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ミニャのオモチャ箱 ~ネコミミ少女交流記~  作者: 生咲日月
第8章

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8-9 鍛錬のあと

本日もよろしくお願いします。


 結局、ミニャを含めて全ての人が水球から解放されたのは、開始から15分ほど経ってだった。


 最後まで頑張っていたフォルガたちは解放されるなりぶっ倒れた。鍛え上げた戦士たちがそんななのに、ミニャは水球から出ると「ふいーっ!」と汗を拭う仕草。魂を鍛えるということの難しさが窺える。


「すんごい疲れた!」


『覇王鈴木:ミニャちゃん、大丈夫か?』


「んっ! でも、すんごい疲れた!」


 二度言うくらい疲れたらしい。


 そんなミニャにクラウが言う。


『ほっほっほっ、女神の使徒にはやはりあまり効果はないか』


「うーん、でもすんごい疲れたよ!」


 ミニャはまだ縄跳びをぶん回せそうな元気な声で答えた。


『そうかそうか。まあ、ゆっくり休むと良い』


「うん!」


『さて、それではミニャよ。また明日会うとしよう』


「もう行っちゃうの?」


『我が魔力に当てられた者も多いからな』


「そっかー。あっ、クラウ様、最後に体の全部を見せてください!」


『うむ、そうだったな。では、また会おう』


 クラウは別れを告げると、天に昇るようにして水面から跳躍する。


「にゃーっ、おっきいーっ!」


『工作王:な、なんてこった……! これほどなのか!?』


『ネムネム:ふわぁああああ!』


『ふともも男爵:ふぁ……う、美しい……』


『ルナリー:凄い、これが龍……っ!』


『ニーテスト:お、おぉ……龍とは凄まじいな』


 ミニャや賢者たち、そして修行に参加せずに元気な人たちがクラウの巨体を見上げて、圧倒される。船乗りなど両膝をついて拝み始めるほどだ。


 一帯を照らすほどに青く輝いたその体はヘビのように長いもので、全長が200mほどはあった。

 満天の星を背景にして弧を描いたクラウは、湖の中へと落ちていく。その巨体がもたらす津波はどれほどなのかと賢者たちは身構えるが、まるで槍を穂先から水に落としたかのように、わずかな波紋と光の粒を残して湖に吸い込まれていった。


【712、ネムネム:インスピレーションがヤバい!】


【713、ハイイロ:これは最高の逸品ができるよ!】


【714、ルナリー:滅茶苦茶感動しました! ヤバいです!】


【715、名無し:なんか船に生産属性が多いと思ったけど、もしかして水龍さんの像も作るのか?】


【716、工作王:ああ、そのつもりだ。気に入られて損は絶対にないからな】


【717、名無し:まあ、それはそうだな】


【718、名無し:だけど、カッコイイ造形って誰か作れるの? みんなアニメ系のフィギュアしか作ってなくない?】


【719、工作王:ハイイロや髑髏丸が上手い。あとは俺もそこそこ手伝えると思う】


【720、ハイイロ:ああ、任せてくれよ!】


【721、髑髏丸:これは楽しみが増えたなぁ。最高の作品を作るためにも、明日の修行はぜひ受けたいものだ】


【722、名無し:絶対にホラーにするなよ。ガチで怒らせたら終わるからな】


【723、名無し:問題は明日のチャンスをどうするかだな】


【724、名無し:魔法の練度の問題もあるし、明日の枠は始まりの賢者と第二陣の初期組で占有していいんじゃないかな。女神像を渡す時にも3回目のチャンスがあるわけだし、俺も魔法の修行をして3回目に備えたいな】


【725、名無し:今後のミッションを考えると、それが良いだろうね。僕も明日は新人の枠がなくても良いと思う。3回目にもう少し魔法への理解度を高めて挑戦したいな】


【726、ニーテスト:そのあたりのことは定例会議で話し合おう】


【727、名無し:おっ、ニーテストじゃん。3回チャンスをもらったのはナイス判断だったぞ!】


【728、ニーテスト:あれはライデンの提案を代弁しただけだ】


【729、名無し:3回目はマジで日取りをしっかり考えてください! 可能なら土曜日がベスト!】


【730、名無し:女神像の作成状況にもよるけど、10月の三連休がいいんじゃないかな】




 クラウの修行が終わり、現在はそれぞれが船室に戻っていた。


 大型船や護衛船に乗っている人も、そして一部の賢者も死屍累々。

 回復属性の賢者たちは万が一のないように、各所に召喚されて定期的に健康鑑定を行なって大活躍中だ。


 水球の中でスイスイと踊っていたミニャだが、自分で言っていたようにさすがに疲れており、夕飯の続きを終えるなりすぐに眠ってしまった。


 アメリアはメイドが看病する都合で、ミニャとは違う部屋で寝ることになった。楽しみにしていたのに無念である。

 そんなミニャの部屋で、ニーテストとニャロクーンが話をした。


『ニーテスト:ニャロクーンさん。今回の修行で、具体的にミニャはどうなるんだ?』


「ミニャ殿が何を得るかは我もわからん。我の場合は闇魔法に閃きがあったな。しかし、この閃きは女神の使徒なら結構な頻度で起こる。だから、クラウの修練から受けた恩恵は我にとってその程度だった。おそらく、ミニャ殿もそこまで変化はないだろうな」


『ニーテスト:なるほど。まあミニャのオモチャ箱はかなり複雑な魔法だからな、よく様子を見ておくよ』


「うむ。恩恵は他の者の方が大きかろうな。魔力線と魔法門は成長させるのに苦労する。今回のことでいきなり強くなれたわけではないが、受けた者は人よりも優れた魔法の使い手になれる可能性が増しただろう。まあ結局は本人の今後次第だ」


『ニーテスト:そういうものか。やれやれ、そうすると受講料を取れなかったのは痛いな』


 ニーテストも受講料は取りたかったのだが、クラウの前でクラウから受ける修行をネタにして商談などできるはずがない。クラウが気に入っているのはミニャであり、賢者でもニーテストでもないのだし、下手なことはできなかった。


「賢者殿の可能性が増しただけで良しとするのだな。古来より、龍に関わることで欲を満たそうとする者にろくなことは起こらん」


『ニーテスト:そうか。わかったよ』


 そんな話をしていると、工作王が問うた。


『工作王:ニャロクーンさん、この水龍の鱗は何に使えるんですか?』


 クラウから貰った鱗の周りには生産属性の賢者が集まっていた。その姿はまるでお菓子に群がるアリンコのよう。


「我はローブにしたな。そして、最終的にそのローブを素材の1つにして、この猫の体を作った」


『工作王:へえ、そうだったんですか』


「うむ。元々強力なうえに、我の魔力に何十年も触れ続けていたからな、素材としてこの上なく丁度良かった」


『工作王:なるほど、なんとなくイメージできます』


「剣王の伝承はどう伝わっているのだ? おそらく貰っておるだろう?」


『工作王:おとぎ話で光る鱗を貰ったとは伝えられていますが、何になったかは伝わっていませんね』


「ふむ、祖王の権威付けとして、いかにも何かに変わったと伝えそうなものだが……もしかしたら、鱗を加工する方法がわからなかったのかもしれんな」


『工作王:そうかもしれません。ニャロクーンさんはご存じなんですよね?』


「うむ。剣にも盾にもローブにもできる。もちろん、人形にもな」


 その言葉に、生産属性たちは『おーっ!』と嬉しそうなフキダシを上げた。


「まあ、何にするかはミニャ殿とよく話し合うのだな」


『工作王:はい。とりあえず、しっかりと管理しておきます』


「もし必要なら我が村へ運んでやろう。旅先に持っていくような物ではないからな」


『工作王:ありがとうございます。いきなりなくなったらミニャちゃんも残念に思うでしょうから、明日以降にお願いするかと思います』


「それならば、水底の輝きを受け取ったあとでいいかもしれんな」


 生産賢者たちの夢が広がる話だった。


 ニャロクーンには船旅の間、船に居てもらうことになった。


 そうして、ニーテストは本日の定例会議を始めた。そこで、明日の修行を受ける賢者の選別を行なうのだった。




 翌日、泥のように眠っていたミニャはちょっと遅めのお目覚め。

 水龍がまた会いに来るということもあって、船旅も今日は早めに停泊して準備をする予定。その船内は通常よりも気持ち静かな様子だ。乗客の半数がダウンしているので、さもありなん。


「うみぃ……っ!」


 ミニャはベッドの上でネコのように背筋を伸ばす。

 歳を取ると寝起きでいきなり筋を伸ばすと肉離れを起こす場合もあるが、若くいつも走り回っているミニャにはそんな心配がなかった。


「よく寝たー!」


『乙女騎士:おはようございます、ミニャちゃん』


「おはよー! アメリアちゃんは?」


 ミニャは隣のベッドを見てアメリアがいないことを思い出し、心配した。

 賢者ネットワークで調べると、丁度目を覚ましたところだった。


 ミニャはさっそくアメリアのお見舞いに向かった。

 トントンとドアをノックすると、メイドが出てきた。


「あら、ミニャ様、いかがされましたか?」


「アメリアちゃんのお見舞いに来ました」


「まあ、丁度目を覚ましたところですよ」


 後ろで、「わっ、わっ、お通ししてください!」とワクワクした声がして、ミニャは部屋に入れてもらった。


 アメリアは回復属性の賢者を抱っこしながら椅子に座っており、少し気だるい様子だが、想定していたよりも元気そうだった。その対面には領主とクレイもおり、丁度来たばかりだった。

 3人へ軽く挨拶をして、ミニャはアメリアに問う。


「アメリアちゃん、もう大丈夫なの?」


「はい。でも、お腹が空きました」


「ミニャもー! このあと食べに行こー」


「はい!」


 すると、領主が言う。


「アメリア、クラウ様の修練を受けて何か変わったところはあるか?」


「え。えっと、特に何も」


 アメリアがしょんぼりするので、一緒に来ていたニャロクーンが言った。


「アメリアはまだ魔法の道を歩み始めたばかりだ。この経験が何をもたらしたか自覚できるのはしばらく経ってからになるだろう。そうだな、フォルガたちなら、今まで散々使ってきた魔法の感触に変化があることにすぐ気づけるはずだ」


 その答えを聞いて、領主はメイドに視線を向けた。それだけでメイドは視線の意図を理解して答える。


「皆様、まだお目覚めになったという報告はございません」


「アメリアは若いからこの程度で済んでいるが、あやつらは昼過ぎまで起きられんだろう」


 ニャロクーンが言う。


「あのジゼがそれほど寝るとはよほどのことだな」


 領主から、父親であるフォルガではなく執事のジゼの名前が出た。貴族にとって執事の朝の早さへの信頼感は半端じゃないのだろう。


 フォルガたちはそんな有様だが、修行を受けた賢者たちも全員がダウンしていた。ほぼ全ての賢者が長時間眠ってしまっており、たまに掲示板にトイレに起きたと書き込みが行なわれるくらいで、そう書き込んだ賢者もすぐにスレッドから落ちてしまう。

 そんな状況を見て、本日修行を受ける予定の賢者たちは近所に住んでいる賢者を頼るなどして、準備を始めていた。


「そうだ。ミニャ殿、クラウ様への女神像を作るにあたって、何か必要なものがあればいくらでも言ってくれ。すぐに用意しよう。無論、金は不要だ」


「むむっ、買ってくれるんですか?」


「ああ。ミニャ殿の取引に我々を混ぜてもらった形だからな。そのくらいはさせてくれ」


「ありがとうございます!」


 それを生配信で見ていたニーテストは、それはそうだろうな、と思った。そして、フォルガ、ジゼ、ガロードからも何らかのお礼が貰えるだろう。この3人は貴族なので、間違いない。


 それから、一緒に遅めの朝ご飯を食べたアメリアは、食事を終えるとまた眠ってしまった。クレイも今晩の修行に参加予定なので大人しく過ごすようだ。


 そこで、ミニャは賢者たちと一緒に他の人たちのお見舞いを始めた。村長さんは忙しいのだ。暇とも言う。しかし、まだ誰も起きておらず、様子見だけで終わり、すっかり暇になってしまったミニャは賢者たちと過ごした。


『覇王鈴木:ミニャちゃん、クラウ様の修行でどう変わったのか調べてみようぜ』


「むむむっ、賢者様たちが好きなけんしょーだ!」


 賢者は検証が好きな生き物なのだと、ミニャは見破っていた。


読んでくださりありがとうございます。


ブクマ、評価、感想、大変励みになっています。

誤字報告も助かっています、ありがとうございます。

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― 新着の感想 ―
裏で寝小便垂れている賢者がいたりして(笑) ミニャのマント(君主の聖衣Garb of Lordsタイプ)を作って、権威を高めないとね。
こんな貴重な素材だとエリクサー症候群を起こしちゃうぜ 使わないと意味が無いってわかってるけど、どうしてもね…
ニーテストもニャロクーンにはさん付けすんのやね 他にさん付けするのは誰だろう
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