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マイクが支給されたSCAR‐Hアサルトライフル銃をニーリングのポジションで構え、暗視カメラで白黒画像を見ているような状態で赤く輝かせたスコープのレティクル・センターを敵の施設の2階で開け放たれている窓枠の下辺に合わせると、接眼レンズ越しに敵の顔と構えているAK47アサルトライフル銃が俺達方へ向けられているのが確認できる。
その白黒のような画像に映し出されている敵が、俺達の方へ発砲しているのが分かるので左手の人差し指が即座に反応してトリガーを引き絞り始める。
「ドンッ」という発砲音と共に左腕の付け根付近で固定しているSCAR‐Hアサルトライフル銃のバットストック部が発砲による反動と、マズルから弾丸が飛び出した事で猛烈なスピードによって後退してくる金属製のボルトがボクサーのストレートパンチのように襲い掛かって、目には見えない力で押し込んでくる衝撃の全てを左腕の付け根を中心として身体全体で受け止めるようとするが、完全には受け止めきれずにマズルが僅かに上方へ跳ね上がる。
それと同時に、弾薬の底にあたるヘッド部と薬莢のボディー部の取付け付近にある凹みに噛み合ったエキストラクターが、チャンバーに残っている発砲済みの空薬莢を後退するボルトの力を利用して引っ張り出し、エキストラクターとは反対側に位置する細い板状のエジェクターが空薬莢ヘッド部の左側と衝突すると、そこを起点として空薬莢の前方先端部が右方向へ傾いてエジェクションポートから空薬莢が弾き出される。
この時、ボルトは後端にありバットストックをアサルトライフル銃に取り付けるための筒状になっているバッファーチューブ内のスプリングを圧縮しているので、ボルトの後退によって空薬莢が弾き出された後は、バッファーチューブ内で圧縮されていたスプリングが元に戻ろうとする力を受けて前進を開始する。
バッファーチューブ内のスプリングが元の状態に戻ることで前進したボルトは、前方直下に位置しているマガジン最上部の次なる弾薬のヘッド部上部が、ボルト前面のボルトフェイス下部と衝突して斜め上方へ押し出されてチャンバーへ導かれる。
その際、ボルトフェイスと弾薬のヘッド部が衝突してチャンバーへ装填される金属音が「ガッ、ガチッ」と聞こえて次弾を発砲を可能とする準備が整うので、引き絞っていたトリガーを僅かに前方へ戻して次弾の発砲に備える。
最も、俺が使用しているのはマイクに支給されたSCAR‐Hアサルトライフル銃なので左手で握っているグリップの上部にあるセレクターには「FULL」と刻印された連射モードの位置へセレクターレバーを移動させればボルトが次弾をチャンバーへ装填して閉鎖された時点で、ロアレシーバー側に内蔵されているハンマーが落ちてボルト内を貫通しているファイアリングピン後端を打撃して、チャンバーに装填された次弾のプライマーにファイアリングピン前端が当たって発砲されることになるのだが、今のセレクターレバーは「SEMI」という単発モードにしている関係で自動的にハンマーが落ちることはなく、トリガーを僅かに前進させるトリガーリセットという行為をしなければ次弾を発砲することはできない。
隣でスポッター役をしてくれているマイクが
「ジョージの2発目、窓枠下部で発砲していた敵の顔面をヒットしている」
と教えてくれる。
ニーリングの射撃ポジションをしている俺と敵の施設2階とでは、敵の施設2階が僅かに高い状態であるために、撃ち上げの状態で発砲している事に加えて背中側から吹いているフォローの風の影響もあってスコープのレティクル・センターを合わせていた窓枠よりも上方へ弾丸が飛翔したので、イメージ通りに敵の顔面を捉えることに成功している。
スポッター役のマイクが
「スティーブの2発目、ジョージの右隣りに居る敵の右蟀谷付近への着弾となって完全なヒットとなっていないので、続けて3発目を発砲しろッ」
とスティーブに指示しているのが聞こえる。
俺がマイクから借りているSCAR‐Hアサルトライフル銃より、重量のあるスティーブが使用しているSR‐25M110アサルトライフル銃を俺と同様にニーリングの射撃ポジションで構えているので射撃姿勢が安定しないのかもしれない。
ただし、スティーブも過酷なスナイパー訓練を受けたデルタのスナイパーなので次弾では確実に敵をヒットさせられると判断した俺は、スティーブが狙っている敵への発砲をすることなく、直ぐにスコープを左側へ移動させて次の狙撃目標を物色する。
そんな最中、海兵隊遠征隊のメンバーが投擲した何個目かの手榴弾が爆発した瞬間に、爆風により沸き上がる煙の中から飛び出してきた物体が視認できた。
その物体をスコープで追ってみると、敵が保有している1機の飛行タイプの爆弾ドローンが飛翔しているのが分かった。ただし、俺が今いる位置から夜空を飛翔している爆弾ドローンを撃墜させるのは、ハンティングで大型の野鳥を撃つのは違って容易なことではなく、第一野鳥をハンティングするのは夕暮れ間近ということはあっても、完全に日没となった夜間に行うことはない。
ただ、このまま飛翔している爆弾ドローンを見過ごしたとしても敵の施設へ直接攻撃を実施中の海兵隊遠征隊のメンバーへ向かって特攻を仕掛けてくる可能性があるので、黙って放置しておくわけにもいかない。
グリップを握っている左手の親指を伸ばしてセレクターレバーに添え、「SEMI」の位置から「FULL」に切り替えて飛翔中の爆弾ドローンを撃墜しようかと思案していると、突然飛翔している爆弾ドローンの飛行姿勢が一瞬グラついて飛行速度が遅くなった。
恐らく、敵の施設近くで攻撃している海兵隊遠征隊のメンバーがSCAR‐Hアサルトライフル銃を連射によって打ち出した1発が運良く飛翔中の爆弾ドローンを掠めたのかもしれない。
その機会を黙って逃す必要はないので、飛行姿勢を乱して速度が遅くなった爆弾ドローンの機体中央へスコープのレティクル・センターを合わせて、急ぎながらも慎重に真後ろへトリガーを引き絞る。
「ドンッ」という発砲音と共にSCAR‐Hアサルトライフル銃のマズルは反動によって僅かに上方へ動くので、当然ながらスコープも狙っている爆弾ドローンからは逸れるのでスコープ越しに爆弾ドローンの状態を確認することはできない。
しかも、スコープで照準中でも瞼を閉じることなく視界を確保している右目であっても、100ヤード以上離れた場所から夜間の上空を飛翔している爆弾ドローンを視認することは簡単なことではない。
デルタのスナイパーである俺とスティーブは、過酷なスナイパー養成課程の訓練で嫌と言う程にスコープ等の光学照準器を使用する場合に両目照準を叩き込まれている。
確かに、協議射撃等を行っている連中のなかにはスコープ等の光学照準器を使用している際に、スコープ等を覗く利き目ではない方を閉じないとスコープ等で狙っているターゲットを上手くイメージできないという声を耳にするが、俺達のように戦闘状態で光学照準器を使用する者にとっては両目照準を行うのはマストと言っても良い。
それと言うのも、戦場でターゲットを高倍率で認識したうえで狙う必要はあるものの、敵はターゲットのみとは限らずスコープの接眼レンズには映し出されいない周囲に展開している可能性が充分にあり、光学照準器を使用している時に利き目ではない方の目で周囲を視認していなければ、最悪のケースではターゲット以外の敵から狙われていることに気が付かずに、敵から狙撃されて命を落とす可能性すらある。
しかし、直ぐ後方で状況を暗視用機能が付加された双眼鏡タイプのスポッティング・スコープで見ていたマイクが
「スティーブの3発目、狙ったターゲットにヒット。そしてジョージが狙ったドローンは、少なくともプロペラの1つにヒットしたようで完全に飛行姿勢を維持できなくって落下している」
と言う声が聞こえる。
その直後、右目には敵の施設敷地内に落下した爆弾ドローンが爆発したことでオレンジ色の炎が夜の空に立ち昇っていくのが見えるが、スコープを覗いている左目には爆弾ドローンの爆破による一瞬の強い光を放つ閃光によって、スコープの前方に装着している暗視カメラが一時的にホワイトアウトの状態となって接眼レンズには白色以外に何も映し出されなくなっている。
しかし、右目では爆弾ドローンの爆破によって発生した爆風で飛ばされている人間と思えるような黒い影が数体、数メートルの高さにまで舞い上がっているのだけは視認できている。
その直後のことだが
「建物内に数個の手榴弾を投擲するのに成功した」
という無線がイヤフォンに飛び込んでくる。
まるで航空機でも墜落したかのような「ドーォンッ」という腹に響くような爆発音がしたかと思うと、敵の建物内から一瞬の閃光が輝くと全ての窓が外側へ向かって吹き飛び、同時に建物の一部なのか人間の身体の一部なのか判別できない黒い塊が無数に吹き出してくる。




