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デルタのスナイパー  作者: 二条路恭平


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コスタリカからパナマ共和国までは車で移動しても数時間を要するので、移動中は車内でジェシーと雑談をしながら過ごすことになる。

最も、アメリカにおいても民間の旅客機がフライトしていないような場所への移動となれば、数時間や場所によっては数十時間を車で移動するのは決して珍しいことではないので気長に行くしかない。

少なくとも、パナマ運河の管理権を有している中国国営企業に関するミッションである以上は、パナマ共和国へ入国しないことには話にならないが俺にしろジェシーにしろパナマ共和国への入国に際しての入管手続きに使用するパスポートはCIA特製の巧妙な偽造パスポートを提示することになり、本当に本名を記載したパスポートを使うことはない。

最も、今回のミッションで落ち合ったばかりのジェシーがどうなのかまでは知らないが、少なくとも俺に関して言えば10年以上は自分のパスポート自体を所持したことはなく、だいたいパスポートを作ったこともない。

その割には、与えられるミッションの殆どが海外となっているが、基本的にミッションを行う場所への移動は近隣の在米軍駐屯基地からとなるので海外であったとしても米軍基地間の移動に際してはパスポートを要することはない。まして、ミッション遂行時には高度に政治的な内容のミッションに従事する関係上、アメリカ軍人であることを秘匿しての行動が殆どなので、米軍かCIAでもない限りは基本的に俺本来の情報を把握している人間はいないことになる。

そうしているうちにコスタリカとパナマ共和国の出入国管理事務所に到着すると、予め渡されている偽造パスポートを持って車を降りて出入国管理官のいる事務所のカウンターへ向かう。

出入国管理官からは出入国の目的等が聞かれるほか、通常は所持している手荷物の検査を受けることになるが偽造パスポートは外交官用となっているので基本的に手荷物検査が実施されることはないのだが、かと言って完全なフリーパスというわけでもなく如何に外交官と言えども麻薬等を密輸する可能性が否定できない以上、麻薬探知犬によるチェックは行われることになるが俺の手荷物に麻薬等は一切入っていないので麻薬探知犬が反応することはない。

そのため、出入国管理官から口頭による質問等の形式的な内容に終始して直ぐにパスポートに許可のスタンプが押されて返却される。

ジェシーについても提示したのは外交官パスポートなので、何の問題もなく出入国が許可されたので共にジェシーの車へ戻りパナマ共和国へ入国する。

パナマ共和国に入国できたからと言って、パナマ運河近辺に辿り着いたわけではなく、更に車で移動して首都であるパナマシティにまで行かなければならない。

再び車による長距離移動となるが、そこで俺は後部座席に置いていたバックパックからコンバットユニット・レイル1911拳銃とヒップホルスターを取り出し、ジーンズのベルトを緩めて途中まで外し、そのベルトにヒップホルスターを通してから再びベルトを締め直してから、コンバットユニット・レイル1911拳銃のスライドを上から右手で鷲掴みするようにしてから後方へ引っ張る時に、グリップを握っている左手は前方へ押しやるようにするとコンバットユニット・レイル1911拳銃のスライドが後方へ動き出す。

スライドが後方一杯まで引けたところで、スライドを掴んでいた右手を離すと圧縮されたバレル直下のリコイルスプリングが元に戻ろうとする力を利用してスライドが前進する際に、スライド中央付近の右側に空いているエジェクションポートの後方にあるブリーチ・フェイスが、装填されているマガジン最上部にある45ACP弾薬のヘッド部に当たって弾薬を前方へ押し出す。

押し出された45ACP弾薬は、そのままブリーチ・フェイスに押されてチャンバーへ送り込まれるのと同時に、弾薬の底面であるヘッド部と薬莢本体との間になる凹んだ溝にブリーチ・フェイス右側にあるエキストラクターという部品の爪が引っ掛かった状態となる。

エキストラクターという部品は、セミオートマチック拳銃等で発砲直後に弾丸が放たれた後の空薬莢を排出するために、スライドが後退する力を利用してチャンバーにある空薬莢を後方へ引き出す役割を持っており、このパーツが無いと発砲後の空薬莢をチャンバーから適格に引き出せなくなり、結果として空薬莢が排出されないことでマガジンに詰められている次の弾薬をチャンバーへ送り込めなくなるので連続的な発砲が困難となってしまう。

スライドが元に戻ったことでハンマーが起こされ、このままトリガーを引けば発砲となるのだが、それでは携行するのに都合が悪いためハンマーの近くに位置するマニュアル・セイフティー・レバーをグリップしている左手の親指を使って上方へ跳ね上げてトリガーを引いてもハンマーが動き出さないようにする。

この状態をコンディション1と言って、1911系拳銃のチャンバーに弾薬を装填して即応性はあるものの、安全な状態で携行できるよう多くの1911系拳銃を使用する者が行っている携行方法である。

セミオートマチック拳銃には、トリガーを引くとレスト状態にあるハンマーを起してから発砲となるダブル・アクションと、スライドを後方へ引くとかグリップを握っている手の親指でハンマーを起してからトリガーを引いて発砲するシングル・アクションという方法があるが、1911系拳銃の場合は基本的にシングル・アクションなのでハンマーを起すためのワン・アクションがなければ発砲することができない。

それでは所持している拳銃を発砲するような状態となった場合に、ハンマーが倒れた状態の時にはハンマーを起す動作が必ず必要となるので、発砲までに僅かではあっても時間を要して即応性に欠けてしまう。

それならば、ダブル・アクション機能を持った拳銃の方が有利なように思えるが、ダブル・アクションの場合はハンマーを起す、言い換えればハンマースプリングを圧縮する動作がトリガーを引いた最初の段階で必要となるためトリガーを引く力が結構必要となり、そのためマズルが小刻みに動いてしまって狙点へ確実に弾丸を放てなくなってしまうデメリットがある。

事実、アメリカの警察ではダブル・アクションの拳銃を使用している場合には初弾をダブル・アクションで発砲するようにルール化されているのだが、その関係で相当な射撃訓練を行った者でさえ初弾をターゲットに命中させるのは稀で、殆どが初弾発砲後にシングル・アクションへ切り替わる2発目以降でヒットというのが現実なのだ。

その点、シングル・アクションの場合は事前にハンマーさえ起こしておけばトリガーを引く力はハンマーを倒すためだけに要する力で済むので、ダブル・アクションよりも少ない力で発砲ができるので初弾をターゲットにヒットさせやすくなる。

そのため、コンディション1の状態で携行するのをマッスル・メモリーにできる射撃上級者はシングル・アクションである1911系拳銃を好む傾向が高い。

ただし、どちらのアクションが優れているという事ではなく基本的に銃器の仕組み等には、必ずメリットとデメリットが存在して銃器を使用する全ての人間が満足できるような銃器を人類は未だに開発できていないことを理解しておく必要がある。

先程まで居たコスタリカと現在居るパナマ共和国は、基本的に治安が良いとは言い難いので本来ならばコンデション1の状態でコンバットユニット・レイル1911拳銃をヒップホルスターへ入れて携行していたかったのだが、コーディネーターと接触できれば直ぐにでもパナマ運河近くに移動したいと考えていたため、国境の出入国管理事務所で出入国の手続きを行う必要を認識していたので、パナマ共和国に入国するまでは拳銃の携行を控えていたのだ。

だが、パナマ共和国に入国した以上は、使い慣れたコンバットユニット・レイル1911拳銃をコンディション1の状態で携行して不測の事態に備えられるようにしておく。

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