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中国国営企業CEOシー・ユーシュェンを誘拐したパナマのチンピラグループと国営企業の幹部が電話による交渉で、5,000万ドルの身代金を用意するのに3日間の猶予を与えることで合意した翌日と翌々日に、パナマ運河を通行した船舶は12隻であったが、何れも通航料が500万ドル(約8億円)もの金額が引き上げられて通航管理権を有する中国国営企業に支払われ、中国国営企業は6,000万ドル(約96億円)を手にしたことになりシー・ユーシュェンの身代金分は余裕で支払いが可能となった。
その翌々日の朝10時に、チンピラグループのリーダーが中国国営企業へ直通の電話を入れ
「約束の3日が過ぎたぜ、身代金の準備はできたのかい?」
と余裕のある声で問い掛ける。
「ああ、待たせて済まなかったが、間違いなく身代金5,000万ドルを用意した。ただし、5,000万ドルを現金でと言われても持ち運びが大変なので小切手でも買わないか?」
と国営企業の幹部が言ってきた。
「小切手?そんな物が使えるかよ、渡された後で換金するために銀行へ行ったらサツが待ち構えて捕まるだろうが、暗号資産にして後で伝える口座へ振り込め」
と言って電話を切る。
これも、CIAが準備したおとりの口座となっており最初にCIAのエージェントが接触してシー・ユーシュェンの誘拐を行うことがハッキリとした段階で、身代金受け取りのために偽装口座を開設していやり、誘拐を実行するために必要な資金だけはチンピラグループへ渡してやって口座が本物と信じ込ませたが、5,000万ドルが振り込まれた場合には振り込まれた瞬間にCIAの隠し口座へ送金されるようにプログラムを仕込んでいるので、チンピラグループが5,000万ドルの身代金を手にすることは100パーセントない。
それに、CIAの隠し口座はアメリカ本国でも公にはできないミッション遂行時の活動資金源となっており、その使途については情報公開の対象として認識されておらず、大統領でさえ口座の存在が知らされていない。
また、この状況であれば俺達が誘拐を行わせたチンピラグループを襲撃してシー・ユーシュェンを奪還するのは明日の明け方近くになり、チンピラグループは全て射殺されることになるので、世間的にはシー・ユーシュェン誘拐実行犯であることすら認識されずに、パナマ共和国内でのチンピラグループ同士の抗争で殺害された程度にしか扱われないことになる。
昼過ぎ、ジェシーのパソコン画面にはチンピラグループのリーダーが中国国営企業へ直通電話を掛けて身代金を暗号資産へ変えて入金させるための口座を伝え、明日の午前中までに入金を完了させるように伝えている。
その遣り取りを見たジェシーは、メールで海兵隊チームと連絡を取りシー・ユーシュェンの奪還作戦が明日の3時30分に実行することを確認したので、俺とジェシーは早速にも襲撃のための準備を始める。
準備と言っても支給されているのは携行している拳銃の弾薬くらいなので、3本のマガジンに弾薬を装填するのと、うち1本をコンバットユニット・レイル1911拳銃へ装着して右手でスライドを鷲掴みにして後方へ引きチャンバーへ45ACP弾薬を送り込んだら、グリップを握っている左手の親指でマニュアル・セーフティ・レバーを上方へ跳ね上げてコンディション1の状態にする。
次いで、左手の人差し指でマガジン・キャッチ・ボタンを押してマガジンを取り出して、1発分が減ったのを捕弾してから再びマガジンをコンバットユニット・レイル1911拳銃へ戻すことで襲撃時には25発の45ACP弾薬をキープしていることになる。
これだけの弾薬があれば、チンピラグループを相手にするには充分なように思える。
何せ、襲撃には俺以外にもジェシーが9×19ミリメートル弾薬を使用するPモデル拳銃を持っているし、一緒に行動する海兵隊チームも当然銃器を携行しているだろうから、俺1人がチンピラグループと銃撃戦を展開するわけではない。
後は、バックパックからフェイスペイント用のスティックを出しておけば殆ど必要な物資の準備が整ったところで、大使館の厨房へ電話を入れて食事の準備を依頼する。
今のうちに食事を終わらせて、その後はタイマーをセットして仮眠を取り朝方というよりも深夜の襲撃に備えておけば準備完了といったことろだ。
とにかく、チンピラグループは身代金の受け取りまでの段階を迎えているのでパソコンに映し出されている画像を見ても、想像以上に燥いでおり身代金さえ未だ見ていないのに昼からビールを飲み始めてお祭り騒ぎといったところだ。
この調子なら、襲撃を実行する深夜3時頃には人質のシー・ユーシュェンが身動きを取れないのを良いことに完全に酔っぱらって熟睡しているだろうから、奴等を完全に制圧するのに大した苦労もしないで済むだろう。
その時、部屋のドアがノックされて大使館の厨房に頼んでいた食事が運ばれてきた。深夜からのミッションのために早目の食事を摂ることを依頼した関係で、運ばれてきた料理は比較的胃に負担の少ない物で整えられているので、食後直ぐに仮眠を取るにしても胃が凭れる心配もないので助かる。
運ばれてきた食事をジェシーと共に短時間で胃へ送り込んで、ベッドルームの厚手のカーテンを引いて暗くしたうえでベッドに潜り込んで仮眠をするが、贅沢を言えれば寝酒代わりとなるように食事と一緒にビールくらいは飲みたいところだが、下手にアルコール分が身体に残って思わぬところでドジを踏んでも仕方がないのでアルコール飲料を飲むのは我慢する。
ベッドに潜り込んでから夢の国へ入るまで、暫くの間はベッドの上で二転三転としていたが、何時の間にか熟睡していたようで眠りに落ちた記憶がない。
熟睡の間は、恐らく夢を見ていたのだろうがベッドの脇にあるサイドテーブルのデジタル時計からアラームが鳴った時には、目が覚めるのと同時に夢の内容等は完全に忘れてしまっている。ただし、額等には寝汗をかいた形跡が見受けられないところから変な夢を見て魘されなかったのは幸いかもしれない。
アラームに起こされた割には、結構頭がスッキリとしていて身体全体に嫌な倦怠感等が全くしない。隣のベッドで寝ていたジェシーにしても、俺が声を掛けて起こしてやる必要もなく普通に目覚めてベッドから降りている。
ベッドから降りた俺とジェシーは、取り合えず洗面所へ向かって水道水で顔を洗って、完全に目を覚ましてから用意していたフェイスペイントで顔中を黒く塗る。
少なくともチンピラグループ全員は射殺することになるにしても、人質となっているシー・ユーシュェンに顔を見られる可能性があるので素顔のままというわけにはいかないので、服装についても陸軍戦闘服は敢えて避けて普通の私服姿となって襲撃時にシー・ユーシュェンが目撃したとしてもアメリカ軍人が救出した等と後に証言されないようにしておく必要がある。
大使館を含め周辺は眠りについた時刻となっているので、このまま大使館の裏口から外へ出てジェシーの車でチンピラグループがシー・ユーシュェンを監禁している雑居ビルへ向かうのだが、流石に大使館警護職員の前を通らなければならないことを考えると、内線電話を使って重要なミッションを実行するので黒いフェイスペイントを顔に塗り付けた男2人が車に乗って行くと事前に伝えておき、俺達を見た警護職員を驚かせないようにする。




