190
ニュースーパー・ブラックホーク・44マグナム拳銃から44マグナム弾薬6発分の試射を終えてみると、随分と違和感を感じてしまう。
これまで使用していたセミオート・マチック拳銃であれば、トリガーを引いて発砲すればスライドが発砲による発射ガスに係るエネルギーの一部によって後退して発射された後の空薬莢が銃器本体内から排出され、スライドが元に戻る際にはマガジンに装填されている次弾がチャンバーへ送り込まれるので、発砲の際には常にターゲットに意識を集中させていれば良いのだが、シングル・アクション・リボルバーであるニュースーパー・ブラックホーク・44マグナム拳銃では発砲の都度、ハンマーを起してシリンダーを回転させて次の弾薬が装填されているチャンバーをバレル後端へ移動させ、ハンマーを起しきった状態にしておかなければ連射することができないので、ターゲットのみに意識を集中させたままでいるとハンマーを起す動作が疎かになってしまい次弾を発砲することができなくなる。
これでは、アラスカへ移動して深夜に猟場でクマ等の肉食獣に襲撃された場合には、充分な反撃を与えることができずにクマ等の餌食になってしまいかねない。
少なくとも、発砲を終えたら無意識でハンマーを起せるくらいにしておかなければアラスカで人間を狙った狙撃を行うどころではなくなってしまう。
次の試射のために、フレーム右側のローディング・ゲートを右側へ倒して1発ずつ発砲済みの空薬莢を排出しては、1発ずつ新しい44マグナム弾薬を装填してシリンダーを1発分だけ回転させていく。
6発分の空薬莢の排出と新たな44マグナム弾薬の再装填が完了したところで、マズルをペーパーターゲットへ向けてから、ハンマーを起して発砲可能な状態にして前後のサイトを通してペーパーターゲットのセンターを狙って発砲する。
最初の試射より、幾分かはスムーズに操作できるようになったが未だ完全に身体が反応するまでには至っていないので、再び右サイドのローディング・ゲートを倒して1発ずつの排莢と再装填を繰り返して次の発砲に備える。
3回目の試射を終えてみると、最初の頃よりは相当意識をしなくてもハンマーを起せるようになってきているので、更に撃ち込んで身体に覚え込ませようと思うのだが、18発の44マグナム弾薬を連続して発砲したためなのか、左手に若干の痺れを感じるようになってきた。
難しい判断にはなるが、ここで多少の無理をして手の痺れが暫く収まらないようだとアラスカへ移動するためにレンタカーを使用するので、運転操作に支障があるようだとミッションそのものの遂行が難しくなる可能性がある。
そのため、44マグナム弾薬による試射は18発で終えることにするが、これまでなら18発程度の発砲で利き手である左手に痺れを自覚するようなことはなかったのでリ、ボルバー拳銃から44マグナム弾薬を発砲するとダイレクトに反動を受け止めることになるので想像以上に身体への負担があるのかもしれない。
標的板から338ラプアマグナム弾薬と44マグナム弾薬によってボロボロになったペーパーターゲットを外して、射座へ戻りTFMボルトアクション・ライフル銃にマニュアル・セーフティをオンにしてからナイロン製のソフトケースへ収納する。
TFMボルトアクション・ライフル銃のマガジンやチャンバーには338ラプアマグナム弾薬が装填されていない筈だが、基本的には自分の目で間違いなくチャンバーが完全に空になっているか、或いはボルトが後方へ引かれてチャンバーが空の状態であることが確認できない以上、目の前の銃器には弾薬が装填されているものと常に考えていなければ、ほんの少しの油断と思い込みによってアクシデンタル・デスチャージという暴発事故が発生することになる。
更に、射座の木製テーブル上に置いてある338ラプアマグナム弾薬と44マグナム弾薬の残弾が入っている弾箱をナイロン製ソフトケースのサイド・ポケットへ仕舞ってから、そのソフトケースを右手に提げて射撃レンジの詰め所に居る教官へ礼を言ってから使用済みのペーパーターゲットを渡して射撃レンジを出る。
その足で指定された基地内の駐車場へ向かうと、予め用意されていたシボレーのトラバースという車体色がシルバーのSUV車が止まっているのを見付け、運転席側のドアを開けてドライバー・シート側の前方にあるサンバイザーを弄ってみると車のキーが零れ落ちてくるのを左手で受け止める。
それから、車両の最後部へ向かいハッチバック・ドアを開けてTFMボルトアクション・ライフル銃を収納しているナイロン製ソフトケースをラッゲジルームに積み込んでからハッチバック・ドアを閉めてロックする。
再び、運転席へ戻りドライバーズ・シートに座り左手に持っている車両のキーでエンジンを始動させると勢い良くエンジンが回転して、燃料メーターが動き出しガソリンが満タン状態であることを確認してから、ブレーキ・ペダルを踏んでオートマチック・トランスミッションのシフトレバーをドライブ・モードに切り替え、サイドブレーキのスイッチをオフにしてからブレーキ・ペダルに載せていた足を離すとスリーブ現象によってトラバースは徒歩くらいのスピードで動き出す。
アクセル・ペダルをゆっくりと踏み込み、ステアリングを切って基地の正面ゲートへトラバースを走らせる。
基地の正面ゲートで一旦停車して門衛のチェックを受けてから、ゲートを出たトラバースを一般道へ合流させて、最初の目的地である自宅の方へ向かって走行を始める。
支給装備品として、銃器と弾薬を受領したが服や下着等は自宅へ戻ってバックパックに詰め込んだ状態で車載しなければならないし、少なくともミッション遂行まで最低でも数日は猟場となる山の中で過ごすことになるだろうから、食糧等もアラスカへ向かう途中で買い込んで準備しておかなければならない。




