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デルタのスナイパー  作者: 二条路恭平


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帰還する1人旅では、特段のトラブルがなく順調に自宅へ辿り着いたと言っても到着したのは、深夜2時ではあったのだが直ぐにベッドへ潜り込んで眠り就くが、無意識ではあったものの身体が疲労していたのか目が覚めたのは10時過ぎとなり慌てて身支度を整えフォートブラック基地へ出頭して、上官のオフィスでソファーに腰掛けていると上官はデスクの引出しから1通の用紙を右手に持って俺の向かいに腰掛けてテーブルの上に用紙を置き、俺の方へ押しやってから

「貴様への新たなミッション指令だ」

と無表情に言って用紙を指差してくる。

その用紙を手に取って中身を読んでいると

「次のミッションは、アラスカの山奥へ行ってもらうことになる。今回のターゲットは、ロシア国籍のルシェンコ・ボルツォフと言って一般には富豪ということで通っているが、実際はロシアにおける最大マフィアのボスで不正な手段で得た資金の一部を西側の大手企業へ出資して表向きの顔でも勢力を拡大させている男だ。しかも、今回のアラスカへの旅行は表向きは趣味のハンティングということになっているが、実際はアメリカ国内の軍需産業企業への投資によって米軍への影響力も得ようとしている。主に、軍需産業企業との交渉はアラスカの別荘からビデオ通話によって行っており、それ以外はボディーガードを同行させてベアやムースなんかを狙ってのハンティングをしているようだ」

と上官が説明をしたところで、デスクに戻って1枚のカラー写真を持って戻ってくる。

「写真に写っている男が、ターゲットとなるルシェンコ・ボルツォフだ。狙いは、ルシェンコ・ボルツォフの狙撃による暗殺となるが、その際に同行しているボディーガード達も一緒に始末して構わん。ただ、奴が雇っているボディーガード達はロシア軍崩れで攻撃的な連中で構成しているので油断だけはするな」

それだけを話すとソファーから立ち上がって自らのデスク席へ戻る。

手渡された資料を一通り目を通した俺がソファーから立ち上がると

「何か質問はあるか?」

と椅子に腰掛けている上官が上目遣いに俺へ視線を向けるので

「特段はありませんが、1つだけよろしいでしょうか?」

と敬礼しながら俺は口を開く。

「何だ?言ってみろ」

と上官から質問の許可を得たので

「今回のミッションでありますが、私だけの単独行動ということでよろしいのでしょうか?」

と上官へ質問する。

「ああ、そうだ。表向きは貴様が単独猟でアラスカを訪れているという事になっている」

その上官からの回答を聞いた俺は

「了解しました」

と返事を返す。

「それでは備品管理係へ行って支給物資を受領後、直ちにミッションに従事するように、以上だ。下がってよろしい」

と言って、再びダスクの上にある書類の束へ視線を移す。

俺は、上官へ再び敬礼をして

「ジョウジ・カツラギ准尉、これから備品管理係へ赴き支給品を受領後、直ちにミッションに従事します。では失礼します」

と言って上官のオフィスを退出する。

上官のオフィスを出てから、そのまま備品管理係のカウンターへ向かい名前と所属を告げると、担当者は自分の席から立って右手に持っている書類をカウンターへ置いて俺の方へ差し出す。

俺は、カウンターの上に置いてあるペン差しからボールペン1本を取り出して担当者から寄こされた受領書に必要事項を記入していく。

その間に、担当者はカウンターの前から離れてオフィスの奥にある装備品置き場へ向かって俺に支給する物資を取りに行く。

受領書に必要事項を記入した段階で、支給予定の装備品の中味を見るとライフル銃は338ラプアマグナム弾薬を使用するクリステンセンアームズのTFMボルトアクション・ライフル銃であることが分かるのと、今や全米一の総合銃器メーカーとなったスターム・ルガー社のニュースーパー・ブラックホークのバレル長が7.5インチ(約19.05センチメートル)で44マグナム弾薬を使用するシングル・アクション・リボルバー拳銃が記載され、それに338ラプアマグナム弾薬と44マグナム弾薬が必要量分だけ支給されることになっている。

確かに、アラスカの山岳地で単独猟ともなれば遭遇する野生動物はヘラジカやムース等の大型草食獣に加え、最大の肉食獣とも言えるグリズリーがおり草食獣については別段気に留めることもないが、グリズリーともなれば冬籠りを控えて食欲旺盛な時期にもなっているので、単に体格が大きいだけでなく身体全体がたっぷりと厚くなった脂肪層に覆われて自然の鎧と言っても良い状態となっているので、中途半端な弾薬を使用するライフル銃では到底太刀打ちができないばかりか下手をすれば、グリズリーから逆襲を受けて俺自身がズタズタのボロ布のようになるまで攻撃を受けることにもなるので、若干なりともオーバーキルのような感じがしないでもないが338ラプアマグナム弾薬くらいの威力がなければ到底心許ない。

ただ、338ラプアマグナム弾薬であればロング・レンジ射撃用の弾薬でもあるのでターゲットを長距離から狙うのにも都合が良い。

しかし、残念なのはサイド・アームとして使い慣れた45ACP弾薬を使用するコンバットユニット・レイル1911拳銃が使えず、シングル・アクション・リボルバーであるニュースーパー・ブラックホークをバックアップ用として使用しなければならないことで、確かに45ACP弾薬くらいだと中型獣程度であれば充分に通用するだろうが、グリズリーを筆頭としてクマ等の大型肉食獣からの襲撃を受けた場合を想像すると、44マグナム弾薬くらいのパワーが発砲できるバックアップ用の拳銃でなければ対応できないかもしれない。

以前に耳にしたことだが、比較的親しい射撃仲間の1人がシカをメインに単独猟を冬場に行った際、宿泊用に借りたロッジに深夜遅く腹を減らしたと思われる冬眠直前の雄クロクマ成獣から襲撃を受けた時に、携行していたバックアップ用のスターム・ルガー社製スーパーレッドホーク・アラスカンで応戦したそうだが、クロクマが完全にくたばるのにシリンダーに装填していた6発の44マグナム全弾を使ったとのことだったので、バックアップ用のハンドガンにしても44マグナム・クラスの威力がなければタフな野生を相手にすることは容易ではないのかもしれない。

そもそも、野生のクマは胸部が大きく厚さのある筋肉に覆われおり、そこに冬眠直前で分厚い脂肪が加わった奥に心臓があるので、余程ハイパワーな弾薬を使用しなければ心臓を破壊するのは難しく、更に頭部は大きな体格の割には脳の大きさが然程でもないのでヘッドショットを放つのも難しい。

第一、クマを狙ったハンティングを行う際にはプロフェッショナルなガイドと行動を共にするのが常で、そのプロフェッショナル・ガイドでさえハイパワー・ライフル銃を携行して客がクマに対して発砲した直後に止めを刺す意味でバックアップ・ショットを複数発は発砲してケリをつけるのだから、最初の発砲がクマに命中して油断すれば忽ち危険な目に合うことになる。

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