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ミニャのオモチャ箱 ~ネコミミ少女交流記~  作者: 生咲日月
第8章

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8-4 トランプ

本日もよろしくお願いします。


 高速艇の牽引は沖まで出ると終わり、威勢の良い声を掛け合いながら船乗りたちが大型船の帆を張っていく。


「ふぉおおお!」


『ネコ太:すごーい!』


『覇王鈴木:迫力があるなぁ!』


 船乗りの仕事ぶりとどんどん開いていく帆の様子に、ミニャも賢者も思わず見入った。

 結ばれた帆が風を受けて膨らむと、船はゆっくりと動き出した。


「にゃー、しゅっぱーつ!」


 ミニャの口から本日3度目の出発の号令。

 その声に応えるようにして、船は王都に向けて進みだした。


「おーっ、アメリアちゃん、ちゃんと進んでるね」


「はい、ちゃんと進んでます」


 ミニャとアメリアは船縁から湖を見下ろして、船が水を切っている様子を眺める。そして帆を見上げたミニャは、ははーんと全て理解。


「オールで漕いだり、魔道具を使ったり、風で動いたり、お船はいろいろあるんだなぁ」


 初めて乗るタイプの船に、ミニャはビシバシと情操教育された。


 一方のアメリアはマストから甲板に繋がっているロープをジィーッと見つめる。ミニャもその視線を追って、幼女2人はむむむっ顔でロープを見つめた。


『ネコ太:ミニャちゃん、どうしたの?』


「ネコ太さん、ギシギシ言ってる」


『ネコ太:ギシギシしてるね。でも、大丈夫だよ。ああやってしっかりと支えてるんだ』


 どうやら先ほどのシゲンの話を聞いて、必要以上にロープを警戒しているらしい。


【489、名無し:ちょっと脅かしすぎたんじゃないか?】


【490、名無し:ま、まあ注意するのは良いことだ】


【491、名無し:むむむっ顔可愛いwww】


【492、名無し:必要以上にビビる必要はないけどな。何かあれば回復属性もいるし】


【493、名無し:いや、回復属性があるからええやろの精神はマズいから】


【494、百太郎:なんにせよ、これで安全なロープかどうか考えられるようになっただろう】


【495、ゲンナイ:そうですね。小屋や作業現場にあるロープは、危険性が高いわりに子供の好奇心を刺激してしまいますから】


 楽天的な賢者もいれば、ミニャの成長を後方腕組みで見守る賢者もいて、船旅は順調な滑り出し。


「あ、ミニャたちのお船! おーい! こっちはちゃんと進んでまーす!」


 護衛についている高速船に手を振ると、甲板にいる賢者たちがぴょんぴょんと手を振って返した。あちらもしっかりと護衛の任務に就いているようだ。


【520、名無し:こっちはちゃんと進んでますって可愛すぎか!】


【521、名無し:そりゃコーネリアさんもニッコニコや】


【522、名無し:こういう呼びかけをしている子供には覚えがあるな。その時は冷めたふりして見てたけど、本当は仲間に入れてほしかったんだ】


【523、名無し:悲しい思い出やめい】


 しばらくするとアメリアがくしゃみをしたので、ミニャたちは船内に戻った。


「ねえねえ、賢者様。トランプはどこ?」


『くのいち:ちょっと待ってね』


 船旅は暇になることがわかっていたので、賢者たちは遊び道具をたくさん作って持ってきた。その一つがトランプ。


 トランプはグルコサで買える一番上質な紙を使用し、ハンコで裏面の柄を捺した物だ。


 お部屋は狭いので、ミニャはトランプを出してもらうと、アメリアやクレイたちと一緒に食堂に行った。

 どうやら集会場所になっているようで、領主夫妻とフォルガたち、そして船長がいた。

 船長は船に乗った時にミニャにも挨拶してくれた人物で、ひげを生やしたムキムキのオッチャンだった。


【649、アオ:想像していたよりも貴族って質素ですね。あたし、船の中でも豪華な部屋にいると思ってました】


【650、名無し:わかる。俺も優雅な旅のイメージがあった】


【651、クラトス:今回は大勢で行くからな、この船はランクの高い客船をチャーターしたものらしいぞ。貴族が自分専用の船でも作らない限り、現実的にはこれくらいが限界なんじゃないか?】


【652、名無し:そういう船は維持も大変だろうしな。年に何回使うんだって話だし】


【653、百太郎:木造船の巨大化がそもそも難しいからな。貴族と云えども、一室あたりが狭くなるのは仕方ないのだろう】


【654、名無し:江戸時代の参勤交代も旅籠で良い部屋に泊まれるとは限らなかったみたいだし、権力者でも旅をしている間はこんなもんなんだろう】


 想像していた旅とは違った賢者もいるようだが、領主たちは特に辟易した様子ではないので、当たり前のことなのだろう。


「領主様、ここ使って良いですか?」


「ああ、ミニャ殿。もちろんだとも」


 許可を貰って、端っこのテーブルを使うことに。

 子供4人で席についた。


「うんとねー、これはトランプって言ってねぇ」


 さっそく、ミニャはカードを表にして説明してあげた。


 トランプのスートは魔法属性をモチーフにして、水、火、風、土とし、ジョーカーは女神パトラにした。

 枚数は日本で一般的な52枚+ジョーカー。世界的に見ると、必ずしも52枚ではないのだが、まあ賢者が作った物なのでこの枚数だ。


「いろいろなゲームができるんだけど、最初は簡単な『なぞなぞ女神様』からやろっか」


「わぁ、どんなゲームですか?」


 このトランプはできないゲームが存在する。ジョーカーを女神パトラにしてしまったので、ジョーカーが嫌われるババ抜きができないのだ。

 そこで賢者たちが考案したのが『なぞなぞ女神様』である。


 ルールはジジ抜きとほぼ同じだが一点だけ異なり、女神カードが手札に配られた人は、他のカード1枚と一緒に場へ出すのだ。その組み合わせた1枚は裏にして出す。つまり、他のプレイヤーは何が最後に余るのかわからない。まるで女神様がそのカードの数字を隠したような感じになるので、なぞなぞ女神というわけである。


 というわけで、ミニャが小さな手でうんしょうんしょとカードを切る。ちなみに、クレイもミニャンジャ村で遊んだことがある。


「アメリアちゃん、カードが多かったら賢者様が半分くらい持ってくれるからね」


「はい、わかりました。あっ、私に女神様が来ました!」


「わっ、いいな。そうしたらね、こうやって同じ数字のヤツを2枚にして全部出して、一緒のヤツがなくなったら最後に女神様と、何かもう1枚を組にして出すんだよ」


「わかりました」


 ミニャとアメリアは、賢者の補助を借りつつ小さな手でトランプを広げて、ペアを出していく。ソランも初めて触る物なので多少手間取っているが、自然と扇形に広げる形に落ち着いた様子。


「それでは、女神様と……これです!」


 アメリアは女神カードを表に、もう1枚を慎重に裏にして出す。


 こうして始まったゲーム。


「うーん、これ! あっ、揃った!」


「じゃあ私はこれです! わわっ、私も揃いました!」


 数字が揃ったら嬉しそうにカードを捨てるのだが、アメリアは特定のカードを引くと「あっ」と口にし、逆にそのカードが手札から引かれるとニコーッとした。


「ミニャ、女神様の数字わかっちゃったもんね」


「えーっ、凄いです! なんでわかったんですか!?」


「んふー!」


「あははっ、アメリアは顔に出し過ぎだよ」


「えーっ、ホントですか、ソランお兄様!? クレイお兄様はもうわかりましたか?」


「うーん、俺はまだだな。俺の隣はソラン兄さんだし」


 そんなふうに、子供たちはどれが女神の数字なのかドキドキしながら楽しんだ。


 しばらく遊んでカードにも慣れたので、次は本命のゲームをすることにした。

 その名も大逆転! ……という名の大富豪あるいは大貧民である。


 名前が変更されたのは、アメリアたちと一緒にやるためだ。

 大富豪が転落して大貧民になる、あるいはそれとは逆の現象が起こるのは、貴族社会においてあまりよろしくない構図だろうということで、念のために名称を変えておいた。また、数字の大小を反転させる革命という役名も縁起が悪いので、ゲーム名そのままに『大逆転』とした。


 大富豪は、1970年代に日本の大学生の間で流行ったゲームが全国に伝播したと言われている。ネットがない時代に伝播したのでローカルルールが非常に多く、スートが同じなら最強カードAの次に最弱カード2を出せるというローカルルールがあったために、今では全国的に中途半端な数である2が最強のカードになったという説がある。


 これをパトラシアにも伝える必要はないので、シンプルに1を最弱にして13を最高。そして、女神カードは最強であり、全てのカードの代替にもできるものとした。

 戦術性も出すために、13が出された際にスートが同じなら1を出せることにした。


 1位が1位以外を取ると強制的にビリとなる都落ちと、順位によるカード交換はなしにしている。非常に盛り上がるルールだが、ミニャとアメリアはまだ小さいので、1位をとってもすぐに負けそうだし、カード交換があると2度と這い上がれなさそうだからだ。


 その代わりに1位は4点、2位は2点、3位は1点、4位は0点のポイント制にして、何セットかプレイして合計点を競うゲーム性にした。さらに、大逆転の名の通り、最後のゲームのみポイントが2倍。1位に8点、4位は倍にしても0点ということもあって、この最終ゲームに波乱が生まれる設計となっている。


「これで僕は上がりです」


「にゃー、ソラン君強い! ミニャ、パス!」


「お兄様、とっても早いです! 私もパスです」


「俺もパスだな」


「今回はカードが強かったですね」


「いいなー!」


『ネコ太:誰も出せないから次はミニャちゃんからだね』


 賢者たちはスコアボードに点数を加えつつ、ゲームの進行をしている。


「んっ、じゃあミニャは3!」


「それでは私は4です!」


「じゃあ俺は8流しをして、5を3枚」


「むむむっ! ミニャ、パス!」


「わわわっ、それなら私は7を3枚です!」


「にゃーっ、アメリアちゃんすごーっ!」


「ええっ、アメリア出せるのかい? 失敗したな……パスだ」


 などと盛り上がっていると、アマゾネス系エルフのメリアランがやってきた。


「ミニャ様、何をやっているんだい?」


「大逆転! メリアランさんもやる?」


「ほう、威勢の良い名前のゲームだね。暇だし交ぜてもらおうかな」


「じゃあちょっと待っててね」


 残りのゲームを見学してルールを覚えてもらい、メリアランが参戦した。


「にゃー! メリアランさん、つよーい!」


「本当に強いですぅ!」


「あっはっはっ、まあやり方さえ覚えればね」


 凄腕冒険者であるメリアランは強かった。

 このゲームの初級のコツである場に出たカードを覚えることはすぐに理解してしまい、冒険者としての能力である観察眼も極めて高いので、相手の表情でカードの良し悪しをすぐに見抜いて押し引きしている。


 そして、子供たちに褒められるメリアランを見て、大人たちがアップを始めた。大人たちも暇だった。

 というのも、船に乗り慣れてない人は本を読んだりして暇をつぶすと酔うのだ。だから、彼らは食堂で談笑していたのである。


 しかし、子供たちが遊んでいるゲームに大人が大勢入るのはよろしくない。そこで、もうひとつ作っておいたトランプを大人組に渡した。こうなることがわかっていたから、賢者たちはトランプをいくつか作っておいたのだ。賢者は抜かりがないのである!


 これは良い暇つぶしができたとばかりに、大人たちはプレイし始めた。これを機会に、強すぎるメリアランもそちらのテーブルへ移動。

 最初のゲームは感触を覚えるために和気藹々とやっていたが、あっという間にコツを覚え、次のゲームからは本気の勝負になった。


【22、名無し:大人組がガチなんだが】


【23、名無し:為政者と凄腕冒険者だからな。どちらも能力がバカ高いから読み合いが尋常じゃない】


【24、名無し:もうすでに俺が入っても負ける自信しかないんだけど】


【25、名無し:場に出たカードは当たり前に覚えてるし、いろいろなブラフも使ってるな】


【26、名無し:アマーリエさんがふわふわお母さんじゃなかった……】


【27、名無し:何十人も従えて炊き出しの指揮を執る人だぞ。ふわふわお母さんだけのはずないだろ】


【28、名無し:賭け事が始まらなければいいが……】


【29、名無し:きっと、そのうちトランプ税を取るようになるんだぜ】


【30、名無し:こっちは怖いからミニャちゃんのテーブル見よっと!】


【31、名無し:うぉおおお、ミニャちゃんに大逆転が入ってる!】


【32、名無し:お尻ぴょん可愛い!】


【33、名無し:これは扱いきれるかなぁwww】


 大人のテーブルは全然可愛くないので、賢者たちはミニャたちのキャッキャとしたトランプ大会を楽しんだ。


読んでくださりありがとうございます。


ブクマ、評価、感想、大変励みになっています。

誤字報告も助かっています、ありがとうございます。


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― 新着の感想 ―
本当に賢者達は悲しいエピソードに事欠かないなあ
麻雀(パトラシアver)良い石をパイに使うのがステータス♪とか来ないかなー 生産魔法部隊が火を吹くわぁ 
ポーカーは教えるべきか否か!?
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