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何発目かの迫撃砲弾が比較的近くに着弾し、俺達全員の不安が徐々に高まってきた時、海の方から複数のヘリコプターが発しているメインローター音が近付いてくるのが聞こえてきた。
ヘリコプターのパイロットからの無線でもランデブーポイントに接近中との連絡が入ったことで、待っていた送迎の輸送用ヘリコプターが到着しつつあることが分かり、ランデブーポイントで待っていた俺達にも安堵感と共に冷静さが甦ってきた雰囲気になる。本来ならば、ガッツポーズと気勢を上げたいところだが、此処でそんな事をしたら微かにではあったとしても敵に聞かれでもしたら、立ち処に俺達が居る場所の方向を特定されて迫撃砲の集中砲火を浴びることになってしまう。
第一、俺達に輸送ヘリコプターのメインローター音が聞こえている状況なのだから、敵が感知しないわけはなく今度こそは周辺に迫撃砲弾が飛来してきそうな状況になっているのだ。
海兵隊遠征隊のチームリーダーは、自らのバックパックからハンディライトを取り出して接近してくる輸送用ヘリコプターCH‐53シースタリオンへ居場所を知らせる合図を送る目的で点灯させ、同時に咽頭マイクの無線を使って護衛の攻撃ヘリコプターAH‐1Zヴァイパーに敵から迫撃砲の攻撃を受けている状況を伝えることも忘れない。
海兵隊遠征隊のチームリーダーからの無線連絡を受けたAH‐1Zヴァイパーが、暗視カメラとサーモセンサーを使って迫撃砲を発射している敵の居場所を特定したのか、海上でホバリングを始めて攻撃態勢に移行している。
AH‐1Zヴァイパーのコックピット前方下部に備わっているM197 20ミリメートル機関砲の3本のバレルが連結されたターレットが回転を始めると「ブォーッ」という野太く腹に響くような発射音を轟かせながら12時の位置に来たバレルのマズルから盛大なマズルフラッシュが噴き出して1分間に600発以上の20ミリメートル弾が放たれる。
しかも、照準や発砲機構はコンピュータ制御がされているにも関わらず5発に1発の割合で曳光弾が放たれるので、近くにいる俺達の頭上を時折オレンジ色に光る20ミリメートル弾が飛び去っていくのが流れ星でも見ているよう感じに映る。
AH‐1ZヴァイパーがM197 20ミリメートル機関砲を掃射していたのは、時間にして1分にも満たないと思うのだが、「ブォーッ」という掃射音が消えた直後には敵からの迫撃砲が放たれるような様子が完全に失せてしまった。
3機のCH‐53シースタリオンと2機のAH‐1Zヴァイパーのメインローターが回転する音によって潮騒以外が聞こえなくなったところで、3機のCH‐53シースタリオンが砂浜に着陸を開始する。
3機のCH‐53シースタリオンのメインローターが回転することで砂浜に吹き荒れる強風が砂粒を巻き上げるために両目を開けていられなくなるが、それでも着陸したCH‐53シースタリオンの後部スライドハッチが開け放たれた搭乗口を目指して俺達は歩を進め、負傷者を優先してCH‐53シースタリオンへ乗り込ませる。
上空には、AH‐1Zヴァイパー2機が近くの上空でホバリングをすることなく警戒のために旋回しながら飛行している。
AH‐1Zヴァイパー2機が、着陸したCH‐53シースタリオン近くの上空でホバリングをしていないのは、下手にホバリングで待機していては陸地から迎撃のためのロケット砲や飛行タイプの爆弾ドローンが襲来した場合には、着陸したCH-53が直ぐに対応できないことから陸地から狙われたケースも考慮して旋回運動をして位置を固定しない方が得策なためである。
旋回飛行で周囲を警戒していたAH‐1Zヴァイパーが、旋回飛行から突如機首を上げて上昇を始めると、機体から赤外線誘導ミサイルを逸らすための高温発光弾であるフレアを射出する。
放たれたフレアが、瞬時に激しく閃光を放つと日本で暮らしていた頃に見た打ち上げ花火のような光景を目にするが、その閃光へ吸い寄せられるように細い火柱を放ちながら物体が内陸側から飛翔しているのが見えたと思うとフレアと接触した瞬間に、日本で見た覚えのある花火よりも盛大な「ボォーンッ」という音と共に眩しい火の玉が見える。
離陸前のCH‐53シースタリオンがメインローターをアイドリング回転させているので、ハッキリとしてはいないが海面に四散した金属片が落下して「バシャ、バシャ」という音が微かに聞こえ、そんなには大きくない水飛沫が立っている。
一方で、機体を上昇させてフレアを射出したAH‐1Zヴァイパーは再び態勢を整えて空対地ミサイルで主に対戦車ミサイルとして使用されているAGM‐114ヘルファイヤ1発を発射するとミサイルの後部から青白い発射炎を吹き出して陸地側へ飛翔していく。
一呼吸の間も付かないうちに、内陸側の遠方からではあるがCH‐53シースタリオンのメインローター回転音に負けないくらいの爆発音が聞こえてくる。
AH‐1Zヴァイパーの武器管制システムによってミサイルによって攻撃を仕掛けてきたポイントを特定しての空対地ミサイルだったのだろうが、敵が放ってきたのは吹き出していた細い火柱から推測すると恐らくロシア製の9K32ストレラ‐2ロケットランチャーかと思われる。
もし、9K32ストレラ‐2ロケットランチャーが使用されているのであれば、元々は携帯型防空ミサイルシステムとして開発されているのでジープ等の車両での運搬が可能なため比較的容易に移動ができるのだが、AH‐1Zヴァイパーが発射したAGM‐114ヘルファイヤの誘導をパッシブ赤外線ホーミングにでも切り替えて運用したのだろうか、パッシブ赤外線ホーミングであれば移動する車両のエンジンから発生している熱源を探知して追尾するので確実に敵を仕留めることはできるだろう。
しかも、下手にAH‐1ZヴァイパーがM197 20ミリメートル機関砲を掃射したところで、敵が9K32ストレラ‐2ロケットランチャーのミサイル本体を1発以上持っていたとしたらM197 20ミリメートル機関砲を掃射している最中に再度ミサイルを発射されたのでは面倒なことになるのを考慮すれば、1発のAGM‐114ヘルファイヤを発射して早期に片をつけた方が無難ではある。
護衛のAH‐1Zヴァイパーが、敵の携帯型ミサイルを始末したのを待ってCH‐53シースタリオンが離陸を始める。
これで、後は敵のレーダー網で察知されないように低空飛行によって原子力空母エイブラハム・リンカーンへ帰還すれば負傷は出たにしても作戦は成功したものと考えても良いと思われる。
最も、このように敵の爆弾ドローン保有施設を壊滅させるのであれば海兵隊遠征隊に多数の負傷者が発生している状況では、更なる増援を行わなければ更なる作戦の遂行に支障が生じるのは間違いない。
何れにしても、原子力空母エイブラハム・リンカーンへ帰還した後は暫くの間、新たな作戦を遂行するような命令は出されないだろうから、このままエイブラハム・リンカーンで待機となるのか、或いは全く別のミッションを命令されて原子力空母エイブラハム・リンカーンから新たな場所へ移動となるのか分からない。
只今は、敵からの更なる攻撃を受けることなく無事に原子力空母エイブラハム・リンカーンへ辿り着けるよう、CH‐53シースタリオンの窓から吹き込んでくる潮風を感じながら願うばかりだ。




