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「ダァーンッ」という発砲音と共に6.5ミリメートルの弾丸が放たれ、迫って来る車両のドライバーへ飛翔していく。
跳び出した弾丸は、車両のフロント窓を貫通して窓には2つ目の蜘蛛の巣状となったひび割れを作ってドライバーの胸部中央へ命中すると、肋骨の一部を破壊して6.5ミリメートルの弾丸と破壊された肋骨の破片が肺と心臓を徹底的に傷付けながら部分的に破壊していく。
ドライバーの体内に飛び散った骨片は、肺と心臓以外にも血管や筋肉等を傷付けて体内に留まっているが、6.5ミリメートルの弾丸は体内を破壊しただけは済まずに左の肩甲骨の直下に大きな射出孔を作って背中側の肋骨4本を砕いて鮮血と共に体外へ飛び出し、ドライバーが座っていたシートの背凭れを血塗れにしながら食い込んで進行を止めた。
一方、6.5ミリメートル弾丸が貫通したドライバーの身体は、射入孔よりも大きく抉られた射出孔から大量の血液が噴き出すのと同時に、鼻と口からも多量の鮮血を吹き出し心臓と肺の一部を破壊されたドライバーの両目は、腐った魚のように開かれているが何処にも焦点が定まっておらず、加えてステリングを握っている両手には力が加わっていないので地面の凹凸による衝撃を受けて、ステアリングから勝手に両手は外れてコントロールを失い、在らぬ方向へ車両は走行し未舗装路の窪みに左の前輪が沈み込むと車体が大きく撥ねて一挙に横転する。
迫って来ていた車両は、ジープだったようで車体後部に幌を貼っていないために助手席と後部座席で発砲していた戦闘員は、横転と同時に車外へ放り出されて未放送路の地面に叩き付けられる際、受け身を取ろうとしたために両手で持っていたAK‐47アサルトライフル銃を放り出してしまう。
そこへ、ニーリングのポジションで射撃していた海兵隊遠征隊のメンバーがフルオートで7.62ミリメートルNATO弾を容赦なく浴びせるので、ジープから放り出された全員が複数の弾丸が至るところに被弾して確実な死を迎える。
月夜と言えども余り視界の利かない状態ながら、横転したジープの左側のタイヤが空しく回転しているのは音によって把握しているが、蜂の巣となった戦闘員の身体から弾け飛んだ血液の跡や死体から漏れ出ている血の池状態までは視認できないものの、周囲には硝煙の匂いと共に血の匂いが交じって漂っているのを嗅覚で感じる。
目の前に迫った敵の追っ手を始末したことで、ニーリングのポジションで射撃をしていた海兵隊遠征隊のメンバーが立ち上がるが、数人はフルオートによるAK‐47の銃撃を受けて身体を掠めたり、致命弾とはならないまでも肩等に被弾している者がいるので動きが鈍くなっている。
その状況を把握した海兵隊遠征隊のチームリーダーは、無線のチャンネルを操作して原子力空母エイブラハム・リンカーンと交信を始めて、合流するランデブーポイントの変更を伝えている。
確かに、複数の負傷者が発生した以上は幾ら訓練で鍛えた軍人であっても長距離の移動は、負傷していない場合よりも遥かに時間が掛かってしまうので、そうなれば次なる敵の追っ手と遭遇する確率が高くなり、この状況での戦闘は明らかに不利である。ならば、俺達を回収するための輸送用ヘリコプターに少しでも内陸側に来てもらい早く回収された方が得策と言える。
新たな合流ポイントが決まって、移動を開始するが応急手当を施されたメンバーは健常な状態の人間がサポートして移動しなければならないのだが、海兵隊遠征隊同士であれば素直にサポートを受けるのだが、俺達3人からのサポートを受けるとなると途端に遠慮をするのか自力で歩こうと無理しているので見かねたマイクが
「さっさと合流ポイントへ移動しなければ、次に敵の追っ手と遭遇するような事態になれば全員が全滅するんだから、余計な遠慮なんかしてないで素直にサポートを受けるように部下へ言ってくれ」
と海兵隊遠征隊のチームリーダーに声を掛ける。
それを聞いたチームリーダーが
「デルタのメンバーが言う通り、現状では一刻も早く合流ポイントへ移動しなければならないんだ。部隊が違ってもデルタのメンバーも味方なんだからサポートしてもらえるなら素直にサポートをしてもらえッ」
と若干声のボリュームを大きくして部下に伝えてくれる。
そのチームリーダーの声を聞いて、俺達がサポートしようとしている海兵隊遠征隊のメンバーも素直にサポートを受けるようになったが、サポートを受けたからと言っても決して移動スピードが健常時と同じように歩けるわけではない。
しかし、これが健常な人間からのサポートを受けなければ傷の応急手当を受けた直後ともなれば、傷の痛みに耐えながらの運動となるので移動スピードは一層遅くなってしまう。
海兵隊としてのプライドなのかもしれないが、俺達にしても本来ならば全体を警護するためにメイン・アームを直ぐに使用できるような状態でいた方が楽ではあるのだが、それでは全体の移動スピードが遅くなるばかりか下手をすれば全体から遅れた人間が敵の追っ手に捕縛されて人質になってしまう恐れがあるので、襲撃チーム全体が無事に生き残るためにも余計なプライドは捨ててもらいたいと思ってしまう。
ただし、俺がサポートしたメンバーは右大腿部に被弾しており、幸いにも弾丸は貫通して応急手当は受けているものの、歩く際には右脚を引き摺るような状態でなければ歩けない。
そのため、歩く際には左側でサポートをしている俺の方へ体重を預けてくるのでメインアームであるカスタム・ボルトアクション・ライフル銃は左手だけで持っていなければならず、仮に敵の追撃があったような場合には直ぐに対応できる状態とはなっていない。
そんな状態であっても敵からの追撃に警戒をしないわけはいかないので、耳を澄まして聴覚に神経を集中させて敵の襲来に備える。
迎えの輸送用ヘリコプターとのランデブーポイントへ向けて移動している集団の最後尾を右脚大腿部が負傷した海兵隊遠征隊のメンバーをサポートして歩いていると、後方の上空から聞き覚えのある何とも不気味な「ヒューッ」という迫撃砲弾が飛来してくる音が聞こえてくる。
「敵が迫撃砲を撃ってきている。未だ右脚が痛むだろうけど少々無理をしても急ぐぞぉ」
隣で額から脂汗を滲ませている負傷した海兵隊遠征隊のメンバーに声を掛けると、そのメンバーは、俺の声を聞いて頷くと顔を歪めながらも必死になって右脚を引き摺りながら歩調を早めてくれる。
しかし、幸いにも迫撃砲弾が着弾したのは俺達が少し前までジープで追撃してきた敵と交戦していた場所で敵のジープが横転した辺りに着弾しているようで、背後から「ボンッ」という迫撃砲弾が炸裂する音が聞こえてくる。
少なくとも俺達は、最初に迫撃砲弾が着弾した辺りから50メートル以上は離れているので着弾した迫撃砲弾の炸裂に伴う影響を受けずに済んでいるが、敵とて馬鹿じゃないので徐々に着弾地点を移動させてくるだろうし、使用している迫撃砲の最大射程距離まで撃ち終えれば敵の勢力圏内であることを踏まえて迫撃砲の発射地点さえ前進させてくるだろうから、何時までもグズグズしてはいられない。
それは、移動している集団の前方で部下をサポートしている海兵隊遠征隊のチームリーダーも感じているようで、無線を使って原子力空母エイブラハム・リンカーンへ状況を伝えている。
チームリーダーからの連絡を受けて護衛に攻撃ヘリコプターのAH‐1Zヴァイパーを出動して貰えるならば、最小の被害で撤収することが可能とはなる。
ただし、問題なのは輸送用ヘリコプターとのランデブーポイントまで迫撃砲の直撃を受けずに辿り着いたとしても、実際に輸送用ヘリコプターが到着するまでの間に迫撃砲の攻撃を受けることなく居られるかなのだが、今も2発目の迫撃砲弾が飛翔してきている音が聞こえてくるので、敵がどの程度に射程距離を伸ばしているかは分からないにしても迫撃砲の攻撃が徐々に迫ってくるのは間違いない。
後方で着弾した迫撃砲弾の炸裂音が、心なしに1発目の着弾位置よりも確実に俺達の方へ近付いているように感じる。
迫撃砲は、火砲自体が簡易的な構造となっており発射される砲弾も高い射角を取るので、拳銃やライフル銃等の小火器よりも極端に歪曲した放物線を描いて飛翔する。
とにかく、射程距離を犠牲にして初速を低くしているので各部は必要最小限の強度となっているので作りが軽量コンパクトにできる。また、発射時の反動は直接地面に吸収させるので反動を制御するメカニズムを必要としないだけでなく、撃ち出す砲弾もマズルからの装填となる前装式となることでチャンバー部での閉鎖機構も不要となる。
ただ、デメリットとして命中精度が低いことに加えて射程距離も比較的短くなっているのだが、運用面を考えれば軽量コンパクトで生産性に優れている一方で速射性に優れて破壊力もあるなどのメリットは捨てがたいものがある。
敵が放ってくる迫撃砲の着弾位置は徐々に迫って来つつあるものの、どうにか直撃や迫撃砲弾の炸裂範囲に入ってしまうことなく海兵隊遠征隊チームリーダーが原子力空母エイブラハム・リンカーンと打ち合わせた合流ポイントまで辿り着くことができた。
後は、輸送用ヘリコプターと護衛の攻撃ヘリコプターが到着するのを待つだけにはなるのだが、敵が迫撃砲の発射を中断する気配はなく依然として一定間隔で迫撃砲を発射してきており、その着弾位置も少しずつ接近してきている。
加えて、都合の悪いことに輸送用ヘリコプターとの合流地点はヘリコプターが着陸する関係で、平場となっており迫撃砲弾が近くに着弾した場合は砲弾の炸裂から逃れられるような遮蔽物が周囲に見当たらないので、仮に目の前で迫撃砲弾が着弾した場合は幾ら足元が砂場とは言え、炸裂によって飛び散るのは砂粒だけではなく炸裂によって迫撃砲弾自体の金属片も飛び散ってくるので、その金属片の直撃でも受けようものなら負傷どころでは済まなくなる。
「ドンッ、ザッザッザァ」と俺達が潜んでいる場所の30メートルくらい手前に敵が放った迫撃砲弾が着弾している音が聞こえる。




