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ウデイド空軍基地に到着するまでの道中では、2度ほどイスラム武装組織とは全く無関係の不良グループによる強盗のような襲撃を受けたが、俺達が乗っているBMWのiX2が高級車の部類に入るために見た目だけで金品を奪い取ろうと絡んで来たのだろうが、絡んだ相手が悪く数々の実践で殺し合いを行ってきた俺達に生半可な脅し等が通用するわけもなく、更に俺達全員が拳銃を所持していたとは思っていなかったのか俺達がM18拳銃を構えた際には一瞬怯んだのだから、それで終わらせれば良いものを俺達が拳銃の扱いに不慣れな金持ちだと甘く見て、実際に発砲できるわけがないとでも思い直したのか再度脅してきたから、リチャードが凄んでいる不良達の足元へ向けてトリプル・タップを放ってやると、連中は完全に戦意を喪失したらしく2度とも両足を震わせ蒼褪めた表情を浮かべながらも強がりな捨て台詞を吐いて早々に逃げて行った。
そんなハプニングを除けば、ウデイド空軍基地のゲートを潜るまでの行程はイスラム武装組織からの追撃を受けるようなシーンもなく比較的順調であったので、お陰で俺の聴力は徐々に回復してジョンやリチャードの声も充分に聞こえるようになり、ウデイド空軍基地の軍医に診てもらわなくとも良いくらいに状態がもどってきた。
基地に到着すると、直ぐに司令官室へ出頭して遂行したミッションの内容を報告すると、遂行内容に特段の問題があるわけでもないので司令官から「ご苦労」と一言だけを言われて報告は終了する。
最も、今までのミッションにおいても現地の司令官から伝えられる言葉は決まったように「ご苦労」の一言くらいのものなので、それ以上の言葉を期待しているわけでもなく、上官からミッションの命令が下されれば確実にミッションを遂行して生きて帰還することが全てである以上、「ご苦労」以上の言葉なぞ最初から当てにしていない。
司令官室を退出した後は、リチャードと共に支給された装備品を返却するために備品管理係のカウンターへ向かう。
装備品返却のために担当官から渡される書類に必要事項を記載するが、今回は今までにはなかった新たな書類が渡されおり、軍のサービスピストルとして制式採用されたM18拳銃についての実践使用時におけるレポートがあったが、サービスピストル選定のため各種評価試験を実施したほかに一部の部隊に配備して過酷な使用環境での試用を経ての制式採用なのだから、特段問題となるような不具合もなく見た目以上に集弾性も良いので充分実践での使用に耐え得るものであると思うが、個人的には昨今の拳銃におけるトレンドなのかフレームが樹脂製となって軽量化されたことで、携行するのにストレスを感じることは少ないものの逆に銃器本体が軽くなったことで発砲した際の反動が強く感じられるようになってしまった気がする。
特に、9×19ミリメートル弾薬の威力は357マグナム弾薬の80パーセントに相当するくらいなので、反動も拳銃のグリップを握っている手の親指と人差し指の間に結構強いビシッとする嫌らしい衝撃があるが、それが一段と強調された感じがする。
銃器を発砲した際に発生する反動とマズルが上方へ動いてしまうマズル・ライズは、少なくとも現時点での技術では完全に抑制させることは困難なはずで、それでも何とか抑制しようとしてマズル先端にコンペセイターという発射ガスを上方へ導くようなデバイスが開発され、そのコンペセイターを装着したモデルも存在してはいるが、それでも反動とマズル・ライズを完全にコントロールするまでは至っていない。
だが、反動とマズル・ライズを抑制する方法としては銃器本体の重量を重くするというのもあり、過去にはPPCという射撃競技で使用する拳銃をカスタムして拳銃本体の重量を日常での使用が困難と思える程に増加させて反動やマズル・ライズの抑制をしており、必ずしも銃器本体の重量を軽量化するのが良いとも限らず、逆に軽量化することによって反動やマズル・ライズが一層クローズアップされたような形になってしまったような気がしてならない。
しかし、その事はレポートに記載するのを遠慮しておくことにした。理由としては、今の技術をもってしても完全な銃器を開発することはできないからで、事実として俺が担当しているスナイパーとしての視点でも、射程距離が500メートル程度であればセミオートマチックのライフル銃であっても充分に目的を果たせるだけの性能を有するようになったが、射程距離が一挙に500メートルを超える超距離射撃となって一定以上の精度を求めるのであればボルトアクション・ライフル銃をセレクトしないわけにはいかない。
それと同じように、拳銃に関しても全ての使用環境に適合するモデルを開発することはできないばかりか、ある利便性を目的にバランスの崩れた開発を行うことで思いもしないデメリットが発生することになり、結果として全てを満足させる銃器が開発できないので多くのモデルが存在している。
今回のように現地での弾薬補給という点を考慮して、制式採用されているM17拳銃やM18拳銃を使用せよとされない限りは、個人的にデルタフォースから支給されているモデル1911拳銃を使用したいというのが偽らざる本心である。
だが、そんなことをマイクにでも話したら笑って極端な変化を嫌う人間を揶揄する言葉となっているダイナソーだと言われるかもしれない。
支給された装備品と記載を終えた書類を担当官へ引き渡し、俺とリチャードは指定された部屋へと向かいバックパック等の手荷物を部屋の床に降ろしてベッドの上でリラックスしていると、再び基地司令官からの呼び出しを受けて司令官室へ向かう。
ウデイド空軍基地へ生還を果たして、休む間もなく早々に新たなミッションが告げられるものと覚悟して、司令官室のドアをノックしてから入室し「ジョウジ・カツラギ准尉、只今参りました」と言って司令官の前で敬礼していると司令官から呼び出しを受けたのは俺1人のようでリチャードの姿はない。
「そちらのソファーに掛けたまえ」
司令官が右手で来客用のソファーを指して腰掛けるように促してくる。
それを聞いた俺は
「失礼します」
と言って3人掛けのソファーに腰を降ろすと、司令官はデスクから立ち上がって俺の対面にある1人掛けようのソファーに腰を降ろして
「准尉には、明日の午前10時に当基地の輸送機で本国に戻ってもらうので、そのつもりで準備をしておくように」
と告げられる。
てっきり俺は、新たなミッションを伝えられるものだと思っていたので司令官から伝えられた内容は想定外と言う以外にない。
多少、不思議そうな表情をしていたかもしれない俺に対して司令官は
「私も詳細までは分からないが、とにかく准尉を本国へ帰還させろとの指令以外は入っていない」
穏やかな表情で言ってくる。
目の前の司令官が、そう言っている以上は俺の方から何を質問してもたところで疑問を解消するような答えが期待できるわけもなく、司令官も詳細は本国へ戻ってから尋ねるようにと遠回しで言っているようなもので、俺の立場からすれば理解できていなくとも「承知しました」という以外に言うべき言葉がない。
釈然としないながらも司令官室を退出して、自分の部屋に戻りベッドの上に仰向けとなって考えみるが、何せ判断材料が少な過ぎて答えが出るどころか次々と疑問が湧いてくるだけである。
結局、悶々と考えているうちに夕食を摂るのも忘れて眠りに落ちてしまい、気が付けば翌日の朝を迎えていた。
荷物自体は、バックパックから取り出した物は1つもないので改めて荷物を纏める必要はなかったが、流石に昨晩は夕食を摂らずに寝てしまったので腹が空いて仕方がない。
ベッドから飛び起きて、基地の食堂へ向かい充分な食事を行い胃袋を満足させる。
その後、一度部屋に戻ってからトイレへ行って排便を済ませて歯磨きと洗顔を行うと9時を過ぎていたので、自分のバックパックを背負って輸送機の格納庫へ徒歩で向かう。




