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デルタのスナイパー  作者: 二条路恭平


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大使館の地下射撃レンジでジェシーとの射撃練習では、イヤーマフラーを装着しているとは言え、周囲がコンクリートで固められているので拳銃の発砲音や小さいながらも衝撃波が反射していくるため、結構な音量がイヤーマフラー越しに届いてくる。

銃器の射撃訓練等では聴覚を保護するためにイヤーマフラーや耳栓等を装着して行うのだが、如何るデバイスであっても完全に音を遮断するような用具はないので、射撃を行う環境や使用する銃器や弾薬によっては相当な音と衝撃波によってはイヤーマフラー1つだけでは両耳が一時的であるにせよ聴覚異常を起こしてしまうので、ウレタン素材の耳栓を装着したほかにイヤーマフラーまで着用するようなケースもある。


コンバットユニット・レイル1911拳銃のトリガーを引き絞り「ドーンッ」という発砲音が響き渡る地下射撃レンジであるが、隣でジェシーもSTACCATOのPモデル拳銃である9×19ミリメートル弾薬を発砲しているので相当な射撃音と衝撃波に室内は包まれている。

コンバットユニット・レイル1911拳銃の固定されたフロント・サイトの上部にある小さく丸いドットとリア・サイトにの溝の両側にあるドット、何れもトリジコンという放射性物質が発光するナイト・サイトを横一列に並ぶようにしてターゲットのセンターを狙っての発砲となるが、ターゲットのセンター付近に着弾しているのは1発か2発くらいのもので、それ以外はセンターから少しズレた周辺に着弾している。

元々、拳銃の場合は固定されているフロント・サイトとリア・サイトによって照準を行いボルトアクション・ライフル銃やアサルトライフル銃のように精密な光学照準器を使用しているわけではなく、まして発砲している銃器の固定についてもボルトアクション・ライフル銃やアサルトライフル銃等のように適切な射撃姿勢によって利き腕の二の腕、利き腕側の脇、利き目側の頬、そして両手によって銃器を固定して発砲しているが、拳銃の場合は基本的に両手のみでの銃器本体を固定したうえで発砲となるため銃器の固定は、ボルトアクション・ライフル銃やアサルトライフル銃等に比べれば安定度合が弱いため、必ずしも狙点への着弾が少ないとしても大して気にすることではない。

確かに、発砲した全弾が狙点に着弾してターゲットのセンターがワンホール状態となれば理想的と思えるくらいに望ましいことではあるが、所詮は銃器の発砲に係る最終段階でのデリバリーは機械ではない不確定要素の塊とも言える人間である以上、その日のコンディション次第で射撃結果は大いに左右されてしまう。

それよりも大切なのは、拳銃の発砲によって着弾状況が如何に纏まっているかのグルーピングが重要になってくると言える。

グルーピングが大きく散らばることなく、少しでも小さく纏まっているのであれば例えターゲットのセンターを狙っているにも関わらず、センター位置から外れたとしてもグルーピングの状況を仔細に観察すれば射撃について自分の癖が読み取れることになり、その自分の癖を理解したうえで実践の場でサイティングを行なえば高い確率で狙点付近に着弾させることができる。

しかし、自らの癖を把握したとしても日々のコンディションによって一定しない部分があるので、常に射撃は思うようにならないという側面があるので少しでも多くの実弾射撃訓練が必要とされる。

その点から言えば、テレビドラマや映画のようにタイミングよく主人公が、相手が手に持っている拳銃等に命中させて所持している拳銃を弾き飛ばすようなシーンを見受けるが、まったくの荒唐無稽な事だとは否定するつもりはないものの、余程の偶然とも言える条件が整わない限りは簡単に実現できることではない。


着弾による複数の孔が開いたペーパーターゲットを確認するために、隣との仕切りが取り付けられている柱に備わるスイッチを押すとモーターの駆動によってペーパーターゲットが俺の方へ近寄ってくる仕掛けになっており、本来ならば「ウィーン」というモーターの回転音が聞こえるはずが、隣でジェシーが射撃を継続している関係で発砲音が邪魔をしてモーターの回転音が聞こえないのだが、金属の枠に取り付けたペーパーターゲットが近付いてくることで間違いなくモーターが動いていることが分かる。

目の前で動きを停止したペーパーターゲットを見ると、グルーピングは概ね1インチ(25.4ミリメートル)くらいに纏まっているのだが、狙点としていたターゲットのセンターからは2.5インチ(63.5ミリメートル)くらい9時の方向へ外れている。

久しぶりの拳銃による射撃のために、無意識のうちにトリガーを引く左手の人差し指に余計な力が入ったのかもしれない。しかし、それでも安心できるのはターゲットのセンターから逸れたのが真横の位置であることで、これが下手に10時や11時の方向となっていれば使用している拳銃がグロック17拳銃やグロック19拳銃であれば理解できなくもないが、使い慣れたコンバットユニット・レイル1911拳銃での着弾結果となると隣で射撃を行っているジェシーにでもコンバットユニット・レイル1911拳銃を構えた状態をチェックしてもらわなければならなくなるし、逆に8時や7時の方向へ下がった位置に着弾していればコンバットユニット・レイル1911拳銃の握り方に問題がある可能性を考えなければならない。

ちなみに1911系拳銃に慣れた射手が急遽グロック拳銃を使用した場合には、マズルが上を向く傾向があるそうである。

一口にセミオートマチック拳銃と言っても製造するメーカーによって撃発機構や外観に違いがあり、拳銃との一番の接触部分であるグリップに至ってはアングル角度さえ全くと言って良いくらいに違いがあり、俺が使用しているコンバットユニット・レイル1911拳銃等の1911系拳銃の場合はアングル角度が118度であるのに対して、グロック拳銃の場合は109度と1911系拳銃よりも僅か9度であるが寝た状態となっている。

更に、1911系拳銃のグリップ背面は比較的ストレートな形状となっているがグロック拳銃のグリップ背面下側には僅かな膨らみがあるために、1911系拳銃での射撃に慣れた者が急にグロック拳銃に持ち替えた場合、使い慣れた1911系拳銃のつもりでグロック拳銃を握るとグリップ背面下側の膨らみによってマズルが僅かに上方へ向くようになってしまう。

そのままの状態で発砲すれば、仰角がついた状態での発砲となるので着弾点は狙った狙点よりも上方へシフトして、本来狙った箇所へ命中しないどころか外してしまうことになってくる。

1本目のマガジン全弾での射撃結果を踏まえて、目の前のペーパーターゲットを交換し再びスイッチを押してターゲットを25メートルの位置へ移動させ、その間にグリップ左側にあるマガジンキャッチボタンを押し込んで空になったマガジンを取り出してから、腰の右側に装着している2本のマガジンを差し込んだマガジンポーチから予備マガジン1本を抜き取るのと同時に空のマガジンをマガジンポーチへ差し込む。

それから、手にしている予備マガジンをコンバットユニット・レイル1911拳銃のグリップ底で開口しているマガジン挿入口へ差し込むが、最初のマガジンを全弾撃ち尽くしてスライドオープンの状態なので予備マガジンを叩き込むようなことはしない。

マガジンを交換する際に、叩き込むような真似をするのはチャンバーに発砲前の弾薬が残っていてスライドオープンの状態になっていない場合であって、その理由はスライドがオープン状態でない状況で新たなマガジンを挿入すると、マガジンに装填している最上部の弾薬がスライドのブリーチ下部に当たってしまうのだが、45ACP弾薬を使用する1911系拳銃であればマガジンへの装弾数は8発となりフル8発をマガジンへ装填しても、弾薬を上方へ押し上げるマガジンフォロアの下にあるスプリングには僅かに圧縮できる余地が残っているので、マガジンを叩き込むようにするとブリーチ下部に当たったマガジン最上部の弾薬が僅かに沈み込むので、マガジンは適正な位置にまで拳銃本体に入り込んでマガジンキャッチとエンゲージし、発砲のショックを受けてマガジンが拳銃本体から脱落することにはならない。

しかし、マガジンを叩き込むような乱暴な真似はしたくないと優しく予備のマガジンを挿入するとブリーチ下部と衝突したマガジン最上部の弾薬が充分に下がりきらない状態となるので、差し込んだマガジンがマガジンキャッチに充分エンゲージしない状態となるため、その状態で発砲すれば反動等によるショックでマガジンがマガジンキャッチから外れてしまって拳銃本体からマガジンが脱落することになってしまう。

だが、今の俺が手にしているコンバットユニット・レイル1911拳銃は全弾を撃ち尽くしてスライドがオープン状態となっている関係で、8発の45ACP弾薬を装填している予備マガジンを叩き込むように入れなくとも予備マガジン最上部の弾薬がブリーチ下部と接触することがないので叩き込む必要がないのだ。

マガジンキャッチが予備マガジンをエンゲージした「カチッ」という音が聞こえはしたが、念の為に差し込んだマガジンの底を軽く掌で叩いてマガジンキャッチのエンゲージを確実にする。

それから、未だにオープン状態となっているスライドを戻すのとチャンバーへ次弾を装填するためにスライドを右手で鷲掴みにしてから僅かに手前へ引いてからスライドを離すと、スライドはバレル部下で圧縮されたリコイルスプリングが元へ戻ろうとする作用と同調して勢い良く前進する。

その際、前進するスライド内のブリーチフェイスがマガジン最上部にある45ACP弾薬のヘッド部を前方へ押し出してチャンバーへ送り込み、その後にスライドは完全にチャンバーを閉鎖して、同時にハンマーが起こされた状態となってトリガーさえ引けば発砲可能な状態となった。

ちなみに、このチャンバーに未発砲の弾薬が装填されてハンマーが起こされいるが、マニュアル・セーフティを掛けていない状態をコンディション0と呼んでいる。

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