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俺が本国へ戻るために用意された輸送機C‐130Jスーパーハーキュリーズは、格納庫から出されて主翼にある4基のプロペラエンジンは既にアイドリングを始めている。
今日は、雲1つない晴天ということもあり上空の太陽からは眩し過ぎるくらいの光が降り注いでいる関係で、サングラスを掛けていないと目を開けていられない。
機体後部の貨物搬入用ゲートが開かれているので、そのゲートの上を歩いてC‐130Jの貨物室に何時も如く搭乗し、貨物室内の左右の壁に設置されている簡易式の座席へ向かい、持っているバックパックを床に降ろして隣の座面を倒して腰掛けてシートベルトを閉めようとしていると、貨物室内に油圧の作動音が響き渡り開かれていたゲートが閉じ始め、外の光が遮られてきた貨物室は徐々に薄暗くなってくる。
すっかり後部ゲートが完全に閉じると、あれほど眩しかった日光が嘘のように無くなり貨物室内ならサングラスを掛けていなくとも済むようになる。
サングラスを外して上着のポケットにサングラスのツルを差している時に、一瞬だがC‐130Jの機体が僅かに揺れて駐機エリアからメイン滑走路へ向けて移動を開始する。
毎度のことだが、輸送機や輸送ヘリコプターに搭乗して機体が動き出してしまえば俺がやれる事は何もなく、再び地上へ戻って来るまでの間は大人しく座っている以外は何もできない。
そのため座席に座ったまま目を閉じていると、いつの間にか眠りに落ちてしまっていた。
昨夜は、色々と考え事があり過ぎて眠れなかったせいで寝不足のためか直ぐに熟睡してしまったようで、そのため離陸のためにメイン滑走路を機体が猛ダッシュする際に感じられるGさえ気付くことなくC‐130Jは離陸して上空に舞い上がっていたことになる。
決して夢を見ていたわけではないというか、夢を見た記憶が残っていない状態ながら、何となく身体が冷えてきたような感じがして目を覚ますと、貨物室内には主翼の4基のエンジンが異常なく回転している音が鳴り響いており、多少は意識がハッキリしてきた体感では水平飛行をしているように感じられ、そうなるとウデイド空軍基地の滑走路から離陸して必要とする飛行高度までの上昇を完了していることになり、思っていた以上に長時間を眠っていたわけでもないことになる。
ただし、ウデイド空軍基地からアメリカ本土までのフライトとなれば結構な長距離飛行となるので、航空機の操縦に関して素人の俺が断言できるものではないが、持ち合わせている知識を総動員しても相当な高度にまで上昇して、その後は滑空するようなフライトをしなければ燃費を稼ぐことはできないと聞いた記憶があり、そうなれば相当な高さにまで上昇したことで機体周囲の温度が低いため機内が冷やされて寒く感じたのかもしれない。
C‐130Jが水平飛行へ移行してから、どの程度の時間が経過したのか分からないが機内の空気が未だ冷えた状態であることを考えれば、アメリカ本土に到達している可能性が低いだろうと判断してバックパックからウォータープルーフ・ジャケットを取り出し毛布代わりにすると再び仮眠する。
再度の仮眠となり、俺自身の感覚では余り時間が経過していないと思って目を閉じていると、少し離れた場所から知らない男の声で目を覚ますようにと、声を掛けられているように感じて目を開いて顔を上げてみる。
するとコックピット・ルームから
「漸く目を覚ましてくれたか、フライト中は殆ど寝ていたようなので極力声を掛けるのを控えていたが、あと20分くらいすればフォートブラック基地の上空に到達するので、着陸前にシートベルトの確認をして欲しくて声を掛けたんだ」
とコ・パイロットから言われる。
俺としては、再び仮眠してから数分くらいしか時間が経過していないと思っていたのだが、実際には数時間も寝ていたことに驚きを覚えていると
「おい、こちらの話を聞いているならシートベルトを確認したのか教えてくれ」
少し苛立ったコ・パイロットの声を聞いて、慌ててシートベルトの状態をチェックした俺は
「すまない、間違いなくシートベルトを装着している」
と大声で答える。
俺の不注意であったとしても、着陸時に俺が怪我でもしようものならシートベルトの着用を確認指示を出さなかったパイロット側が責められるので、せっかく俺にシートベルト装着の注意をしているのに、シートベルトの着用の有無を答えてこなければ苛立ちを覚えるのは当然で、このケースでは明らかに俺に非があるので2人のパイロットには申し訳なく思う。
フォートブラック基地の上空に近付き、C‐130Jの飛行高度は徐々に低くなってくるのと同時に、気流の状態が悪いのか機体が小刻みにガタガタと機体全体から音を発しながら揺れている。
再びコックピット・ルームからコ・パイロットが大声で
「気流の状態が良くないので、不規則に機体が揺れるからシートベルトだけはしっかりと締めておけよ」
と注意を受ける。
「了解した」
と今度は直ぐに大声で注意された内容を理解したことを伝える。
小刻みに揺れる機体をパイロットとコ・パイロットが制御してC‐130Jは、鈍く「ドンッ」という音と共に下から突き上げてくるような感覚を伴って滑走路にタイヤが接地して直ぐに「ブォー」という音を発しながらエンジンブレーキが掛けられ、その反動で貨物室内の俺は前方方向へ投げ出されそうになるが、コ・パイロットからの注意を受けてシートベルトを着用しているので、ナイロン製のベルトが身体に浅く食い込んだくらいで身体を座席に止めて置いてくれる。
メイン滑走路に着陸してスピードを落としているCー130Jが自動車なら徐行しているようなスピードとなったところで、機首を右方向へ向けてメインの滑走路から誘導路へ移動を始める。
誘導路の先には、フォートブラック基地の整備隊員が両腕を使ってパイロットに合図を送り、停止場所へと誘導して機体が指定場所に到着すると再び合図を送ってエンジンを停止するように指示されるので、パイロットは4基のエンジンをストップさせる操作を行うがプロペラだけは惰性によって速度を落としながらも回転を続けている。
C‐130Jのエンジンを停止させる操作を終えるとコ・パイロットが
「これから、後部の物資搬入用ゲートを開けるからゲートが地面に接してから降りるように」
と俺に注意してからゲートの開閉スイッチを操作すると油圧の作動音が響いて、後部ハッチが下がり始める。
俺は、シートベルトは外して隣の席の床に置いていたバックパックを背負い、油圧によって降下している後部ゲートの状態を目視して、コ・パイロットからの指示の通りに後部ゲートが地面に接したところで座席を立つとゆっくりと徒歩で後部ゲートから機外へ降りる。




