8-22 社会科見学
本日もよろしくお願いします。
翌日。
本日は夕方から王子の誕生会がある。
しかし、午前中は暇と言うことなので、ミニャたちはとある施設の見学に向かうことになった。ドレスアップは午後からだ。
市役所に行ったらその日の活動は終わり、みたいな1日1ターン制の生活をしていた賢者たちにとっては驚きのスケジュールである。
本日はシゲン、コーネリア、ルカルカ、フォルガ、ジゼ、クレイというパーティでのおでかけだ。アメリアは凄く行きたそうにしていたが、要人がいるだけで警備を厚くする必要があるので、無念のお留守番。
とはいえ、ミニャがいるので警備は凄いのだが。フォルガは勝手に解決する武力を持っているので、基本的に誰も気にしない。
本日も馬車で移動し、その護衛にはいつもよりも数は少ないものの、馬に乗った黒剣騎士団が担当した。先頭の黒剣騎士はグルコサでも見た鈴の錫杖を持っているが、馬車が通ることを前提に作られた道なので、それが使用される機会はまだ訪れていない。
【139、名無し:なんか黒剣騎士団のやる気が高くない?】
【140、ナオマサ:そう? 僕にはいつも通りに見えるけど】
【141、名無し:ウチにも普通に見えますけど?】
【142、ダーク:いや、俺もやる気に満ちているように見えるな】
【143、ナオマサ:他の人もそう感じるなら僕の修行不足が原因かな?】
【144、名無し:レベルみたいなのがある世界だし、抑えている闘気みたいなのを感じている賢者はいるかもしれないね】
【145、平和バト:きっと、昨日ミニャちゃんがお礼を言ったからですよ!】
【146、名無し:確かに。きっともう一度お礼を言ってもらうために頑張ってるに違いない】
【147、名無し:逆に言えば、ほとんどわからない程度には常に士気が高いとも言える】
そんな黒剣騎士団に護衛されて、2台の馬車が走る。
ルートは昨日通った城門前広場を経由してから市街地に入るようだ。昨日も見た景色なので、ミニャはある程度お外の様子をチェックすると車内での会話に入った。
「コーネリアさん、冒険者ギルドってどんなところ?」
一緒の馬車に乗るコーネリアにミニャが問う。
そう、本日は冒険者ギルドの見学だった。ちなみに、コーネリアとルカルカはメイド服、シゲンは執事服を着ている。
「冒険者ギルドは大きく分けて2つあります。1つは町の外で活動する人用の冒険者ギルド。これはグルコサにもあって、だいたい城壁の外に作られます」
そう説明されて、ミニャはぽわぽわーんとグルコサの町を思い出した。ミニャは冒険者ギルドには行かなかったが、帰りの船で城壁の外に建物があるのを見ていた。
「あー、あれかー。お仕事で汚れるからお外にあるの?」
「おっ、さすがミニャ様ですね。その通りです」
「コーム村にあったミニャのおウチも、村の外れにあったもんね」
「ミニャ様のお母様は狩人でしたね。たしかに狩人の家も村の外れに作られがちです」
それを聞いた賢者たちは、スレッドで『すわっ、迫害か!?』とネコミミ帝国の逆襲ゲージがメラメラし始めるが、ミニャは友達もいたようだし、村のお姉さんのお仕事を見学にいったりもしていたので、別に迫害は受けていない。職業柄、合理的な場所が村外れなのだ。
というか、魔物がいる世界で魔物を狩れるプロを下に置く理由がない。
「もう1つはダンジョン用の冒険者ギルドです。これから行くところですね」
「ダンジョン用!」
「こういった冒険者ギルドは、町の外れではなく、ダンジョンのすぐ近くに大規模で作られます」
「ミニャンジャ村も買取所が近くにある」
「はい。重たい物を持って移動したくないですからね。ミニャ様もこれから冒険者ギルドに行って、ミニャンジャ村にどんな物が必要か見ていってくださいね」
「うん!」
「あっ、ミニャ様。貴族街を抜けますよ」
話しているとルカルカが教えてくれて、ミニャはシュバッと窓縁に指を引っかけてお外を眺め始めた。
昨日に見た役所と役所の間には、2つの建物にくっつくように木製の大扉があった。扉は開きっぱなしで、その横には衛兵が立っている。
貴族街と市民街との境界だからか、先頭の騎士がシャンシャンと鈴を鳴らして存在を教える。賢者風に言うなら、『ミニャちゃん陛下のお通りでい!』である。
役所は門の裏側からも入り口があるようで、どうやら一般人が利用する場合はそちらを使うらしい。
ミニャはそんな構造の意味に気づかず、綺麗な街並みにほえーとした。そういったことは、賢者たちの方が熱心に勉強していた。
「しゅごー。ここも貴族街? あれ、でも貴族街を抜けたって? あれれ?」
「ここは大通りで、貴族街にも近いからまだまだ良い感じの建物が多く並んでいます」
「にゃるほーねぇ」
貴族街を抜けた瞬間にそれとわかるくらいにランクが落ちたら逆に怖いので納得だ。実際に、通りには貴族も使いそうな店舗や宿屋が並んでいる。
造りは木造レンガ作りばかりだ。
ダンジョンで木が取れるため、こういった建物が多いのだろう。
「トマリーの宿。オッコメンの玉米店。リンの魔道具屋。むむむっ、魔道具屋。面白いところ!」
ミニャはお店の看板の文字を口に出して読んで、楽しそう。
「魔道具屋はグルコサの見学で回ったんでしたね」
「うん、楽しかった!」
その見学にコーネリアはいなかったが、報告を聞いていたのだろう。
ミニャは通り過ぎる魔道具屋を目で追って、見えなくなるとすぐに次の標的を探した。
通りには貴族街以上にたくさんの人が歩いており、彼らは黒剣騎士に守られた2台の馬車に注目している。後続の馬車はフォルガとジゼ、クレイが乗っている。
その両方の馬車の屋根にお人形さんが乗っていて、誰もが足を止めて眺めていた。
次第に建物の雰囲気に年季が入り始めた。
とはいえ、メイン通りだけあってどの建物も手入れは行き届いている。
「はー、大きいおウチがいっぱい。あっ、また玉米屋さんだ」
「玉米屋はたくさんありますが、扱っている等級が違うんですよ。ここらへんだとまだ高いですね」
「等級。ミニャ、どれも美味しいと思う」
「あははっ、そうですね。私もよっぽど低い等級じゃなければ、どれも美味しいと思います」
そんな説明を受けながらメイン通りから1回だけ右折する。
そこもまたメイン通りと言える規模で、それもそのはず、このままダンジョンがある区域に繋がっている。
ダンジョンに近づくにつれて武器屋や防具屋、探索雑貨屋、食堂、宿屋が増えていき、道を歩く人の中に冒険者らしき人がたくさん見られるようになってきた。
「強そうな人がいっぱいいる!」
「へえ、ミニャ様、わかるんですか?」
ルカルカが面白そうに言ってきた。
「うん。歩き方が普通の人と違うもんね!」
「えーっ、これは本物だわ」
7歳児の発言に、ルカルカたちは目を瞠った。
ミニャは賢者や村の冒険者のお手本をよく見て、物事のやり方をすぐに覚える。それだけ人をよく観察しているのだろう。
大通りには路地がたくさんあるが、見える範囲でどこもちゃんとしたものだ。ダンジョンに近いだけあって、脇道ですら一等地なのだろう。
【220、名無し:宿が少ない印象だな】
【221、名無し:それは俺も思った。ラノベだと冒険者といえば宿だけどな】
【222、名無し:グルコサの冒険者は借家暮らしが多いらしいぜ】
そんな書き込みを見たネコ太が、コーネリアに問うた。
『ネコ太:ダンジョンに潜る冒険者さんは、普段どこで暮らしているんですか? 宿ですか?』
「宿で暮らす人もたまにいますけど、大抵は借家暮らしです。宿だと部屋の維持が大変なんですよ」
『ネコ太:維持って、もしかしてダンジョンに潜って宿に泊まらない日も料金を払うんですか?』
「そうです。それをしたくない場合は宿を出るわけですけど、そうすると、ダンジョンから疲れて出てきたあとに宿が取れないということがよく起こるんですよ」
『ネコ太:なるほど、そういうことがあるんですね』
「他によくあるのが、店の上の階を貸してもらって住んでいるとかですね」
「そうそう。あたしも薬屋の3階に住んでましたよ。その代わりに、ダンジョンで薬の材料を採ってくるんです。そうやって、間借りする店の種類によって注文が変わるんです」
「私は、シャーリーがいましたので家持ちでしたね」
コーネリア、ルカルカ、シゲンと生活スタイルを教えてくれた。
【240、名無し:やっぱり、生きている世界っていうのは生きてるんだな】
【241、名無し:構文やめい。だけど、言わんとすることはわかる】
【242、名無し:ミニャンジャ村は今のままでいいのかな?】
【243、リッド:冒険者はかなり住みやすそうにしているし、大丈夫じゃない?】
【244、ウォッカ:たしかに、あの人たちは楽しんでいるまであるからな。村が大きくなるまでは大丈夫だと思うよ】
【245、名無し:でも、性的な施設がないのはちょっと問題になっているよな】
【246、名無し:そうなの?】
【247、名無し:この前、夜の酒盛りの時に冒険者がミニャンジャ村の唯一の欠点って言ってたよ】
【248、名無し:そ、そこはグルコサに行ってもろて。あとは、ちょっと離れたところにラブホを作るとか】
【249、名無し:あれ? グルコサに船を出す時に冒険者がこぞって船旅の護衛を申し出るのって、もしかしてそういうこと?】
【250、名無し:そうだよ。もちろん、普通に武具の手入れなんかの用事で行く人もいる】
【251、名無し:だから昼に行って翌日の昼に帰るのか……長くねって思ってたんだよな】
【252、名無し:ミニャちゃんが村長とはいえ、割と重要な問題だよな】
【253、名無し:でも、娼館で働く人ってなりたくてなってるわけじゃないでしょ。ミニャンジャ村のコンセプトに大分合わないと思います】
【254、名無し:いや、人や動植物の精や魔力を吸収して生きる種族がいくつかいるらしいよ。グルコサのまともな娼館は、そういう種族を雇って領主が運営している】
【255、名無し:え。領営なの?】
【256、名無し:ここは仕方ない。そろそろ最終兵器ネムネムを出すか】
【257、ネムネム:描かんぞ( ;∀;)あれを描いた時はどうしてもお金が必要だったんや!】
【258、名無し:絶対に人気が出るだろうに勿体ないなぁwww】
そんな話をしているとは知らずに、ミニャは通り過ぎるお店や人々を楽しく眺める。
やがて、一行は石のアーチを潜った。町の中に地域を区切った壁があるのだ。
「シャンシャン鳴っとる!」
先頭の黒剣騎士が鳴らす鈴の音を聞いて、ミニャがむむむ顔。
すると、コーネリアが説明した。
「冒険者ギルドに入りましたね」
「え。まだお外だよ?」
「いえ、この壁の中が全部そうです」
「ここが全部?」
「はい、そうですよ。ダンジョンは凄く重要な場所ですから、扱いも特別なんです」
「はえー、ひろーい」
そこは300m四方ほどを壁で仕切られた区域で、それ全体がダンジョン用の冒険者ギルドなのだとか。
壁に沿って建物が並んでいるが、広大な敷地の割に中央部分には建物が少ししかない。そこにダンジョンポールがあるようだ。ダンジョンは国家経済の根幹に関わるため、そこに入る人の動線を重要視しているのだろうと、賢者たちは考察した。
ミニャが乗る馬車は壁際の一番立派な建物の前で停車した。
「にゃー、おっきいー!」
馬車から降りたミニャが建物を見上げて言う。
そして、すぐにハッとした。いつものように建物入口まで道を作ってくれている黒剣騎士たちのことを思い出したのだ。
「ありがとうございました!」
「ハッ、勿体ないお言葉です!」
しっかりとお礼を言うミニャに、今日も護衛をしてくれているルファードがはきはきした声で言う。
というわけで、目の前にはおっきい建物である。
「コーネリアさん、ここは何するところ?」
「ここは冒険者ギルドの本部ですね」
「ほんぶ」
「まあ、見てもあんまり面白いところではありませんな」
そう言ったのは、別の馬車に乗っていたフォルガだった。馬車から降りて、クレイと一緒にミニャの隣に立つ。
「にゃんと……」
面白くないのかー、とミニャはちょっとがっかり。
すると、1人の初老の男性がミニャの前に進み出た。
男性はフォルガに目礼して、ミニャだけに対応する。
「ミニャ様、ようこそお越しくださいました。私は冒険者ギルドを取り仕切っているクリストファー子爵と申します。どうぞお見知りおきください」
先制攻撃を受けたミニャはスイッチオン!
「ミニャはミニャです! 7歳です! 女神様の使徒で、ミニャンジャ村の村長さんです! 今日はよろしくお願いします!」
「これはご丁寧にありがとうございます。失礼ながら、こちらの方々はなんとお呼びすればよろしいでしょうか」
「賢者様です!」
「では、賢者様とお呼びいたします」
さすが貴族。
ご挨拶砲を正面から受けても、スマートな笑顔を浮かべて頭を下げる。
賢者たちはミニャに恥をかかせないように、キリリと整列中。
【320、タカシ:ギルドマスターが玄関まで出迎えるなんて、さすがミニャちゃんだぜ】
【321、名無し:この書類だけ片付けたい、あと1分待ってくれ。みたいな強者ムーブはなかったな】
【322、名無し:王様からしてクソ気を使う相手にそれをやったらクビだろ。冒険者ギルドは王国所属の組織なんだから】
【323、名無し:俺は『ミニャ様、フォルガ様。ようこそ以下略』みたいな感じじゃないことに驚いたわ】
【324、名無し:あまり見ても面白い場所じゃないって言ったから怒ったんじゃない?】
【325、名無し:んなわけwww】
【326、ネムネム:これから粗暴な冒険者に喧嘩を売られるんだな(*’▽’)ワクワク!】
【327、名無し:このメンツにそれをやるヤツは絶対にいないだろwww】
【328、名無し:うん、冒険者って舐めたヤツいないしね】
こうして、ミニャの社会科見学が始まった。
読んでくださり、ありがとうございます。
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また、書籍版の方も高評価いただけて、とても嬉しく思います。
誤字報告も助かっています、ありがとうございます。




