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大使館建物内の部屋に案内されたが、その部屋は海外からの要人を宿泊させたりパナマ国内においてアメリカ邦人が事件等に巻き込まれたようなケースで一時的に保護するために宿泊が可能とされている部屋の1つでホテルにおける2人部屋のような造りとなっている。
部屋に落ち着いてから、大使館職員である給仕係が夕食を運んでくれるので割り当てられた部屋で夕食を摂り終えると、ジェシーが撮影したデジタルカメラのデータを持っているパソコンに早速ダウンロードする。
そのダウンロードが完了した時点で
「中国国営企業を観察していた時、シルバーのメルセデスに乗って退社した人物の画像を見たいんだが顔等が鮮明に見るか?」
と俺がジェシーに尋ねる。
ジェシーはパソコンを操作して俺が指定した画像を見付けると
「ジョージが言ってる人物のカットは、何枚か撮影したけど光量不足なので少し加工しないと顔の判別までは出来ないなぁ」
と首を傾げてジェシーが答える。
「そしたら画像を加工して、顔等の判別ができるようになったら見せてもらえないか?」
俺がジェシーに言うと
「お安い御用、直ぐに加工できるから後ろから画面を見ていてください」
笑顔を見せてジェシーが言うと、早速パソコンを操作して複数の画像データを画像編集アプリに取り込み修正を始める。
俺は、ジェシーの背後に立ってパソコン画面を眺めているとイメージとしては全体の色合いが徐々に薄くなってくるとメルセデス・ベンツの後部座席に座っている人物の顔が最初は車内の暗がりで黒いシルエットにしか見えていなかったのが、薄いながらも徐々に輪郭が分かるようになってくる。
ジェシーは加工した画像に細かな微調整を加え
「こんな感じかなぁ、でも何で此の人物が気になります?」
と聞いてくるので
「メルセデスの後部座席に座って、社屋の地下駐車場から出てくるくらいならコイツは明らかに社長か重役の1人だろう?」
俺がジェシーの問い掛けに答える。
「確かにジョージの言う通りだろうけど、それがどうしたの?」
とジェシーが更に疑問を投げ掛けてくる。
「もし、そうなら今回のミッションで使える人物かもしれないと思ったからさ」
と俺が答え、その俺の答えを聞いたジェシーも納得したように頷いてみせる。
「そしたら、この画像をCIAへ送って正体を確認してもらいましょうか?」
と言ってジェシーは加工した画像データを一度保存してから、CIA宛のメールに貼付して送信する。
暫くすると、卓上に置いたジェシーのパソコンにメール着信を知らせる着信音が鳴った。
それを聞いたジェシーが受信したメールを開くと
「ほぉ、ジョージの勘が当たりましたねぇ。カメラで捉えたのは中国国営企業パナマ支社のCEOのようですよ」
と笑顔の表情を浮かべながらジェシーがメールに目を通している。
「奴の名前は、シー・ユーシュェンと言って中国共産党では将来の副主席候補と噂されているようですよ。年齢は52歳となっています」
メールで送られてきている人物の氏名と年齢をジェシーが読み上げてくれる。
それを聞いた俺は
「やっぱり」
と一言漏らしてジェシーのパソコン画面に映し出されている写真を見詰める。
「でッ、そのシー・ユーシュェンをどうしようと思ってます?」
ジェシーが少し悪戯っ子のような表情に変わって俺に聞いてくるので
「ここからはCIAの方が得意分野になると思うが、パナマのチンピラグループを上手く利用してシー・ユーシュェンを誘拐させたらどうだ?」
無表情な顔付きで俺が答えると
「なるほど、パナマのチンピラグループにシー・ユーシュェンを誘拐させて莫大な身代金を請求させるわけですね」
納得の出来た表情を浮かべたジェシーが、少しだけ興奮気味に言ってくる。
そのジェシーの言葉に俺は黙って頷く。
パナマのチンピラグループに中国国営企業のCEOであるシー・ユーシュェンを誘拐させれば、仮にマスコミが世界的に報道したとしても表向きはアメリカが関与したという証拠はないから何も騒がれる心配はないし、身代金として膨大な額を中国側に請求してもシー・ユーシュェンの立場からすれば身代金の支払いを拒否されることは先ずないだろう。
ただし、如何に中国共産党での立場が上位にあるとしても国家予算から安易に身代金を支払うような真似は、面子を重要視する中国が応じるわけがなく、そうなれば要求された金額を準備するのにパナマ運河の通航料を一時的に値上げして、そこから得られた金額を身代金とするだろうから、そのタイミングを図ってマスコミにパナマ運河の通航料値上げに関する真相をリークしてやれば、中国が行ったパナマ運河の通航料値上げについて幾ら人質の身代金を確保する目的だったとは言え、1中国人を救い出す目的のために無関係な国の貿易が肩代わりする謂れはなく、整合性のない通航料の値上げ行為によって搾取するような真似が非難されるのは間違いないだろう。
そしてタイミングを見計らいアメリカが極秘にシー・ユーシュェンをチンピラグループから救出したうえで、充分にシー・ユーシュェンへ脅しを掛けてやれば中国側がパナマ運河の管理から撤退する可能性も出てくるように思える。
ただし、その辺の細かいディティールや筋立ては俺よりもCIA等の方が得意な分野として計画するだろうから、俺のような立場の人間はCIAが作った筋立てに従って行動すれば良い。
俺が思い付いたアイディアを気に入ったジェシーが、些か興奮気味に自分のパソコンに噛り付きプランの原案を打ち込み始めるが、具体的な詳細までは現時点で見えているわけではないので、そう簡単に纏まるはずもなく深夜遅くまでジェシーは打ち込み作業に没頭している。
暫くは黙ってジェシーの様子を見ていた俺だが、ジェシーを見ている以外は手持無沙汰な状態となっているので、とても最後までは付き合いきれない。そんな俺の様子に気が付いたジェシーが
「私は未だ打ち込み作業を行っていますが、ジョージは先にベッドで寝ていても構いませんよ」
と言った後も直ぐにパソコンの画面へ視線を移して作業に没頭している。
その様子を見た俺は
「それじゃ、お先にさせてもらうぞぉ」
とジェシーに声を掛けてベッドへ向かう。
翌朝、目を覚ました俺は両目を充血させたジェシーの姿を見付けると
「おいっ、あれから寝たのか?」
半ば驚いてジェシーに声を掛けると
「あっ、おはようございます。結局、徹夜になってしまいました」
ジェシーは言うと眠そうな両目を擦っている。




