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予め契約されているハンティング用の宿泊ロッジへシボレーのトラバースを運転して向かう。
宿泊ロッジの管理人が居るロッジへ立ち寄り、予約しているロッジの前払い金を支払ってロッジの鍵を受け取り指定されている建物へ向かい、トラバースから荷物を降ろしてロッジに運び入れる。
余程の偶然でも重ならない限りは、現地に到着して直ぐにターゲットであるルシェンコ・ボルツォフに遭遇して狙撃のチャンスが巡ってくる等と都合良く事が運ぶことはないと思っているし、それにボディーガードが一緒に居る相手と遣り合うであろう場所の状態を把握しないことは対応策すら検討のしようもない。
先ずは、バックパックから長袖のリーバイス・タンガリーシャツをTシャツの上に羽織り防寒用ベストを着て陽が暮れて肌寒くなった場合に備え、下はリーバイスのデニムに足元はコンバット・タクティカル・シューズを履いて、見た目だけは出猟に向かうような姿になっておく。
それに、バックパックよりも小さめのナップザックに2食分の携行食と500ミリリットル入りのミネラルウォーターが入ったペットボトル2本、双眼鏡と338ラプアマグナム弾薬と44マグナム弾薬の弾箱を収納して、左腰のホルスターにはニュースーパー・ブラックホーク・44マグナム拳銃を突っ込み、右肩にはTFMボルトアクション・ライフル銃を収納したナイロン製ソフトケースを担いでロッジの外へ出て出猟へ向かうように装う。
タンガリーシャツの胸ポケットに入れている携帯電話を取り出して、ネットにアクセスすると一般人には決してアクセスできぬCIAの専用ページを開き、ターゲットであるルシェンコ・ボルツォフを捉えているであろう衛星画像を見てみる。
拡大倍率を上げれば、ルシェンコ・ボルツォフの頭頂部くらいは確認できるくらいの精度があるが、現時点でそんな画像を見たところで全く意味がないので、倍率を落としてターゲットにマークを印字させて、ターゲットとの大まかな位置関係を把握する。
俺が今いる場所から、ターゲットが出猟に行っているところまでは凡そ5キロメートルくらいの距離になっているので、これから出掛けて行っても充分に近くでターゲットの動向を観察することができる。
早速、ターゲット達が出猟している方角へ向かって歩を進める。
しかし、ロッジを出発して直ぐに狙撃を行うには厄介な場所であることを悟ることになった。
ここは、とにかく木立が多く密生している関係でブラインドとなる箇所が多過ぎるので、余程条件が良い場所を選んだ上で、相手に発見されるかもしれないが射程距離も中距離以下にしないことにはターゲットを外す可能性が高い。
特に、ターゲット側に悟られないようにするために射程距離を取り過ぎると、手前に突き出している枝等はスコープの対物レンズは遠くにフォーカスさせているため接眼レンズには映し出されないので、ターゲットを完全に捉えたと思ってトリガーを引いて発砲しても、発砲直後に弾丸が枝と接触してコースを逸れて狙点付近に着弾することはない。
しかし、ブラインドが多いという事は周囲へも充分に注意を払わないとクマ等との接触もあるので、発砲する瞬間にクマ等と遭遇するようだとターゲットを射殺チャンスを逃すことにもなる。
30分も歩いた頃に、改めて携帯電話を取り出してターゲット達との位置関係をチェックしてみると、距離にして300メートルくらい先にターゲット達が居ることになる。
そろそろ、周囲に注意を払って下手な物音を立てないよう気を付けようとした瞬間、ターゲット達が居ると思われる方向から「タッ、タッ、タッ-ン」という連続の発砲音が聞こえてきた。
一瞬、俺は耳を疑ったが明らかに複数人数がボルトアクション・ライフル銃を一斉に発砲したのではなくて、間違いなくアサルトライフル銃をフルオートで発砲したものだと判断したからで、ハンティングを行う猟場でフルオート射撃が可能な銃器が存在していることが信じられなかったのだ。
しかし、このエリアは完全にハンティング・エリアであることは間違いなく、持ち込むことのできる銃器はボルトアクション・ライフル銃とバックアップ用の拳銃くらいでフル・オートマチックの銃器等は持ち込めないし、第一フル・オートマチックの銃器を一般民間人が所持できる州は限られており、簡単に猟場で発砲できる代物ではないはずである。
足音を立てぬように注意しながら少し小走りで発砲音が聞こえた方へ向かってみると、「パァーン」というボルトアクション・ライフル銃が発砲された音が聞こえてきた。
背中のナップザックから双眼鏡を取り出して、周囲を見渡してみるとロシア人風の顔付きをしたルシェンコ・ボルツォフが30‐06口径の木製ストックが装着させているブレイザー・モデルR93ボルトアクション・ライフル銃を発砲し終えてマズルが上方に40度くらい上がっているところを発見した。
ルシェンコ・ボルツォフが発砲したと思われる方向へ双眼鏡を向けて探していると、20メートル前方に牡のムースが横たえているのを発見した。
確かに、ルシェンコ・ボルツォフがボルトアクション・ライフル銃を発砲して仕留めたようで、ムースの胸部には赤く射入孔があるのが双眼鏡でも確認ができたのだが、仕留められた牡のムース全身を見てみると、脚には不自然に見える結構な数の銃弾が被弾しているのが認められるので、恐らく俺が最初に聞いた連続の発砲音はルシェンコ・ボルツォフのボディーガードが獲物の動きを止める目的でムースの脚へフルオート射撃をしたのかもしれない。
しかし、それならばルシェンコ・ボルツォフの行為は完全にハンティング等ではなく単なる野生動物への虐待行為と言え、近くにパトロールを行っているレンジャーが居れは検挙されるような案件になるのは間違いない。
アメリカ国内では、狩猟に際して州毎にルールが決められており当然使用可能な銃器も制限が加えられ、フルオートが可能な銃器の使用は禁止されているほかに州によってはハンドガンによる狩猟も禁止されているところがあるくらいだ。
満足気な表情を浮かべたルシェンコ・ボルツォフは、ゆっくりとした動作でボルト・ハンドを前方へ押し込んで次弾をチャンバーへ装填すると近くにいるボディーガードにブレイザー・モデルR93ボルトアクション・ライフル銃を渡し、ボトルアクション・ライフル銃を受け取ったボディーガードはブレイザー・モデルR93ボルトアクション・ライフル銃の安全装置を掛けて安全な状態にしてからマズルを下方へ向けている。




