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ミニャのオモチャ箱 ~ネコミミ少女交流記~  作者: 生咲日月
第2章

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2-12 鬼芋

本日もよろしくお願いします。


 鬼芋がミニャのお家に運び込まれたのは、ミニャが糸車をくるくるしている糸作り2日目のことだった。


『覇王鈴木:マジで大変だった……』


 運搬用ツル籠を置いた覇王鈴木率いる運搬係は、ヘロヘロとその場に座った。

 賢者たちにとって大きな物を一度に運ぶのは難しいので、森塩草の窪地と拠点の中間に秘密工房が設けられて運搬の中継基地にされていた。それでも500mあるので、人に換算すれば3kmの道のりを運搬したことになる。


『トマトン:ご苦労様ー!』


 そんな労りの言葉もそこそこに、手ぐすねを引いて待っていたお料理委員会のメンバーはさっそく鬼芋に群がった。


『トマトン:硬くておっきい!』


『グラタン:ほんとにカッチカチだね!』


 キャッキャキャッキャ!

 もはや運搬係の存在は忘れかけている様子。

 運搬係はトボトボと外に出て、ミニャの紡績工場のお手伝いに向かった。


 そんな運搬係は鬼芋を10個と、森塩が入ったボールを2個持ってきてくれた。


『トマトン:それじゃひとまず、森塩の精製から始めようか』


『グラタン:オッケー』


 森塩ボールは石で作られており、開け口など存在しない。

 中身を取り出すには、石を割るか『石材変形』で石を変形させるしかない。

 トマトンは生産属性なので、問題なく開くことができた。


 森塩は森の獣たちも舐めに来ているため、衛生面に疑いがある。なので、一度水で溶解させて、水分を蒸発する工程を取ることにした。

 それによってなんらかの成分が抜けてしまう気がしないでもないが、獣の活動している場所にある塩をミニャに食べさせるリスクを考えれば、それもやむを得ない。

 ちなみに、鑑定では今のところ森塩で塩分過多以外の危険を示唆されたことはなかった。


 枝を裂いて編まれたザルで塩水を漉し、その塩水を石で作った鍋で煮る。

 かなり手間がかかる作業だが、それもお料理委員会の務めだ。


 鍋を火にかけると、トマトンたちは鬼芋に取り掛かった。


『トマトン:まずはこの硬い殻をどうするかだね。いろいろ試してみよう』


『グラタン:じゃあ私は焼き芋にしてみるね』


 グラタンは水を含んだ葉っぱで鬼芋を包み、暖炉の灰の部分に置いた。

 一方のトマトンは鍋を2つ用意して、片方は水だけ、片方は灰を入れて鬼芋を煮てみることに。


 待っている間に、鬼芋の殻を魔法的なアプローチで破ろうと試みた。

 ちなみに2人は生産属性である。


『グラタン:石材変形は無理だね。全然反応しないわ』


『トマトン:石じゃないんだろうね。あっ、木材整形は反応がある!』


 木材整形は木材を曲げたり真っ直ぐにできる魔法だ。木材に穴を開けたり、途中から突起を作るといった粘土的な扱いはできない。

 そんな木材整形を使うと、鬼芋は少しだけ形を変えられた。この外殻も植物ということなのだろう。しかし、それだけだった。


『トマトン:うーん、これ以上は無理だね』


『グラタン:じゃあ、殻に負担をかける形に整形して、そこから物理で殴るのはどう?』


『トマトン:ひゅー、蛮族ぅ!』


 2人はバナナ型に整形した鬼芋に向かって、ガンガンと石を叩きつけた。


『トマトン:バカなの!?』


『グラタン:めっちゃ硬いわねー』


『トマトン:とりあえず、火にかけたので様子見かな?』


 2人は物理で殻をむくのは早々に諦め、鍋や火に入れた鬼芋を待つことにした。

 ぐつぐつと煮える石鍋の中で鬼芋が沈んでいるが、しばらくは放置。


 森塩の精製もまだ時間がかかりそうなので、日課となっている草木の研究を進める。


 鬼芋が到着するまでトマトンが手掛けていたのは『ロッポ草』という草だった。

 お料理委員会は食材の実験項目を作っているので、それに結果を記載していく。


■賢者メモ 食材の研究■

『ロッポ草』

・洗って生で食べる:

 酸っぱく、繊維質。えぐみが強い。

・煮て食べる:

 アクがかなり出てくる。アク抜きが終わる頃にはグズグズになっている。

・焼いて食べる:

 酸っぱさは減るが、繊維が硬くなる。

・乾燥させて粉末にしてみる:

 ほのかに苦みが残る。繊維も残りやすく、加工が大変。乾燥させるとわずかに甘い匂いがする。

・灰を入れた水で煮る:

 アクが抜けて、無味となる。食感は良さそうか。

・灰を入れた水で一晩寝かせる:

 アクが抜けて、無味となる。生で食べるよりも食べやすい。


・加工による毒の発生:見られない。

・備考:皮は繊維が多いので剥いた方が良さそう。灰を入れた水で一晩寝かせてアク抜きを行い、さっと茹でるくらいで食感も残りそう。

■・■・■


 と、かなり手探りである。

 地球の古代人が食べられる物を探したように、賢者たちもそれを一から始めているわけだ。

 しかし、古代人とは違って、賢者たちには先人の知恵をパソコンで調べられる。そうした調理法を試してみれば、割と美味しく食べられる食材は多かった。


 ちなみに、賢者たちは歯がないので、石で作った疑似的な歯の模型で噛んだ際の研究を行なっていた。


『トマトン:おっと、もうそろそろ森塩が良い感じかな』


 何度か鍋を混ぜながら研究しているトマトンである。

 再度確認すると、お湯を沸騰させる石鍋の壁面に白い森塩がくっついていた。


 そうして出来上がった森塩は、真っ白で美しいものだった。

 かなり雑に精製したのに鍋の底で焦げないところを見ると、森塩は草から生成されるのに無機物で間違いないようだった。


 トマトンが口元に運ぶと、光が生じると共に口内に上品な塩辛さが広がった。

 先ほどまで研究していたロッポ草に森塩をつけて食べてみる。


『トマトン:おー、なかなかイケる!』


『グラタン:なに1人で食べてるのよ。私にもちょうだーい!』


 2人でロッポ草を食べて、ふむふむと頷く。


『グラタン:大人向きの味かしら。ミニャちゃんには15年くらい早そう』


『トマトン:うん、これは熱燗のツマミだね』


 好きな賢者もいそうなので、メモメモ。


 続いて2人は鬼芋の様子を見てみることに。


『トマトン:あっ、表面が少し柔らかくなった!』


『グラタン:こっちはむしろ硬くなったわ』


 煮ている方は皮が柔らかくなり、焼いた方はむしろ硬くなってしまった。


『トマトン:ということは煮るのが正解なのかな?』


『グラタン:灰で煮込んだ方は?』


『トマトン:水から煮たのと変わらないね』


『グラタン:ふむふむ。じゃあもう少しやってみようか』


 それから1時間ほど経ち、意外な結果となった。


『トマトン:焼いた方が正解だったのか……』


 長時間焼くと、鬼芋の殻に亀裂が走ったのだ。

 その状態になった鬼芋を石で叩くと殻は簡単に砕け、中から金色の芋の身が姿を現した。

 一方、煮ている方は1時間前から硬さが変わらず、殻の奥までは柔らかくならなかった。


 2人はさっそく料理鑑定をかけてみた。


■賢者メモ 料理鑑定■

『焼き鬼芋 半生』

・ミニャにとって、毒性なし、薬効あり、食用可。

・非常に硬い殻を持つ鬼芋のため、栄養価抜群。

■・■・■


『トマトン:いい感じだけど、半生かー』


『グラタン:1時間以上焼いたのにダメなのね』


『トマトン:たぶん、火での処理はあくまでも皮がむける状態にするだけで、中に熱を回すにはまた手を加える必要があるんだろうね』


『グラタン:じゃあ、これは皮を全部剥いて蒸そうか』


『トマトン:うん、それが良いと思う』


『グラタン:今16時だから、そろそろお風呂ね。お風呂に入り始めたら料理を始めましょう』


『トマトン:オッケー』


 こんなふうにミニャの食生活は支えられていた。


「モモグ!」


 ふいに、モグが2人の下へやってきた。

 自分と同じくらいの大きさの獣なわけで、ペットの犬がやってきたほどの気軽さはない。二足立ちしたクマが遊びに来たくらいのインパクトがあった。


『トマトン:モグちゃーん!』


『グラタン:お腹すいちゃったんでちゅかー?』


 しかし、そんなインパクトを跳ねのけて、2人はダキュッとモグに抱き着いた。

 モグはそんな2人をよそに、まだ手付かずの鬼芋に近寄った。


『トマトン:それすっごく硬いんだよ? 大丈夫?』


 とコメントで言うものの、モグにはそれは読めない。

 トマトンは鬼芋の硬さを教えるために、石でカチカチと鬼芋を叩いた。


「モグゥ、モググ!」


 ところが、モグは大丈夫だとばかりに手をあげてみせた。


 トマトンたちが観察していると、モグは鬼芋のツルがついていた部分に鋭い爪を差し込み、何かを確かめるように弄った。するとどうだろう、あれだけ硬かった外殻が紙でも裂くように細く剥けたではないか。


『トマトン:えーっ!』


『グラタン:モグちゃん、食べ方知ってるの!?』


「モッモグゥ! モグモグ……モグブシン!」


 モグは謎の言葉を2人に向けると、すぐに手をパタパタして嬉しそうにした。

 2人の感情を読みとって、驚きと共に褒められていることがわかったのだろう。


 それから2人が同じことを試してみると、鬼芋の殻はツルがあった場所からなら剥けることを発見した。

 ただし、簡単には剥けず、ツルの跡である直径1cmほどの円の中に一方向にだけ縦に裂ける場所があるのだ。おそらく、発芽する際にそこから割れるようになっているのだろう。

 この裂け目を取っ掛かりにして、頑張れば剥けるようになっていた。自然界で生きる幻獣であるモグはこのことを知っていたのだ。


 ちなみに、思い返してみると鬼芋を焼いてできた亀裂は、この縦線とほとんど同じラインであった。焼くことで耐久性の低いこの部分が真っ先に割れたということだろう。


 これは良いことを教えてもらったと、2人はホクホクしながら夕飯の支度を続けるのだった。




 ミニャのお家は日々バージョンアップしている。

 本日からは木製のローテーブルがお家に仲間入りしていた。


 コルンの木で作った枠組みに枝を並べて固定し、その上を石で平らにコーティングしたものだ。


 木は繊維が縦に入っているのでその方向に割るのは簡単だが、『縦に平らに切る』というのは意外に難しい。繊維が曲がって走っているため、ノコギリが繊維に沿って曲がるのだ。木工旋盤を作っていない賢者たちには板を作るのが難しかった。

 なので、このテーブルのように、平らにしたい場所は石をコーティングするのが常だった。


 このテーブルの一角には人形用の階段もあり、少し行儀が悪いが賢者たちが上がれる仕様になっていた。


 ミニャが席に着くと、賢者たちが階段を上がって料理をドンドン運んでくる。

 本日は魚の塩焼きと鳥肉、山菜のスープ、そして鬼芋の蒸し焼きである。


 そう、念願の塩を使った料理であり、さらに念願の炭水化物であった。

 東方探索隊の発見は、お料理のランクを数段階上げる結果に繋がったのだ。


 いつもよりも豪勢な料理を見て、ミニャは目を輝かせた。


『トマトン:今日のはとっても美味しいよ!』


『グラタン:食べて食べて!』


「わぁーっ、ホント!?」


 段々バージョンアップしていく料理に、ミニャもニッコリ。お風呂上りなのでモチモチほっぺを綻ばせたキラッキラな笑顔である。


「モッモグゥ!」


 テーブルの横にあるモグ用のミニテーブルの上にも、同じように料理が並んでいた。塩を与え過ぎると不味いかもしれないので塩分は薄めだ。


『キツネ丸:モグちゃん、良かったな?』


「モグ!」


 飼育員がそうコメントして、モグがいいタイミングで鳴いた。これは自分への返事なのだと、飼育員の親バカが発動した。


 食事に参加する賢者たちがテーブルに上がり、いただきます。


「ふわぁ、美味しい!」


 ミニャが一番に手をつけたのは魚である。魚が本当に好きらしい。


『くのいち:ミニャちゃん、お芋もすんごく美味しいよ!』


『ラフィーネ:本当にびっくりするほど甘くて美味しいですわね。はちみつを食べているみたいですわ』


 一緒にお風呂に入った近衛隊の面々が、お芋を手にして驚いた。

 この賢者たち、ミニャとお風呂のあとにお食事会をしているのである。ハイパーホワイトな職場だ。


「もくもく! うんまぁ! このお芋甘くて美味しい!」


 ミニャはホクホクしながら食べる。

 それは疑似的な食事をする賢者たちにはできない本当の食べ方だ。


 それを羨ましく思うけれど、それは贅沢な悩みだろう。なにせ自分たちの本体はなんだって食べられるのだから。

 きっとミニャと本当の意味で同じ物を食べるには、もっともっと頑張らなくてはならないのだ。


「モグちゃん美味しいねぇ!」


「モグゥ!」


 その時を夢見て、今はひとまず、ミニャとモグがお腹いっぱい食べられたことに賢者たちも満足するのだった。


読んでくださりありがとうございます。


ブクマ、評価、感想、大変励みになっています。

誤字報告も助かっています、ありがとうございます。

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― 新着の感想 ―
直火にかけたら派手に破裂するんじゃない? 焼き栗みたいにさ
[良い点] 危うく賢者が芋に負けるとこだったぜ・・・! そういやモグは一応見た目だけならモグラだもんな、この手の事知ってそう(てっきり固いであろう爪でやるかと) [気になる点] 甘味と塩分と炭水化物が…
[一言] 覇王鈴木たちの運搬とか多分大変な場面だろうけど、徐々に物語を加速させるために重要に思えるところだけピックアップし始めてる感じかな? そりゃミニャとモグと300人全員の行動は気になるけど、全部…
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