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原子力空母エイブラハム・リンカーンの飛行甲板には、3機の強襲作戦用ヘリコプターCH‐53シースタリオンがメインローターをアイドリング回転させて飛行準備に入っている。
作戦行動を共に行う海兵隊遠征隊は、今回のミッションでは小隊規模な人員を投入するようで20人くらいのメンバーが戦闘服の上にチェストリグを着用し、全員が装着しているヘルメットの前頭部には跳ね上げ式の暗視ゴーグルが備えられて、咽頭マイクが喉に貼り付けられている。
加えて、各自の顔には黒っぽい顔料が塗布されて暗闇で目立たないようになっている。
そして、メインアームにはドイツと言ってもアメリカに現地法人を設立しているので、純粋にドイツと言い切れないかもしれないがヘッケラー・アンド・コッホ社製の海兵隊制式採用アサルトライフル銃で5.56×45ミリメートルNATO弾薬を使用するM27IARアサルトライフル銃と言っても、実態は16.5インチバレルのHK416アサルトライフル銃を若干変更した物だが、HK416アサルトライフル銃のバレルを肉厚にしたヘビーバレルへチェンジしたほか、ハンドガード先端下部にアメリカ軍規格の銃剣装着用金具を追加で装着させている。
そして光学照準器は、基本装備とされているアメリカのミシガン州に拠点を置く光学機器の設計・製造を行っているトリジコン社製のVCOGをアッパーレシーバー上部のレイルに装着し、ハンドガード先端上面に赤外線を点灯させるIR機能やレーザーエイミングデバイス機能も備わっている箱型のウエポンライトも装着されている。
特に、IR機能については実際に点灯させたとしても不可視光線なので肉眼では視認できないが、海兵隊遠征隊のメンバーが着用しているヘルメットに取り付けた暗視ゴーグルを使用した場合には、赤外線光が当てられた部分が明るく見えるようになるだけでなく、不可視光であるため夜間や暗がりの室内等で点灯させたとしても敵に肉眼で悟られる心配がないとうメリットがある。
ただし、今回の俺に支給されているボルトアクション・ライフル銃にはIR機能を有するウエポンライトを追加で取り付けられるようなレイルが備わっていないばかりか、収納ケースの中にも暗視用デバイス機能を持ったウエポンライトが入っていないので、海兵隊遠征隊がウエポンライトでIR機能を使ったとしても、残念ながらその機能を有効に活用することはできない。
CH‐53シースタリオン3機に、海兵隊遠征隊のメンバーと俺達3人が搭乗すると日没となって暗闇となった空へ向かって空母エイブラハム・リンカーンの飛行甲板から離陸してホルムズ海峡のイラン側に位置する海岸線を目指して飛行する。
飛行途中でイスラム武装組織や反米武装組織の連中から攻撃を受けた場合に備えて、後部搭乗ハッチであるスライドドアは開けたままとしているので機内に吹き込んでくる夜風には磯の香と若干の冷たさを感じる。
磯の香に関しては、乗船している原子力空母エイブラハム・リンカーンでも感じないわけではないが、やはり飛行中のヘリコプターでは大量の風が吹き込んでくるので、余計に強く感じるのかもしれない。
幸運にもイラン側の海岸線へCH‐53シースタリオンが辿り着くまでにイスラム武装組織等に察知させることがなかったせいか迎撃を受けずに済んだが、CH‐53シースタリオンは着陸中での攻撃を警戒して砂浜に着陸することなく波打ち際から高さ4メートルくらいでホバリングをしているので、機内から波打ち際へ飛び降りなければならいが、暗闇であるために4メートルの高さであっても波打ち際までの距離感が掴めず見えるのは真っ暗な空間だけなので、飛び降りるにしても一抹の恐怖を感じないと言ったら嘘になる。
だが、ミッションは既にスタートしているので4メートルの高さから飛び降りるのにビビッて尻込みしているような暇はなく、海兵隊遠征隊のメンバーは臆することなく次々と降下していくので、俺達にしても高度4メートルからの降下にビビッて等いられずに躊躇なく降下しなければならないわけで、その際に注意するのは手に持ったメインアームを間違っても杖のように使用しないことで、着地の際のショックを少しでも膝以外の箇所でも受け止めようとして手に持ったメインアームを杖のように使用すれば着地した時の衝撃でメインアームに損傷を与えることになり、最悪の場合ではメインアームが銃器として使用できなくなってしまう。
CH‐53シースタリオンから飛び降りて、波打ち際で膝のクッションを充分に働かせて着地の衝撃を和らげたつもりであったが、膝のクッションだけではショックを受け止めきれずに浅瀬の中で尻餅を搗き、腰から下が海水に浸かってしまった。
幸いにも着地の際にメインアームを地面に接触させるような真似はしなかったので、メインアームを損傷させることはなかっただけはなく、海水にも浸からないように注意していたので今回のミッション遂行中に海水が接したことによる錆が原因で不具合を生じることはないと思える。
下半身をびしょ濡れにしながら砂浜に上陸して周囲を見渡すと、CH‐53シースタリオンからの降下で浅瀬に尻餅を搗いたのは俺1人だけはないようで、マイクやスティーブは元より海兵隊遠征隊のメンバーも殆どが着地の際に尻餅を搗いたようで下半身が海水でびしょ濡れとなっている。
下半身を海水でびしょ濡れとした状態のままで、各自が砂浜に集合すると海兵隊遠征隊メンバーのリーダーらしき白人男性がマイクに近寄ると
「これから、アタックポイントへ行軍することになるが途中のポイントでデルタのメンバーに後方支援してもらう場所を指定するので、あんた達はそこで待機してもらい支援が必要な時には無線で連絡を入れる」
比較的早口で説明してくる。
それを聞いたマイクは
「了解した」
と小声で答え、後方にいる俺とスティーブに目線を送り合図する。
マイクへ説明した白人男性は、説明を終えてマイクから了解した旨を聞くと一度頷いてから踵を返して
「さぁ、グズグズしてないで出発するぞ、夜はそんなに長くないんだッ」
と海兵隊遠征隊メンバーに大声で叱咤して行軍を開始する。当然、俺達3人も海兵隊遠征隊メンバーの最後尾に続いて行軍を行う。
今回のミッションは、夜間の暗闇に乗じて遂行するのは出撃時間からも容易に推察できるだけでなく、実際の襲撃についても短時間で決めるつもりだろうから撤収についても暗闇を利用して輸送ヘリコプターとの合流ポイントへ移動して即時撤収なのだろう。
それを考えれば襲撃ポイントへの移動は始まったばかりと思えば、こんな海岸線でグズグズしている暇はないのは当然と言える。
行軍を開始して、少なくとも3キロメートル以上は歩いただろうか今夜は月も見えない新月のため、暗闇状態では周囲の状況も良く分からないが少し前まで耳に届いていた波の音が全く聞こえなくなってきていただけでなく、足元も先程までは砂地のために歩き難かったのが徐々に岩場のように地面が硬くなり比較的歩くのが楽にはなってきた。
そこから更に4キロメートルは歩いた所で装着していたイヤフォンに
「デルタの3人は、3時の方向にある岩の頂上で後方支援のために待機していてくれ」
とマイクの説明していた白人男性と思われる声で、俺達の待機場所を指示する無線が聞こえる。
それを受信した俺達3人は、そこから海兵隊遠征隊のメンバーから離れて3時方向にある大きそうな岩山の頂上を目指して登り始める。




