が潜んでいそうな気配がない。
恐らく、センサーに反応があるたびに先程の俺に対するようなアサルトライフル銃での発砲を繰り返しているのだろうから、野生動物達も安易にルシェンコ・ボルツォフの別荘周辺をうろついているようだと立ち処に弾丸の餌食となるので、本能的に近付くのを避けているのかもしれない。
しかし、残念なのは何の前触れもなく発砲されたので、俺の方は身体を隠すことで精一杯だったためルシェンコ・ボルツォフのボディーガードが使用しているアサルトライフル銃を確認すらできなかったことだ。
もし、ボディーガードが使用しているアサルトライフル銃を確認できたのであれば、少なくとも相手が使用している弾薬が何なのかを知る手掛かりになったのだが、残念ながら目視による確認すらできていないので現時点では憶測でしかないけれど、彼等が使用している弾薬は7.62×51ミリメートル弾薬か7.62×39ミリメートル弾薬ではないかと推測できる。
ここがアラスカではなく、東南アジアやアマゾンのジャングル地帯なのであれば軽量高速弾である5.56×45ミリメートル弾薬あたりも可能性としては考えられるが、使用する場所がアラスカであれば大型の野生動物にも対応することを考えても軽量高速弾等を採用するとは到底思えない。
そうなれば、選択肢として5.56×45ミリメートル弾薬が主流となる以前に戦場の歩兵が主に使用していた7.62×51ミリメートル弾薬か、或いはルシェンコ・ボルツォフがロシア人ということに着眼すれば第二次世界大戦中にソビエト連邦で開発された7.62×39ミリメートル弾薬ということになる。
ただ、これはあくまでも俺の想像によるものであって現実に目視により確認しているわけではないので、現状では何とも言えないというのが本当のところだ。
しかし、もし7.62×39ミリメートル弾薬であれば使用している銃器はソビエト連邦で開発されたアサルトライフル銃であるAKシリーズということになる。
AKシリーズのアサルトライフル銃であれば、最新のモデルでも携行していれば別だが一般的に出回っている古いタイプのモデルを使っているようなら、銃器の構造上のデメリットとして固定サイトの照準長が比較的短いために固定サイトを使っての照準精度はお世辞にも高いとは言えず、加えて最新のスコープやドットサイト等も基本的には装着できないので精度の高い射撃には不利となる。
ただし、スコープについては専用の物がソビエト連邦時代に開発されているので決してないわけではないが、現状でアメリカ国内等で流通しているメジャーなメーカー製のスコープと比較すると性能としては数段落ちることになり、高い精度を目指した狙撃には必ずしも向いているとは言えない。
それに比べれば、ボルトアクション・ライフル銃で速射性能に劣るものの装着しているスコープは比較的最新の物を使用しているので、俺の方が精度の高い狙撃を行うのには多少なりとも分があると言えないこともない。




