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デルタのスナイパー  作者: 二条路恭平


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フォートブラック基地に帰還してC‐130Jを降りた俺は、何よりも最初に上官のオフィスへ向かう。

上官が、在室しているかという点は気掛かりであるにしても、上官に対して帰還した旨だけでも報告する必要があるのと同時に、今回の帰国に関しての理由について、是非とも上官の口から説明してもらいたい。

上官のオフィスが入っている建物に入り、受付の担当官に上官の在室を確認すると上官は在室中で俺の到着を待っているという、それを聞いた俺は急いでと言っても建物内の廊下は緊急事態以外は走ることを許されていないので、極力早足で上官のオフィスへ向かって上官のオフィスのドアをノックする。

オフィスの中から上官の声で「入って良し」という返答があったので、「失礼します」と一言断ってから俺はオフィスのドアを開けて入室しようと部屋の中を覗くと、オフィス内の来客用ソファーには東欧へ派遣されているはずのマイクとスティーブが腰掛けて笑顔を見せながら俺に視線を向けてくる。

面食らった俺は、上官のオフィスに入り後ろ手でドアを閉めると上官に敬礼をしながら「ジョウジ・カツラギ准尉、只今帰還しました」と帰還の報告をする。

それに対して上官は

「ご苦労、それでは君も突っ立っていないでソファーに掛けたまえ、立ったままじゃ話もできない」

と言ってマイクとスティーブが座っているソファーを指差して腰掛けることを勧めてくれる。

「失礼します」

と俺は上官に言ってマイクの隣に腰を降ろす。

隣のマイクは満面の笑顔になって

「ジョージ、元気そうだなぁ」

と声を掛けてくれるが、未だに状況が飲み込めていない俺は

「2人にも帰国命令があったのか?」

と問い掛ける。

それを聞いたマイクとスティーブは2人揃って

「えっ」

と驚いたような表情を浮かべて2人とも俺の顔を見つめてくる。その2人の表情を見せられて俺は益々混乱してきているところに

「カツラギ准尉は、今回の帰国理由についてウデイド基地の司令官から説明を受けなかったのか?」

と上官が聞いてくるので

「ええ、司令官は本国へ帰還させよとの指令以外は受けていないと言っていましたが」

と俺が答えると上官は途端に苦笑いの表情を浮かべて小鬢を搔きながら

「まったく、相変わらずウデイド基地の司令官は人が悪い」

上官は暫く苦笑いを浮かべていたが、急に真面目な表情に戻って

「それでは最初から話をするが、諸君等も分かっている通り前回のミッションでは目的の遂行に成功はしたものの、その撤収中にセルジオ軍曹が敵の威嚇射撃した流れ弾に被弾して負傷してしまったが、幸いにも一命を取り留めてハワイの陸軍病院で療養してもらったところ、左腕に後遺症が残ってしまったために部隊での活動が困難と軍曹自身の判断で名誉負傷除隊することになった。そのセルジオ軍曹の除隊式を執り行うのにあたり本人からの要望で、諸君等4人の出席を強く希望されたために今回の一時帰国となった次第だ」

と上官から説明を受けてたことで漸く帰国の理由に納得することができた。

頷きながら納得の表情を見せた俺に対して

「カツラギ准尉は、帰国の理由について説明を受けていなかったので改めて確認させてもらうが、セルジオ軍曹の除隊式に参列するかね?」

と上官から質問されるが、前回のミッション以外にも過去に何度かコンビを組んだ戦友からの希望であれば、それを無碍に断らなければならない理由等は全くないので、当然に上官へは出席する旨を返答する。

「それでは、3人とも全員が出席ということで除隊式は進める。諸君等は明日の9時30分までには、当基地の第1ブリーフィング・ルームへ赴くこと、更に服装については当然だが陸軍の制式制服を着用すること。除隊式は午前10時から始めるので遅刻だけはしないように、以上だが何か質問はあるか?」

と上官が俺達に尋ねてくるが、集合時間と集合場所さえ分かれば充分で服装に至っては戦友の除隊式へ出席するのであれば制服着用であることは上官から言われるまでもない。

俺達が頷いているのを確認した上官は

「3人とも質問はないようだな、それでは下がってよろしい」

と言ってソファーを立ち上がる。

俺達も全員、ソファーから立ち上がり上官へ敬礼をして

「それでは、失礼します」

と告げて上官のオフィスを退出して廊下へ出る。

廊下へ出るとマイクが

「ジョージ、お前が不思議そうな顔をして俺とスティーブの顔を見ながら本国への帰還命令があったのかと聞かれた時には流石に驚いたぜぇ、俺とスティーブは現地の司令官からセルジオの除隊式へ参加してもらうので本国へ帰還せよと説明を受けていたから」

と少しニヤニヤしたような表情で聞いてくる。

俺は苦笑いをしながら

「俺だって、セルジオの除隊式への出席ということなら2人に変なことを聞いたりしなが、ウデイド基地の司令官は帰国の理由について一切聞いていないとしか言わないから、本当に帰国理由が分からずに帰ってきて上官に帰国命令の理由を訪ねようとオフィスに入ったら、2人が居たのが見えて本当に驚いたよ」

とマイクに答えた途端にマイクは吹き出して

「ジョージは、真面目過ぎるから司令官に騙されるんだよ」

と言って大笑いをしている。

長年の付き合いがあるとは言え、こうして目の前で大笑いされるのは正直なところ気分が良くないが、真相が戦友の除隊式への出席であるのをウデイド基地の司令官に悪戯されたことが分かれば一安心というところで、ウデイド基地の司令官に腹を立ててみても今後顔を逢わせるかさえ分からない相手を恨んでみても仕方がない。

しかし、俺はフォートブラック基地を出るまでの間、散々マイクから揶揄われることにはなったが、マイクとスティーブの2人と別れた後は真っ直ぐに自宅へ戻って久しぶりに着用する制服のチェックを行う。

特に、ワイシャツ等は久しく着用していないので一度は袖を通してみないことには不安がある。

前回、ワイシャツを着用してから体形が変わっているとは思わないが、明日になって着てみたら小さ過ぎて着れない事態にでもなれば笑い事では済まなくなる。

久しぶりに戻った自宅のクローゼットから白いワイシャツを取り出して、着ている上着やTシャツを脱いでワイシャツに袖を通してみると、問題なく着ることはできたのだがネクタイを締める関係で一番上のボタンを閉めると着慣れていないせいもあるのだろうが、首元が締め付けられているようで何とも着心地が良くない。

一瞬、新しいワイシャツを購入しようか迷ったが、首回りが着慣れないせいでキツく感じている以外に特段の問題がないのに加えて袖丈等には一切の問題もないので購入することまでは思い留まった。

そのワイシャツの上にジャケットを羽織ってみるが、こちらも間違いなく着用ができるだけでなくジャケットのボタンを全て留めても窮屈には感じることはない。

更に、ジャケットの表面を隈なく見てみても汚れやシミも見当たらないので明日の除隊式に着ていっても問題なさそうである。

最後に、履いているジーンズを脱いでからクローゼットに掛けているハンガーのスラックスを取り出して履いてみると、こちらもウエスト周りがきつくて履けそうもないといった事態にはなっていない。

取り合えず明日の除隊式には、制服を着用していくことが確認できたので脱いだ制服が皺にならないようハンガーにかけ直してクローゼットへ戻したところにマイクから電話連絡が入り、折角の再会なのでマイクの自宅で夕食を一緒に摂ろうと誘われる。

急な帰国となったので、これといって用事もなく食事の買い出しも億劫にかんじたので、素直にマイクの誘いに甘えて夕食を摂らせてもらうことにした。

ただし、マイクの自宅へ赴く前に明日の除隊式に履いていく革靴を綺麗に磨いておかなければならない。

戦友であるセルジオの希望で、彼の除隊式に参加する以上、身だしなみくらいはキチンとして臨みたい。

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