8-8 クラウの修行 後編
本日もよろしくお願いします。
アメリアを包んでいた水球が甲板に静かに落ち、光の粒を放出させながら割れた。
「「アメリア!」」
領主とクレイが慌てて駆け寄る。
アメリアは不思議と水には濡れておらず、割れた水球の水も消えていた。問題の本人だが、大粒の汗をかき、すぐにクテンと気絶してしまった。
回復属性の賢者がすぐに健康鑑定を行なった。
『ホマズン:領主様、アメリア様の容態は、疲労と空腹です。それからこのあとに魂魄痛という症状が確実に起こります』
「魂魄痛……知らない病だ。賢者殿、それはどういうものだ?」
『ホマズン:筋肉痛……いや、成長痛の魔法版です。魔法の鍛錬で人の魂が急激に成長する際に起こるそうです』
賢者も初めて見る症状だったが、健康鑑定の説明を読む限りではそういうものだった。ニャロクーン曰く、この修行は水圧がかかるという話だが、幻覚なので潜水病などにはなっていないようだ。
「それは回復魔法で治してはならんぞ。娘を想うのなら自然に任せればいい。なに、死にはせん」
ふわりとやってきたニャロクーンがそう言った。だが、領主とクレイ、メイドたちは凄く心配そう。
「ふっふっ、幼き日にクラウの修行を受けたのだ。鍛錬を怠らなければ、その娘は闇魔法の名手になるだろう」
闇魔法を広めたいニャロクーンは、凄く楽しみそうにアメリアの顔を眺めた。
次に水球が割れたのは、生産属性の新人賢者だった。
少数あった自由枠にたまたま抽選で当たったのだ。
『覇王鈴木:大丈夫か?』
見守っていた覇王鈴木が慌てて駆け寄るが、フィギュアに反応はない。
【422、名無し:この賢者、誰?】
【423、名無し:シロナって新人だよ。友達で生配信を見てたから間違いない】
【424、名無し:賢者ページを調べた。召喚中じゃないから、たぶん強制送還を受けたな】
【425、名無し:シロナさん、大丈夫ですかー? 書き込み待ってまーす!】
【426、シロナ:ちょっと無理です。15分ほど待っ】
【427、名無し:死にかけじゃん。大丈夫かよ】
【428、名無し:この子はウインドウもまだ手に入れてない感じ?】
【429、名無し:ううん、もう取ってるよ。ちょっと心配だから家に行ってくる】
【430、名無し:おう、行ける距離なら行ってやった方が良いな】
【431、竜胆:ウインドウの思考入力すらも億劫になるほどに疲弊しているのか? 中条さんは大丈夫だろうか】
【432、名無し:中条さんも受けてるのか】
【433、竜胆:まあ、中条さんとは一緒にいるから、すぐに対応はできると思うが】
【434、名無し:あっ、ソラン君が終わった!】
【435、名無し:領主様も気が気じゃないだろうな】
シロナが脱落したのを皮切りに、ソランやまだ日が浅い賢者がどんどん脱落していく。解放された賢者は全員が強制送還になり、ソランも気絶はしていないまでもぐったりして説明もままならない状態。
『ホマズン:領主様、ソラン君にコンソメリゾットを食べさせてあげてください。空腹状態はあまりよろしくありません』
「わ、わかった。おい!」
領主が珍しく焦った声で指示を出し、メイドがリゾットをよそって持ってきて、ソランが看病され始めた。
その間もミニャのスイスイダンスは止まらない。
賢者や兵士たちもどんどん脱落していく中で、兵士並みに耐えていたアマーリエもついに限界がきた。王弟の妻になるだけあって、かなりの強さを持っていたらしい。
さすがと言うべきかフォルガたちはずっと頑張っている。個人戦力としては最強の賢者であるサバイバーよりも強い連中なので、最後まで残るのは彼らだろう。
一方、賢者が脱落する順序に腕っぷしの強さはあまり関係なく、賢者になった日が早いほど長く耐えている。ネコ忍よりも始まりの賢者の方が長く耐えているのだ。
他の属性が全滅する中で、意外にも生産属性が多く残っていた。生産属性以外だとサバイバーと闇人しか残っていない。その生産属性たちもどんどん脱落していき、最後に闇人とサバイバーの順番に強制送還された。
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507、名無し
サバイバーが逝ったーっ!
508、ユズリハ
わーっ、闇人が大健闘だ!
509、名無し
くぅ、俺たちの最強戦力が……っ!
510、名無し
やっぱり魔法関連だとパトラシア人のガチ勢は強いな。
511、名無し
コーネリアさんも頑張ってるなー。
512、名無し
面白お姉さんだけど、あの人もかなり強いからな。
513、名無し
兵士さんにも残っている人がいるな。
514、竜胆
あの人たちは領主の護衛だからね。相当なエリートだよ。
515、名無し
おっ、竜胆。中条さんは大丈夫だった?
516、竜胆
栄養ゼリーを3本とパンとバナナを食べて、そのまま気絶するように寝たよ。まあ呼吸も安定していたし大丈夫だろう。
517、名無し
食事のラインナップが酷いなwww
518、幻魔
生産属性が最後まで残ったってことは、この修行は魔法の使用頻度が関係しているんだろうな。
519、名無し
それはどうなんだ? 覇王鈴木とニャロクーンさんの話で魔力関連というのは間違いないけど、使用頻度だと闇人とサバイバーが最後なのは説明がつかなくない?
520、幻魔
あくまでもメイン要素は、だよ。サバイバーが最後まで残れたのは、他の賢者に比べて気合や苦痛耐性が圧倒的に強いからなんじゃないかな。闇人は相当に魔法が好きだから、生産属性並みに魔法を使っていたんじゃないかと思う。
521、エンラ
待たせたな。少し言語化が難しい体験だったのだが説明しようか。
522、名無し
さすが忍者、復活が早い!
523、ナオマサ
あの中で何があったんですか?
524、エンラ
あの水の中はどんどん圧迫感が強くなっていく。それに加えて、四方八方から冷たさや熱さ、局地的な圧迫など様々な負荷がかかる。それらを魔力で防ぐんだ。そして、打つ手がなくなると水球が崩壊する仕組みになっていたのだろう。ワシも何も絞り出せなくなったことで、対応できなくなって終わってしまったよ。
525、名無し
水の中で動けなかったみたいだし、四方八方からってことは魔力を背後へも展開できるってこと?
526、エンラ
ああ。これが不思議なのだが、直感的にできる。だが、無茶な使い方をするほどに、体の内側にある根源的なものが急速に疲弊していく感覚に陥る。おそらく、あれが魂の疲弊といった感覚なのではないかと思う。
527、名無し
やってみないとわからなさそうだな。とりあえず、地獄ってことでOK?
528、エンラ
いや、やっている間は非常に面白かったぞ。終わった後が何もできん。今も寝転がって入力している。基本的にほとんど動けなくなると思っていい。立つのはまず無理だ。
529、名無し
ネコ忍ですらそんなか……。
530、名無し
サスケさんも参加してませんでした? あの爺さん、死んでませんよね?
531、エンラ
あれは妖怪の一種だから大丈夫だ。
532、ナオマサ
空腹はどうなんですか? あんまり酷いようなら、一人暮らしの賢者の救助に向かった方が良いかもしれませんよ。
533、エンラ
いや、意外と空腹はそこまでではないな。通常よりも多めの食事を平らげられる程度は減っているが、魔法を使いまくった時のような眩暈がする空腹ではない。ただ、SOS板は作っても良いかもしれんな。あと、すまんがそろそろ落ちる。限界だ。
534、名無し
ゆっくり休んでください。
535、竜胆
水球が割れる時に魔力と思われる光が大量に外へ出ている。これが多少なりとも魔力を回復させる仕組みになっているのではないかな?
536、名無し
たしかに必ず光の粒が出てきているね。
537、名無し
ネコ太も受けてたよな。先に受けさせたのは失敗じゃないか? 本体の症状を分析する人がいれば、全員に共有できたわけだし。
538、名無し
まあ、ネコ忍にも回復属性がいるし、そこは大丈夫じゃないか?
539、ケアリア
あの、私の知り合いのメリンとファントムさんが参加して、いま丁度眠りました。健康鑑定の結果は、ホマズンさんの鑑定結果と同じでした。念のために定期的に鑑定しておきますね。
540、名無し
お願いします。
541、名無し
まあ個人差があるかもしれないからな。一応、SOS板を作っといたぞ。
542、名無し
サンクス。
543、名無し
さっき話題に挙がったシロナの様子も報告しておくよ。家に行ったらベッドで寝てた。健康鑑定が使えないから正確なことは言えないけど、脈や呼吸は問題なしで、呼びかけたら一瞬だけ起きたけど、また深く眠っちゃった。
544、名無し
おー、良かったじゃん。
545、名無し
だけど、栄養ゼリーのゴミを捨てることすらできなかったみたいで、ベッドのそばに転がってた。そういうレベルで動けなくなると思ってもらっていいと思う。
546、名無し
そんなか。
547、名無し
でも、そうするとSOS板は効果がなくないか? 知り合い同士なら合鍵とか持ってるかもしれないけど、知らない人だと影潜りくらいでしか家に入れなくないか? まあ、実家暮らしなら別だけど。
548、名無し
そもそも、受けた賢者からすればSOS板の存在なんて知らないだろうし、そこに悠長に書き込む余裕なんてないかもな。
549、名無し
まあ、さすがにみんなベッドやリクライニングシートの上に帰還するだろうし、帰還して死ぬようなことはないと思うけどね。
550、名無し
ミニャちゃんは大丈夫かな?
551、名無し
めっちゃ踊っているし、ニャロクーンさんも大丈夫って言ってたし、そこは大丈夫なんじゃないかな。
552、名無し
ミニャちゃん最強! ミニャちゃんスイスイ!
553、名無し
あ、最後の兵士さんが逝った。
554、名無し
朗報、コーネリアさん、ガチで強かった!
555、名無し
兵士は業務で鍛錬できない時間があり、王都の冒険者は収入のためにダンジョンに潜り続ける。冒険者が強い理屈ってのは、そういうことなんじゃないかな。
読んでくださりありがとうございます。
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誤字報告も助かっています、ありがとうございます。




