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デルタのスナイパー  作者: 二条路恭平


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6.5クリードモア弾薬は、1997年にアメリカのレミントン社が開発した260レミントン弾薬とほぼ同等の性能を有しており、ライフル銃用で一般的な7.62×51ミリメートル弾の308ウィンチェスター弾薬で使用されている薬莢をネックダウンし、264口径(6.72ミリメートル)の弾丸を撃ち出す点については同一と言えるが、薬莢であるケースの寸法は若干の違いがあり弾丸が取り付けられるネック部分の長さや厚みに違いがあるほか、ネック部分から斜めに広がるショルダー部分の角度に違いがあるなど僅かではあるが相違している。

6.5クリードモア弾薬のメリット面は、射出された弾道が比較的フラットに飛翔することに加えて横風による影響も受け難く、更に発砲による反動も割とマイルドになっている点がある。

特に、弾道がフラットであることは射程距離が500ヤード(457.2メートル)から1,000ヤード(914.4メートル)の中遠距離と言われるケースでは利点があり、100ヤード(91.44メートル)でゼロインを行った場合で、308ウィンチェスター弾薬と射程距離の違いによる弾丸のドロップ量を比較してみると、200ヤード(182.22メートル)では6.5クリードモア弾薬では3.4インチ(約86ミリメートル)のドロップ量に比して308ウィンチェスター弾薬では4.4インチ(約112ミリメートル)のドロップ量となる。

これが更に、1,000ヤードともなると6.5クリードモア弾薬では330.2インチ(約8,382ミリメートル)のドロップ量となるが、308ウィンチェスター弾薬では413.1インチ(約10,490ミリメートル)ものドロップ量となって、ドロップ量の差は82.9インチ(約2,108ミリメートル)と308ウィンチェスター弾薬が2メートル以上も弾丸が下方へドロップすることになる。

ただ弾丸の重量が6.5クリードモア弾薬は130グレイン(8.42グラム)の重量で、308ウィンチェスター弾薬は175グレイン(11.34グラム)の弾丸重量となり45グレイン(2.92グラム)の差があるので単純な比較とはならず多少割り引いておく考える必要はあるものの、実際に308ウィンチェスター弾薬が急激にドロップするのは間違いない。

しかし、この射程距離における弾丸のドロップ量はライフル銃等に装着するスコープのエレベーション・ダイヤルによってアジャストして対処することになることを考えれば、308ウィンチェスター弾薬の場合はエレベーション・ダイヤルを多く修正しなければならず、実際の修正操作はエレベーション・ダイヤルの回転数によって行うわけではなく修正量をダイヤルのクリック数で行うので、修正量が多ければクリック数をカウントしなければならない煩わしさがあり、その点では6.5クリードモア弾薬は修正量が少なくて済むためにクリック数のカウントを行う煩わしさが軽減されることになる。


ボックス・マガジンを装着しない状態のカスタム・ライフル銃のボルト・ハンドを操作してボルトを後退させて、エジェクション・ポートからチャンバーが見えるくらいまで後退させる。

そのチャンバーにボトルネック型のレーザーボアサイタ-を装填して、後退させていたボルトを前進させて元に戻すと、マズルの中央付近から赤色に輝くレーザー光線が出ているのが分かるので、木製テーブルに置いていたバックパックをレスト用サンドバック代わりにしてライフル銃のフォアエンド部を置いてライフル銃を動かぬように固定し、マズルから出ている赤色の光線を白色に塗装されたスチールターゲットの中央付近へ掃射する。

バックパックにフォアエンドを置いて固定しているライフル銃を動かさぬように注意しながらスコープの接眼レンズを覗いてみると、レティクルのセンターと白色のスチールターゲットにポイントされたレーザーの光点は一致していないことが分かるので、スコープ本体の中央部上方にあるエレベーション・ダイヤルと右側方に位置しているヴィンテージ・ダイヤルを修正してレティクルのセンターがスチールターゲット中央に見える赤色の光点とが重なるようにするが、それぞれのダイヤルを弄るときにもライフル銃が動かぬように細心の注意を払わなければならない。

こうしてスコープのレティクル・センターがレーザーボアサイタ-の光点と一致したことで簡易的ではあるが、スコープのゼロインが完了したことになる。ただし、実際に弾薬を発砲してみて狙点付近に着弾することを確認しなければライフル銃に取り付けてあるスコープの信頼性があると信じてしまうわけにはいかない。

カスタム・ライフル銃を委託していたバックパックから持ち上げて、右手でボルト・ハンドのノブを掴み上方へ持ち上げてから後方へ引きボルトを後退させて、チャンバーへ装填していたレーザーボアサイタ-を取り出す。

そこで、射撃レンジの指導教官が俺を大声で呼ぶので振り向くと指導教官の隣にはマイクとスティーブの2人が笑顔を見せて佇んでいるのを目にする。

「こいつらも貴様と同様に、支給された銃器のゼロインを行いに来たので一緒にレンジを使用しろ」

と指導教官が叫んでくる。

マイクとスティーブは、支給された銃器が収納されているケースを提げて近寄ってくると朝の挨拶もそこそこに

「やっぱり、ジョージも支給された銃器のゼロインに来ていたのか?それにしても早いなぁ」

笑顔のマイクが驚いて言ってくるので

「そりゃ、ゼロインも済ませないで遠征先へ行っても確実な照準もできなのでは役に立たないので、基地を出発する前の早朝にゼロインだけは済ませようと思って早めに自宅を出てきたんだ」

と俺も笑顔で答える。

「やっぱり、デルタのスナイパーという立場上からしてもゼロインも行わないで実践に向かうかわにはいかないですよねぇ」

とスティーブも笑顔を見せ、昨日の泣き顔が嘘のようになっていた。

「お前等2人は、真面目過ぎるんだよ」

と言ってマイクは笑っているが、そのマイクであっても支給された銃器のゼロインをしないままで遠征することに不安があったからこそ、こうして早朝の射撃レンジに姿を見せているのだろう。

「装備品を受け取っている時に、備品管理係の担当官にレーザーボアサイタ-の貸し出しを言ったらお前さんが先に1個持って射撃レンジへ向かったので、それを一緒に使用してくださいとつれなく言われたぞぉ」

とマイクが苦笑いの表情に変わって言ってくるので

「レーザーボアサイタ-なら、俺は丁度使い終わったから」

と言って右の掌にあるレーザーボアサイタ-をマイクに見せる。

俺の掌にあるレーザーボアサイタ-を掴んだマイクは

「それじゃ、スティーブが最初に使え」

と言ってスティーブにレーザーボアサイタ-を渡す。

それを見ていた俺は

「俺は、レーザーボアサイタ-でのゼロインは完了したので実弾を発砲するから煩ければイヤーマフラーをしておいてくれ」

と2人に声を掛ける。

マイクとスティーブは頷いて、俺の右側の射座へ移動して行く。

その2人を見送った俺は、空のボックスマガジンにバックパックから取り出した6.5クリードモア弾薬が50発入った弾箱から10発分を掴んで、ボックスマガジンへ装填していく。

バックスマガジンに6.5クリードモア弾薬を装填し終えたら、カスタム・ライフル銃のトリガーガード前方にあるマガジン挿入口へマガジンを差し込み、その後に右手でボルト・ハンドの取っ手を握り、一度上方へ引き上げてから後方へ引きボルトを後退させ、ボルトがエジェクション・ポートから見えなくなりマガジンに装填している6.5クリードモア弾薬が見えたところで、後退させていたボルト・ハンドを前方へ押し込んでマガジン最上部の6.5クリードモア弾薬をチャンバーへ送り込む。

ボルトが完全にチャンバーを塞ぎ、ボルト・ハンドが前方へ進めなくなったことでボルト・ハンドを下方へ引き下ろしてロックすると、マズルを上空へ向けたままにしてバレス下部のフォアエンド先端に装着しているバイポッドの両脚を起してから木製テーブルにマズル方向をスチールターゲット側へ向けて置く。

今朝は、幸いにも射撃レンジは無風状態と言えるくらいにコンディションが良いので、スチールターゲットを狙うにしても風向きや風速等を意識しなくても良いので時間が限られている状況下では助かる。

上半身を木製テーブルへ預けるように倒してカスタム・ライフル銃を構えるが、カスタム・ライフル銃を安定させるためにバットストックが左脇により密着するようにして、チークパットに載せる左頬も意識して密着させてからスコープを覗き、レティクル・センターをスチールターゲットの中央に向けてからトリガーを引き始める。

組み込まれているトリガーは2ステージのようで、最初の引き始めは軽くトリガーを引けるのだが、途中で少し抵抗を感じるようになって人差し指に引き始めの頃よりも若干力を加えるとトリガーと連結しているシアが切れるような感覚が伝わってきて、改めてレティクル・センターがスチールターゲットの中央へ合っているのを意識してから、トリガーを絞り落とす。

弾薬自体の寸法が7.62×51ミリメートル弾薬よりも若干大きいためのか、発砲音が「ドォーン」と大きく射撃レンジ内に響き渡った直後に「ガァーン」というスチールターゲットに着弾したことが分かる金属音が聞こえてくる。

発砲音自体の大きさに比べると反動は思いのほか強くは感じることなく、お陰でライフル銃自体が暴れるようにはならないのでスコープの接眼レンズから見える画像も大きく逸れることがない。

トリガーを引いていた左手の人差し指をトリガーから外して、その人差し指の先をスチールターゲット方向を指し示すように伸ばしてから、バットストックが左脇に密着するように添えていた右手を離して、ボルト・ハンドを握り上方へ持ち上げてから後方へ引くと、つい先程に発砲し終えた空の薬莢がエジェクション・ポートから弾き出されて、木製テーブルの上に落下すると軽い金属音を奏でて硝煙の匂いが漂い出す。

一定のスピードでボルト・ハンドを引いた際と同様のスピードで、ボルト・ハンドを前方へ押し込むとボルト先端のボルト・フェイスにマガジンに装填していた次弾のヘッド部分に押し当ってチャンバーへ向けて押し出されていくのを感じながらボルトを前進させる。

ボルトが突き当たった感触をボルト・ハンド越しに感じたところで、ボルト・ハンドを下方へ倒してボルト完全に固定して次弾の発砲に備えるために、ボルト・ハンドから離した右手を再び左脇のバットストックを固定させるために移動する。

スコープの接眼レンズに映し出される画像には1発目の着弾跡が見えるのだが、その着弾跡には極力意識することなく初弾と同じ箇所へレティクル・センターを合わせてトリガーを引き絞ると「ドォーン」という大きな発砲音が射撃レンジ内に響き渡り、直後に「ガァーン」というスチールターゲットから着弾した金属音が再び聞こえるのだが、恐らく射撃レンジで発砲しているのは俺1人であるためと射撃レンジの安全性を確保するために射撃レンジエリアがすり鉢状の造りになっているため、必要以上に発砲音が強く感じられるからかもしれない。

2発目を発砲した後も、1発目と同様に着弾跡を気にすることなくボルトを操作して2発目の空薬莢を排出して3発目をチャンバーへ送り込んで発砲の体勢に移る。

3発目も初弾と次弾の発砲と同様に、レティクル・センターをスチールターゲットの中央へ合わせてからトリガーから離していた左手の人差し指をトリガーへ移して引き始める。

2回の発砲音と同様の「ドォーン」という音とスチールターゲットに着弾した「ガァーン」という音が響き渡る。

左脇のバットストックを支えていた右手を離して、ボルト・ハンドのノブを握り上方へ引き上げてから後方へ引き、空薬莢を排出するとボルトを後退させたままの状態にして木製テーブルに倒していた上半身を起こし

「これから、着弾状態を確認するのでスチールターゲットへ向かう」

と隣の射座にいるマイクとスティーブに声を掛けてからスチールターゲットへ向かう。

隣の射座でレーザーボアサイタ-でのスコープ調整中である2人が、実弾射撃に移行しているわけではないが、安全性を確保する意味でもターゲット方向へ移動する場合には事前に声を掛けて注意を促しておく必要がある。

確かに、2人がマズルを向けている方向ではないのだがスチールターゲットへ射撃をしている場合、スチールターゲットに着弾した弾丸は跳ね返って跳弾となりスチールターゲットへ向かっている俺へ飛んでくる可能性があるので、声を掛けずにスチールターゲットへ移動することは危険な状態を招いてしまう。

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