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中国国営企業のCEOであるシー・ユーシュェンを誘拐したパナマ共和国のチンピラグループは、犯行現場から5キロメートルくらい離れた雑居ビルへ逃走したのを追跡しているドローンで把握する。
彼等がシー・ユーシュェンを拉致した場所については、CIAの調査によって雑居ビルの最上階を彼らが使用するアジトと把握しているので、シー・ユーシュェンを連れ込んでいるのも最上階の部屋であることは凡そ察しがつくことになる。
誘拐に成功したチンピラグループは、一刻も早くCEOの家族か国営企業へ連絡を入れて身代金を伝えた上で、一刻も早く大金を手に入れたいところだろうが、未だ誘拐を実行して時間が経過していないのでシー・ユーシュェンの関係先へ連絡を入れてみたところで、誘拐の事実を信用されないどころか質の悪い悪戯程度にしか受け取られ兼ねず身代金を伝えることさえできない可能性が強い。
それよりは、今夜一晩を我慢して連絡を控えればシー・ユーシュェンが帰宅してないことで不審に感じたシー・ユーシュェンの家族が国営企業へ連絡を入れ、国営企業から通常通りの時間に退社していると返事をされるが送迎のメルセデス・ベンツ・マイバッハ・Sクラスも国営企業へ戻って来ていないことが確認されれば、国営企業では帰宅途中で何等かの事件か事故に遭遇している可能性があると考え、パナマの警察当局へ連絡して警察当局が捜査を始めれば直ぐにでも襲撃されたメルセデス・ベンツ・マイバッハ・Sクラスが発見され、同時にボディガードの男と運転手の死体が発見されたものの、肝心のシー・ユーシュェンが行方不明となったところで、チンピラグループが連絡を入れれば確実に誘拐犯からの接触と理解されるはずである。
それを見越して、チンピラグループには誘拐実行のためのストリーを事前に渡して行動するように計画書のような物を渡している。
それにチンピラグループに余計な行動を取らせなければ、シー・ユーシュェンを奪還するための急襲作戦を実行するのに、俺達が必要とする情報を収集するための時間を稼げることにもなる。
誘拐を実行する時には、何の躊躇もすることなくボディガードや運転手を射殺していたが、流石に金蔓であるシー・ユーシュェンにはナイロン製の結束バンドで手足の自由を奪っているためか無茶な暴力等は振るうことなく一晩を過ごしたようで、それについてはチンピラグループへの急襲作戦を実施するために追加派遣をされた海兵隊チームの斥候がシー・ユーシュェンを監禁している雑居ビルへ偵察を実施して把握している。
更に、偵察を行う際に監禁している室内を把握するための超小型カメラや収音マイクを仕掛けているので、これで完全にシー・ユーシュェンが監禁されている部屋の様子が手に取るように把握可能となっている。
翌朝、9時にシー・ユーシュェンが監禁されている部屋からチンピラグループの1人が電話をしている映像がパソコン画面に映し出され、CIAが提供した計画書では国営企業へ電話を入れて、CEOであるシー・ユーシュェンを誘拐拉致したこととシー・ユーシュェンの身の安全と開放のために身代金として5,000万ドル(約70億円)を準備するように伝えているはずである。
それを伝え終えたチンピラは、部屋のソファーへ転がしているCEOのシー・ユーシュェンの口元へ電話を近付けて一言だけ喋らせると直ぐに電話を切る。
これで国営企業の方はCEOが誘拐されたことを知り、CEOを開放されるのに身代金が5,000万ドルを必要となったことも認識したはずである。しかし、幾ら中国の国営企業と言っても5,000万ドルもの大金を簡単に右から左へ用意できるとは思えない。
恐らく、国営企業の幹部連中は本国へ緊急連絡を入れて対応策についての指示を仰ぐことになると想像する。
これが、CEOではなく単なる管理職程度の人間が誘拐されたのであれば、誘拐犯に対しても強気な態度で身代金の減額を迫ったうえでパナマ共和国の警察当局と連携し、早期の人質解放と犯人逮捕を優先させるのだろうが、誘拐されたシー・ユーシュェンは単に国営企業のCEOという立場だけではなく本国の共産党でも上位の実力者で、近い将来は副主席のポストに就任するような人物だけに下手な対応をしてシー・ユーシュェンが殺害されようものなら、国営企業の幹部連中の首が一瞬にして飛ばされることになる。
それらの時間を見越したうえで、CIAの計画書に従い昼近くにチンピラの1人が2回目の電話を掛ける。
ここでは、朝に連絡した身代金を支払う意思の確認と誘拐したシー・ユーシュェンの生存証明として再び一言だけシー・ユーシュェンの声を聞かせることだけになるが、予測していた通りに国営企業の幹部からの回答は身代金5,000万ドルを支払う意思はあるが、簡単に用意できる金額ではないので少し時間が欲しいという時間稼ぎを目的とした回答であった。
先方が、時間稼ぎを目的にした返答をしてくるのは予想できていたのでCIAが作成した計画書には、改めて夕方に電話を入れるので金の準備に如何ほどの時間を要するのか具体的に回答するよう伝えるのと、不必要に時間を要する場合には誘拐したCEOの生命は保障しないと脅しを掛けさせて電話を切るように記載している。
電話を切ったチンピラは、スムーズに国営企業から身代金を支払う旨の回答を得ることができないのでイラついているように見受けられるが、それも予測しているCIAは計画書に「必ず相手方は身代金を支払うはずなので、大切なことは冷静さを忘れずに行動することで、次の電話では相手方が身代金の減額を交渉してくるはずなので、その時には渡している音源を使用して相手にプレッシャーを掛けること」とアドバイス的な内容を記載している。
とにかく、こちらとしては中国国営企業に身代金の支払いに応じると言わせたうえで、その身代金を工面するためにパナマ運河の通航料を臨時的に値上げしたうえで、実際に値上げした通行料を受領させなければ人質となっているシー・ユーシュェンを奪還するための急襲作戦を実行に移せない。
夕方の電話では、国営企業側はハッキリと身代金を支払う意思を示してきたのだが、案の定というかCIAの計画書に記載していた通りに5,000万ドルは高過ぎるので早急に用意できるのは2,000万ドルなので、身代金を2,000万ドルに減額して欲しいと減額交渉を始めてきた。
嘘のようにCIAの計画書通りの展開となったことに驚いた表情を見せたチンピラは、少しだけ演技がかったように舌打ちをしてから事前に渡していた音源が入力されたデジタル録音機を手にして、受話器に近付けると再生ボタンを押す。
デジタル録音機からは、CIA がAIで作成したチンピラが誘拐したシー・ユーシュェンへ暴行を加える音と暴行を受けたシー・ユーシュェンが呻き声を上げている状況が再生されて、その場面が見えていない国営企業側は誘拐犯が身代金の減額交渉に対して怒りシー・ユーシュェンへ暴力を振るっているようにしか認識できていないはずである。
その間、シー・ユーシュェンは直ぐ近くのソファーに転がされて声を出されないように猿轡を付けられ、受話器にデジタル録音機を近付けているチンピラの隣で呻いているだけである。
そのシー・ユーシュェンの様子を薄笑いを浮かべて見下ろしているチンピラは、デジタル録音機を近付いている受話器の近くに口元を寄せると「また、後で電話する」と言い残して電話を切る。
これも、CIAが作成していた計画書に記載してあるようだが1回の通話時間はパナマ警察が逆探知のために、通話時間を延ばすよう国営企業の幹部へアドバイスをしている可能性が高いので3分以内で終わらせるよう指示している。
とにかく、中国国営企業側が5,000万ドルの身代金を支払う意思を示して金策のためにパナマ運河の通航料を引き上げてくれればシナリオ通りの展開となってくれるので、それまでは下手にパナマ警察等がチンピラ達の周囲に現れて作戦の邪魔をされては全てが水泡に喫してしまうので、その可能性を極力軽減する意味でも些細なことも指示をしておく必要がある。
シー・ユーシュェンの監禁は、常に2名で監視するようにと注意を与えているのと必ず半日での交代制にすることも指示している。これは、同じ人物が人質と常時一緒にいれば監視する側が徐々に人質に対して気を許すこととなり、それは人質にとって絶好のチャンスを与える結果となって拳銃を奪われたり、監禁場所から抜け出されたりといった致命的なミスを誘発する。
そのリスクを減らすためには、人質を監視する側が一定時間で交代することで常に人質に対して緊張感を持った接し方をする必要があり、そのため誘拐を専門としている連中等は人質1人で窓のない部屋に監禁して、人質の接触についても極力避けているくらいである。
昼近くになって午前中シー・ユーシュェンを見張っていた2人は、午後から見張りを行う2人と交代すると、1人が直ぐに中国国営企業へ直通電話を掛けて今朝の状況から国営企業側が翻意したかの確認を行う。
流石に、国営企業側も今朝の電話で不必要な身代金減額交渉が通用する相手ではないと悟ったようで、チンピラグループから要求された身代金の支払いに応じるとの回答をしてきたが、5,000万ドルと言った大金が直ぐには準備できないので3日間の猶予を与えて欲しいと言ってきた。
その国営企業側から要求通りの身代金支払いに応じるとの回答を聞いて、すっかり気を良くした電話を掛けているチンピラは3日間の猶予を与えることに同意する。




