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デルタのスナイパー  作者: 二条路恭平


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試射場における風等の影響を考慮しても、スコープのゼロインは概ね完了したと言っても過言ではないが、あくまでもハンティングが主目的であるならば100ヤードでの集弾具合であるグルーピングは3インチ(7.62センチメートル)くらいに纏まっているようであれば充分過ぎるくらいなのだが、本来の主目的は暗殺を念頭にした人物の狙撃であることを踏まえなければならないので、こちらの方も2度の試射結果として2インチ(5.08センチメートル)以下となっているのであれば、実際の狙撃においてターゲットの顔の中央や胸部中央を狙点として発砲してやれば確実に射殺できることになり、この結果についても概ね満足できる状態となっている。

今回、支給された使用弾薬である338ラプアマグナム弾薬の弾丸重量は300グレイン(19.44グラム)であり、発砲初速が毎秒800メートルであることを踏まえればヘッド・ショットとなる顔の中央やバイタル・ゾーンである胸部中央を狙点とした場合に、ターゲットが被弾すれば仮に狙点から2インチくらい逸れたとしても、ターゲットが負傷したくらいでは済むはずもなく確実に死亡することになる。

そもそも、銃器において使用される弾薬の威力は弾丸の重量と発射速度によって決まってくるので、より重量のある弾丸を高速の発射速度で撃ち出せば、特に動物としては皮膚が脆弱な部類になる人間であるならば被弾したことによって想像以上に深刻なダメージを受けることになるので、仮に弾丸がターゲットの身体を貫通したとしても高い確率で息絶えることになる。

TFMボルトアクション・ライフル銃に装着されているスコープのゼロインが完了したところで、左腰に装着しているホルスターに差し込んでいるニュースーパー・ブラックホーク・44マグナム拳銃も試射してみることにする。

少なくとも過去の経験からしても、シングル・アクション・リボルバーに限らず44マグナム弾薬自体を発砲したことがないので、如何に多くの銃器を射撃した経験があるとは言え、その殆どがセミオート・マチック拳銃やライフル銃でしかないのに油断をして現地での一発勝負等としてしまえば、その場で痛い目に合う可能性があることは容易に想像できる。

特に、リボルバー拳銃とセミオート・マチック拳銃では発砲時における反動に違いがあるので、事前に経験しておかなければ後々厄介なことになるかもしれない。

腰のホルスターからニュースーパー・ブラックホーク・44マグナム拳銃を抜き出してフレーム右側にある弾薬の出し入れを行うためのゲート・ラッチを右側へ倒すとシリンダーがフリーに回転するようになる。

最もフリーと言っても時計周りに回転できるようになるだけだが、だがシリンダーが回転することによって6か所のチャンバーへの弾薬が装填であったり排莢が可能な状態となる。

次に、TFMボルトアクション・ライフル銃が収納されていたナイロン製ソフトケースのサイドポケットから44マグナム弾薬が50発入っている弾箱を取り出して、木製テーブルの上に置いて箱の中から44マグナム弾薬を1発ずつ取り出しては、ローディング・ゲートからシリンダーのチャンバーへ挿入していく。

確かに、いつも見慣れている45ACP弾薬よりもケースと呼ばれる薬莢部が長く重量もあるのだが、ニュースーパー・ブラックホーク・44マグナム拳銃を下向きにしてシリンダーのチャンバー中程まで44マグナム弾薬を差し込んでから右手を弾薬から放すと44マグナム弾薬自体の自重で、ゆっくりではあるがチャンバー部分に44マグナム弾薬が入り込んでいく。

これは、リバルバー拳銃に使用する弾薬の特徴とも言えることでリバルバー拳銃はシリンダーと呼ばれる筒状になった形状に5発又は6発分のチャンバーが纏まっており、1発発砲する毎にシリンダーが回転して新たな弾薬が装填されている箇所へ移動して連射を可能にしている。

そのため、シリンダーが回転するためにバレルとは分離した状態となって約5/1000インチ(0.127ミリメートル)くらいの隙間があり、それをシリンダー・ギャップと呼んでいるが、弾薬を発砲して弾丸がシリンダー・ギャップを通過してバレルのライフリングに食い込むと、弾丸を後方から押し出している発射ガスの一部がシリンダー・ギャップから漏れることになる。

これが、セミオート・マチック拳銃であればバレルとチャンバーは結合しているので、弾薬を発砲しても発射ガスは一部もロスすることなく弾丸を後方から押し出して弾丸の推進力となるのだが、リボルバー拳銃の場合は構造上の欠点として発射ガスの一部がシリンダー・ギャップから漏れ出てしまい弾丸の推進力に若干のロスが生じてしまう。

しかし、弾薬の製造メーカーからすれば作り出す弾薬には予定している威力がなければ製品として欠陥があることになるので、シリンダー・ギャップから漏れ出る発射ガスを補う意味でもセミオート・マチック拳銃に使用する弾薬のケースよりも多少とも長くして、その分の装薬量を増やすことで必要とされる威力を生み出していることになるのだ。

6発分の44マグナム弾薬をシリンダーへ装填してから、右方向へ倒していたゲート・ラッチを左へ押し込み元に戻すと、シリンダーは固定された状態となって自由に回転することができなくなる。

ちなみに、古いシングル・アクション・リボルバー拳銃の場合はセミオート・マチック拳銃のようにマニュアルのセーフティが備わっていないので、携行時の安全を確保するため6発分のシリンダーに5発のみ装填して、未装填状態の所をバレルの正面に来るようにして暴発の危険性を回避していたのだが、ニュースーパー・ブラックホーク・44マグナム拳銃にはトランスファー・バーという部品が備わっていて、これはスターム・ルガー社製のリボルバーには採用されているメカニズムなのだが、基本的にハンマー単体では撃発のためのファイアリング・ピンを打撃することは構造上できなくなっている。

そのため、発砲する際にはトリガーを引いている状態の時に連動してファイアリング・ピンの前にトランスファー・バーという部品が上昇してくると、ハンマーはトランスファー・バーを打撃してトランスファー・バーがファイアリング・ピンを殴打することでファイアリング・ピンがプライマーを打撃することで発砲が行われる。

なので、スターム・ルガー社製のシングル・アクション・リボルバーの場合には、シリンダーに6発全弾を装填して携行していても暴発という事態はメカニズム上では生じないことになって安全性が確保されることになる。

ゲート・ラッチを閉じた後は、サポート・ハンドである右手の親指でハンマーを起すとシリンダーが時計回りに60度分だけ移動して、シリンダーストップというパーツがシリンダーの動きを抑制する。

ハンマーが完全に起こされた状態で、前後のサイトを使ってペーパーターゲットの上端を狙ってトリガーに左手の人差し指を添えて、その人差し指を徐々に後方へ押していくと「ドォーン」という拳銃にしては大きな発砲音と共に、鋭い反動が手に伝わって上半身が後方へ押されるようになるのと同時に目には見えない何からの力で上方へも引っ張れるようになってニュースーパー・ブラックホーク・44マグナム拳銃のマズルが40度くらい上方へ向くことになる。

セミオート・マチック拳銃の発砲では、射手に襲い掛かる反動のうち何割かはスライドが後退する際のエネルギーとして消費されるのだが、リボルバー拳銃の場合には反動のエネルギーを消費して銃器本体を動かすようなギャミックは備わっていないので、発砲による反動は余すことなく全て射手に襲い掛かってくるのでセミオート・マチック拳銃の反動よりも強く鋭い。

しかし、如何にハンド・ガンとして威力があると言われている44マグナム弾薬であっても弾丸重量が340グレイン(22グラム)と重量級の弾丸ではあるが、装薬量はハイパワー・ライフル銃用の弾薬には及ばないため、弾丸自体の威力とすればハイパワー・ライフル銃の比ではないことにはなる。

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