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デルタのスナイパー  作者: 二条路恭平


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海兵隊遠征隊のメンバーが撤収して合流してくるまでの間、暗闇からイスラム武装組織の連中からの襲撃に備えるために3人全員が神経を尖らせて周囲への警戒にあたっている。

厄介なのは、夜間とは言っても周囲には夜行性の動物達も徘徊しているので時折、聞こえてくる動物達が動き回った際に発する音で敵が襲来してきたと思われ、その都度に銃を構えて反撃しようと神経を擦り減らす。

加えて、海兵隊遠征隊のメンバーが近寄ってくるにしても敵との交戦した末に撤退してきて施設内の敵を完全に殲滅してはいないので、ライト等を点灯させて近寄ってくるわけではなく、その点においては敵が俺達に襲撃を仕掛けてくるのと何一つ変わらないスチエーションため余計に神経を使わなければならず、普段のミッション以上に神経を擦り減らす消耗戦と言っても過言ではない。

そんな神経を張り詰めた状態の時に、海兵隊遠征隊のメンバーが行軍していった方向から複数の足音が聞こえてくるのを3人が同時に捉え、互いに顔を見合わせて頷き各自が手にしている銃器を足音が聞こえてくる方向へ構えて、イスラム武装組織の連中からの襲撃に備えていると

「こちら海兵隊遠征隊だが、進行方向に君達3人が銃器を構えているのを確認したが、我々20名全員が撤退中で敵が追跡してきている気配はないから、近寄っても発砲はしないでくれ」

と無線で、海兵隊遠征隊のリーダーらしき男の声が聞こえてくる。

今夜の出撃に際して使用している無線機を使っているだけでなく、話している英語についても仮にイスラム武装組織の連中が海兵隊遠征隊のメンバーから無線を強奪して使っているにしては、発音が英語圏ではない人間にしては喋り慣れている感じがあるので、海兵隊遠征隊のメンバーが合流してきていると判断しても良さそうなのだが

「視力が回復して暗視ゴーグルを使用しているのか?」

とマイクが敢えて無線で問い掛ける。

「ああ、閃光弾が近くで爆発して閃光が見えた際には、暗視ゴーグル越しだったので視界が奪われてしまったが、未だ完全ではないものの視力が若干だが回復してきているので暗視ゴーグルを使用して君達を視認している状態だ」

海兵隊遠征隊のリーダーが答えてくる。

そこまで確認ができたならば、近寄ってくるのが海兵隊遠征隊のメンバーであると認識しても強ち間違いではなさそうだが、追っ手はいないという部分については撤退してきている海兵隊遠征隊のリーダーが感じているだけで、確実な確証が取れているわけではないので銃器を構えている状態を安易に解くというわけにはいかない。

緊張感を維持したまま、足音のする方向へ視線を向けていると20人近くの人間が近寄ってくるのを微かに捉えるが、何人かは肩を担がれているので敵が発砲してきた銃弾によって負傷している者がいるようだ。

海兵隊のメンバーも応急処置については訓練で習得しているはずなので、改めて俺達が負傷者の応急手当を施す必要はないだろうが、負傷者がいるという事は原子力空母エイブラハム・リンカーンから迎えのヘリコプターを出してもらうにしても、現在の場所から遠くの地点をランデブーポイントにするのは負傷者に負担が大きく難しいと言えるだろうから、比較的近い場所へ迎えのヘリコプターを要請するしかない。

そこでマイクは海兵隊遠征隊のリーダーに

「このメンバーで、クレイモア地雷を装備している人間がいるか?もし、クレイモア地雷を装備しているなら空母からのヘリコプターと合流するポイントへ移動する途中に、何か所かへクレイモア地雷を仕掛けておいた方が安全だ」

と海兵隊遠征隊のリーダーに提案する。

原子力空母エイブラハム・リンカーンから飛来する迎えのヘリコプターとのランデブーポイントを何処にするのか定かではないが、移動途中で岩場が迫り出して道幅の狭いような箇所へクレイモア地雷を仕掛けておけば、敵の追跡人数を多少なりとも撃退できるだけでなく、迎えの輸送用ヘリコプターに護衛の武装ヘリコプターも追加して出動してもらえば、輸送用ヘリコプターが俺達を搭乗させるために着陸している間や離陸直後の状態となっているケースで敵の追っ手から襲撃を受けたとしてもクレイモア地雷が起爆すれば、その周辺へ武装ヘリコプターからの集中砲火を浴びせてもらえば敵の追っ手を殲滅できるだけでなく、俺達も比較的安全に離脱することが可能となる。

それを察した海兵隊遠征隊のリーダーは

「クレイモア地雷を装備している者は、デルタのマイク准尉からの指示に従い撤収用ヘリコプターとのランデブーポイントへ移動する途中で、クレイモア地雷を仕掛けて敵の追っ手を阻むためのトラップを設置しろッ」

海兵隊遠征隊のメンバーに無線を通して命令を下す。

それに呼応したメンバーで負傷していない者は、負傷した仲間からクレイモア地雷を追加で受け取りリーダーの近くにいるマイクの周囲へ集まってくる。

その間に、海兵隊遠征隊のリーダーは無線のチャンネルを切り替えて原子力空母エイブラハム・リンカーンへ帰還のためのヘリコプターを要請するが、ミッションの遂行は完全に果たせなかったことに加えて銃撃戦が展開された際に被弾してしまった隊員がおり負傷者が数名発生していること、更には撤収にあたって敵の追撃が迫って来ている可能性があるので援護の武装ヘリコプターの出動についても要請するのを忘れない。

無線連絡を終えると

「それじゃ、輸送ヘリコプターとのランデブーポイントまで移動を開始するぞぉ」

と言った後に、見た目にも負傷の度合が酷そうな部下の肩を担いで移動を再開する。

ほんの少し前まで、敵の施設近くで銃撃戦を展開した後なので海兵隊遠征隊のメンバー全員が身体中には若干のアドレナリンが残ってはいるようだが、その足取りは決して軽快さや力強さに欠けているような気がする。

海兵隊遠征隊のリーダーを先頭にした移動の最後尾にマイクと海兵隊遠征隊のうちクレイモア地雷を携行している数人に続いて、俺とスティーブが殿を務める恰好となる。

マイクの判断でクレイモア地雷のトラップを仕掛けている間、敵の追っ手から襲撃されないとも限らないので、SCAR‐Hアサルトライフル銃とSR‐25M110アサルトライフル銃を構えている俺とスティーブが護衛にならなければ、マイク達がトラップを仕掛けている間に敵襲を受けて全滅することになり、その様な事態となれば結果として撤退中の他の人間達も悲惨な最後を迎えることにも繋がる。

今回のミッションを立案している時点で、ミッションの遂行に失敗して爆弾ドローンの保管施設を壊滅できずに撤収する場合の撤退ルートも決めていたようで、一切の迷いもなく海岸線に近付いており、気が付けば足元が砂地となって多少なりとも歩き難くなってきている。

だが、そのルートの途中で左右から岩場が迫り出して道幅が2メートルくらいに狭くなっている箇所が距離にして10メートル程もあり、トラップを仕掛けるのに絶好のポイントになっている箇所に差し掛かる。

それを目にしたマイクが

「ここに、クレイモア地雷を仕掛けるからジョージとスティーブは先行して俺達の後方を監視しながら進んでくれ」

と俺とスティーブに指示を送り、海兵隊遠征隊のメンバーにはクレイモア地雷を仕掛けるポイントを示していく。

クレイモア地雷が仕掛けられている間は、俺とスティーブは進行方向へ背を向けてトラップを仕掛ける作業を行っている仲間の後方へSCAR‐Hアサルトライフル銃とSR‐25M110アサルトライフル銃のマズルを向けて警戒する。

トラップを仕掛ける作業に慣れている海兵隊遠征隊のメンバーは手際良くクレイモア地雷を仕掛けてくれるので、10メートルの距離に手持ちのクレイモア地雷を仕掛け終えた時点でも先行している味方との距離は左程に離れてはいなかった。

先行していた仲間と再び合流すると、比較平坦な砂浜に辿り着き負傷している部下の肩を担いでいる海兵隊遠征隊のリーダーは腕時計を見ながら、負傷していない部下に対して発煙筒を発火させて砂浜に刺すよう指示をする。

原子力空母エイブラハム・リンカーンを飛び立った輸送用ヘリコプターと武装ヘリコプターは、上空から発煙筒の光を頼りに接近してきて輸送用ヘリコプターは砂浜に着陸するはずである。

発煙筒が焚かれてから間もなくすると、微かではあるがヘリコプターのメインローターが回転する音が聞こえ、その音量は徐々に近付き大きくなってくる。

暗闇の上空から突如として黒っぽく見える輸送用ヘリコプターの機影が現れると、発煙筒が焚かれている近くに着陸するために高度を下げてくる。

そのため、周辺には嵐のような暴風が巻き起こり小さな砂粒が巻き上げられるので両目を開けていられなくなるが、敵の追っ手が迫ってきた時に備えて銃器を構えていなければならない俺とスティーブ、それにマイクとクレイモア地雷を仕掛けた海兵隊遠征隊のメンバーは、暗視用ではない戦闘用ゴーグルを装着して舞い上げられて飛び交っている砂粒から目を保護して、手に持った銃器を後方へ向けた状態で警戒する。

最初に砂浜に着陸した強襲作戦用のCH‐53シースタリオンに負傷者等の搭乗を完了させると、海兵隊遠征隊のリーダーが無線で

「負傷者等の輸送用ヘリコプターへ収容が完了した。周辺の警戒にあたっていた者も至急ヘリコプターへ搭乗せよ」

と命令してくるので、銃器を後方へ向けたまま後ずさりで着陸しているCH‐53シースタリオンへ近寄る。

その頃になって、クレイモア地雷を仕掛けた地点よりも若干手前の位置からAK47アサルトライフル銃と思われる小火器からの連続発砲が始まったのを点滅するマズル・フラッシュで認識するが、背後でCH‐53シースタリオンのメインローターがアイドリング状態でエンジンを稼働させているので大きく聞こえるエンジン音に搔き消されて敵の発砲音までは聞き取れない。

敵が発砲してきた弾丸のうち数発はCH‐53シースタリオンの機体に命中して装甲を僅かに凹まし、なかにはメインローターに命中した弾丸もあり小さな火花が散っている。

敵の小火器からの攻撃を受けたことを認識した護衛用の攻撃ヘリコプターのAH‐1Zヴァイパー1機が高度を落としくると、機首の下部に備えられているM197 20ミリメートル機関砲をマズル・フラッシュが点滅している箇所へ向けて掃射を開始すると、忽ち着弾した周囲が砂煙に巻かれて小火器の発砲が中断されるだけでなく20ミリメートル機関砲の数発がクレイモア地雷にも命中したようで数個のクレイモア地雷も起爆している。

その間に、負傷者を覗いた海兵隊遠征隊のメンバーと俺達はCH‐53シースタリオンへ搭乗を完了したので、後部のスライド式ハッチを開け放ったままで各CH‐53シースタリオンは離陸を開始して周囲に砂埃を盛大に巻き上げる。

護衛のAH‐1Zヴァイパーは、上昇するCH‐53シースタリオンと空中での衝突を避けるために高度を上げるが、突如として20ミリメートル機関砲を再び掃射し始めている。

よく見ると、掃射している箇所はクレイモア地雷を仕掛けた岩場の頂上付近の一角で集中的な掃射となり、着弾した辺りは砂煙に覆われて良く見えないが突如として砂煙の中に小さな炎が見えたかと思うと炎が9時方向へ動き出して対岸の岩山頂上付近に衝突して盛大な爆発が起こり、爆発によって出来た大小の岩がクレイモア地雷を仕掛けた通路へ落下していく。

恐らく、上昇を始めたヘリコプターを撃ち落とすつもりで携帯用のロケット砲を構えていた敵をサーモカメラで発見したのかもしれない。

ロケット砲の爆発によって飛び散った大小の岩の破片が落下したことで起爆していなかったクレイモア地雷が次々に起爆を始め、周辺の岩を砕くことで通路には多量の岩が堆積し、通路としての機能が失われてしまう。

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