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少女達が銃で戦う世界で男の娘は剣を振るう  作者: 鳥抹茶
第3章 Memory -真愛-
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第16話 Savior -弔愛-

「うわぁ、すっごーい!」


 愛は弔の父親の勤務先である研究所へ入ると施設の大きさに驚きを隠せなかった。

 親は同伴ではなく愛の両親曰く、二人でラブラブデートを楽しんでね、とのこと。


「行こう、とりあえずオレの父さんに会いに行こう。」

「弔くんのパパってどこにいるのー?」

「…あ、確かに…」

「炉級さんなら、第2研究室にいますよ」


 偶然弔達とすれ違った一人の研究員が弔の父親の現在の居場所を弔達に教えた。弔は通りかかった研究員に礼を言い、受付横にあったパンフレットに載っている案内図を見ながら、その第2研究室とやらへと向かった。


「愛はここで一旦待ってて」

「なんで?私も行きたい!」

「あー…えっと…ほら、急に知らない女の子が居たらびっくりするかもしれないから…さ」

「うーん?わかった!私ここで待ってるね!」


 愛を第2研究室の前で待たせ、弔は第2研究室へと入り、自身の父親に声を掛けた…が。


「父さーん、来たよー…って…え?」

「と、弔…っ!?」


 父親は同僚らしき女性と唇を重ね合わせていた。もちろん、相手は弔の母親ではなく、弔にとって知らない女性だった。

 俗に言うこれは、不倫という奴だろうか。


「なに…してんの」

「いや…これは…その…」

「タイミング悪いねーホント。にしてもアンタの子供にこんなトコロ見られたんなら、結構マズくないか?」

「と、弔っ!妻には内緒にするんだぞ!?」

「うん、別に良いよ。」

「随分物分かりが良い坊やだねぇ。」

 

 弔にとって、もう父親が不倫していようと、もうどうでも良かった。弔には目的があった。


「そんな事より父さん、例のあれは?」

「ん?あれって何だ弔。」

「ほら、意識を入れ替えるって奴。」

「あー、あれか。あれなら第5研究室にあるぞ。まだ一応未完成だから近付いたりカプセルの中に入ったりしたらダメだからな」

「うん。じゃあ行ってくるね。」


 そう言うと弔は第2研究室から退出した。

 そして、外で待っていた愛を連れ、意識を入れ替える装置のある第5研究室へと向かった。

 

「坊や、行ったかな?」

「もう大丈夫だろう…よりによって今日来るとは…」

「ま、行ったんなら良いじゃないか。さて、続きをしようじゃないか。」

「お、おう…わかったよ、飛香…。」


 自身の息子が完全に居なくなったことを確認し、父親と響飛香は子供が来たことにより、自身達が不倫をしているというスリルを感じながらもキスの続きをした。


 弔達は第5研究室に辿り着き、中へと入っていった。

 そこには、人が一人入れる程の大きさをしたカプセルが2つ付いた巨大な装置がそこにはあった。


「なにこれー?」

「わ、わからない。」


 弔は嘘をついた。本当はどう言った装置なのかわかっていた。

 全ては弔の計画通りだった。


「弔くん、何で笑ってるの?」

「え?そ、そんなの決まってるじゃないか。こんな面白そうな装置が目の前にあるなんて、ワクワクするに決まってるじゃないか!」


 弔は無意識に笑っていたらしい。

 変に悟られないように、笑っている理由を“この後の事を考えたら嬉しくて堪らない”ではなく“見た事のない面白そうな装置が目の前にあってワクワクする”という笑みだと嘘をついた。

 弔は装置へと近付き、操作方法を確認する。


「へぇ、男の子ってよくわからないなー。」

「な、何かこれ入れそうじゃないか?愛、ちょっと入ってみようよ、オレはあっちのカプセルに入るからー」


 そう言い、弔はこの装置が数秒後に起動するように設定する。

 そして、愛をカプセル内に入らせようとする。


「と、弔くん…何か変だよ…?」

「いいからカプセルに…」

「い、嫌…!」

「くっ…このっ…!!」

「ちょっ、痛い痛い!やめてよ弔くんっ!」


 弔は数秒後にこの装置が起動するように設定してしまっているので、一刻も早く愛にはカプセルに入ってもらわないと困る。弔はその焦りからか、愛を強引にカプセル内に入らせ、カプセルの鍵を閉める。


「…これでいい…これで…」

「弔くんっ!開けてよ!!弔くん!!!」

「大丈夫だよ、終わったらすぐに出られるよ…」


 そう言い、弔は逆サイドのカプセル内へと入る。そして、装置が起動する。



 いよいよだ。

 いよいよなんだ。

 これでオレは愛される人になれる。


 愛が羨ましかった。

 オレと違って、家族からも愛されて。

 オレと違って、毎日が楽しそうで。

 

 愛と出会うまで、別に愛されたいとも毎日楽しくいたいとも思わなかった。

 でも愛と出会って、愛の家族と出会って、愛されている者を知って、毎日明るくて、温かくて楽しい環境を知ってしまって。

 オレも愛と同じように、愛されたい。

 オレも愛と同じように、毎日楽しくいたい。

 そんな時に父親から身体を入れ替える装置を作ってるだなんて話を聞いたら。


 …愛と身体を入れ替えて、オレが愛になって愛されるしかないじゃないか。

 それ以降、その事しか考えられなかった。

 だから、例え父親の不倫が発覚してもどうでも良かった。

 だって、もうオレは弔では無くなるからだ。

 入れ替わった後、オレはまだしも、愛はどうしようか、とも考えたが、この装置はまだ未完成らしい。

 片方が事故で死ねばそれでいい。

 仮にオレが死んでも、誰にも咎められない。

 愛が死ねば、好都合だ。


 意識が遠くなっていく。

 意識の分離が始まったのだろう。

 

 …さようなら、オレ

 …これからよろしく、オレ


「ははは…あはははははははははははは!!!!」




 そんな時、


「うぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁあ!!!」

「聖刃!起きろ!ゼロツー…いや、愛のバイタルが不安定になった!これ以上のダイブは危険だ!」


 その声とともに聖刃は起き上がる。

 愛の方を見やると、愛はベッドの上で頭に装置を付けたまま暴れ回っている。


「あ、愛!落ち着け!」

「いやぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ…あっ…」


 愛は気を失い、動かなくなった。

 死んでしまったのかと勘違いした聖刃は駆け寄るが、真希から死んでいないと知らされ、ホッと胸を撫で下ろした。


「…さて、聖刃。原因は一体何だったんだ?」

「…愛の脳は、そもそも愛の物じゃなかった。」

「はぁ?まさかとは思うが、脳を入れ替えられたとでも言うまいな?」

「あぁ…そう言っても過言じゃねえ。」


 にわかには信じ難い、と真希は言うが、聖刃の表情があまりにも冗談を言っているようではなかったので、信じざるを得なかった。

 その後聖刃は、愛の脳にあった、弔という少年の記憶を話した。


「なるほど…意識を入れ替える…か。」

「あぁ…まさか愛のオレ口調は弔って奴の名残だったとは…」

「口調どうこうは知らんが…その弔とやらの父親はとんだマッドサイエンティストだな。」

「あぁ…本当に何で意識を入れ替える装置なんてもんを作ってたんだ…てか、父親の不倫相手がまさかリーダーだったとは…!」

「…リーダー?」

「あぁ、さっき話した弔の父親の不倫相手、響飛香ってのは、我らがGGG.sのリーダーなんだ。」

「GGG.s…だと!?聖刃まさかGGG.sにいたのか…!?」


 先程まで冷静を保っていた真希の顔がGGG.sという単語を聞いた途端、突然豹変した。


「あ、あぁ…そうだけど…」

「GGG.sは…世界をこんなんにした…悪の組織だよ…!」

「…え?」

「…そうか、君は今外の世界がどうなっているか知らないのか。」


 そう言うと、真希は常設されているテレビを付け、外を映す監視カメラの映像を見せた。

 

「なっ…!?」


 そこに映っていた外の世界は、聖刃が2年半の引きこもり生活から久々に家を出た時よりも酷く荒廃

しており、ゾンビだらけだった。

 しかしそこへゾンビを倒す為に銃を構える少女達の姿があった。


「あれ、ゾンビと戦ってるだけ…?」

「そう見えるだろう。でも、実際は違う。あの銃の弾は対ゾンビ用のワクチンが埋め込まれている…が、実際は人を夜にゾンビにさせるモノだ。」

「な…嘘だろ…!?」


 あのワクチンが実は人をゾンビにさせる物なのだとしたら、あの時に聖刃が投げていたワクチンは、人をゾンビにさせていたと言う事だと言うのだろうか。


「…君も騙されていたようだね、GGG.sに。」

「お…おい…あのワクチンが人をゾンビにさせるもんだとしたら…俺は…俺が…愛を…!」


 何故愛はゾンビと化していったのか今まで謎だったが、まさかあのワクチンのせいでゾンビ化が進んでいたとは。

 しかし、それは同時に聖刃自身が愛をゾンビにさせてしまったと言う事だ。

 しかし、ならば何故愛は夜にゾンビと化していなかったのだろうか?

 あくまで予想だが、まだワクチンが未完成だったが、ゾンビが湧くたびに愛はあれを直に受けていたのでゾンビ化が蓄積されていったのだろうか?


「…でも、何でそんな事がわかるんだよ…あの弾にはワクチンが入ってて、そのワクチンが人をゾンビにさせるもんだなんて…」

「…GGG.sの隊員を一人拉致し、彼女らの銃を研究させてもらったからね。」

「その隊員は?」

「…殺したが?」

「嘘だな、GGG.sの隊員はその銃のお陰で死なないんだよ」

「あぁ、だから君が持っていた…この刀…まぁ今は扱いやすくする為に改造して剣にしたけど、それで斬って殺したよ。君の持っていたコレには、不死身である彼女らを殺す力があるようだね」


 そう言うと懐からかつて聖刃が持っていた刀であった、やたら見た目がカッコよくなっている剣を取り出し、聖刃に見せつけた。


「…何で殺した」

「いや、彼女らのせいで世界がこんなんになっているんだぞ?我々からしたらGGG.sは悪の組織だ、悪の組織の一人なら、殺すだろう、普通。騙されている人なら殺さない?そんなに世の中は甘くはないよ。」


 次の瞬間、真希は聖刃に拳銃を向けた。突然拳銃を向けられ、聖刃は動揺した。


「な…何でだよ…何で俺に!?」

「…君も元GGG.sの人間だ、今さっきも言っただろう、悪の組織の隊員でも騙されている人だったら殺さないは甘さだと。」


 真希のその言葉は、とても酷く、冷たかった。

 真希はその鋭い目つきで聖刃を睨みつける。


「でも俺は…!」

「言い訳など聞かないぞ。いくら騙されていたとはいえ、君が人をゾンビ化させたと言っても過言ではないんだぞ…!」

「そうだ…俺が…俺が人を…愛をゾンビにさせてしまったと言っても…何も間違ってない…」

「認めたら許してもらえるとでも?」

「…そんな風に思ってねえ…よっ!!」


 隙をついたつもりだったが、銃撃を左腕に喰らったが、同時に真希が所持していた剣を奪い返した。


「ほう、銃に対して剣で対抗すると?」

「本当は戦いたくねえけど…俺だってまだ死にたくねえんだよ…!」


 聖刃は奪い返した剣を真希に向けた。

 そして真希も、改めて聖刃に拳銃を向けた。


「流石、プロゲーマーのセイバーだな。その姿勢はまるで君のプレイスタイルまんまだよ。」

「…何を言ってんだ…?」

「例え絶望的な状況でも、絶対に負けるような状況でも、途中で諦めずに立ち向かう…まさに今のままじゃないか。」

「…単純にゲームで諦めるのが嫌なだけだ…それに、俺は負けると思ってねえから…。」


 現実リアルでは何度も挫折したが、ゲームでは例えコンティニュー出来るとしても絶対に最後まで諦めたくはない。

 そんな想いが、聖刃のプレイスタイルとなり、様々な者を魅了した。

 真希も、そんな魅了された者の一人だった。


「…強がりだな。」

「…事実だからな、でもそのお陰でゲームで優勝出来たからな…」

「現実とゲームは違うもんだよ、セイバー」

「…んなもん、お前よりもわかってるよ…俺は、何度も何度も挫折して、希望が見えても結局絶望に突き落とされて、今までの人生はそんなんばっかだった…」



 メンジが遭遇し、それを姉が助けてくれたが、その後に姉はメドゥーサに石化されてしまった。

 仲間がいると言う事を改めて気付かされたが、全員石化されてしまった。

 女神姉妹と共闘する事になったが、作戦とはいえ女神姉妹がメドゥーサに喰われ、ゴルゴーンへと進化させてしまって、追加でメンジも大量召喚された。


 …でも、諦めなかった。

 現実リアルだったけど。

 ゲームじゃなかったけど、初めて現実リアルで最後まで諦めなかった。

 その結果、みんなが石化から解放され、助けに来てくれた。

 そして、ゴルゴーンを倒す事が出来た。



「でも、ゲームと同じく最後まで諦めなかった!そしたら、勝てたんだよ…!だから今も諦めない!!生きる事を!勝つ事を!絶対に!」

「…そうか。じゃあ行きなよ」


 そう言うと真希は拳銃を下ろして、後ろを向いた。


「え?」

「行きなよ、君の“最後まで諦めない”を、見せてくれよ、あの時の大会のように」

「…愛は」


 聖刃がそう言った直後、真希は愛に拳銃を向けた。


「彼女は人質だ。殺されたくなければ、その最後まで諦めない精神でこの世界を救ってみせろ、セイバー」

「この世界をって…どうすれば」

「簡単さ、GGG.sとかいう悪の組織の親玉を倒すんだよ、安心しろ、セイバーがこの世界救う頃には彼女を元に戻しておく」

「…約束だからな。」


 そう言うと聖刃は剣を下ろし、その場から去っていった。

 撃たれた左手を押さえながら、施設から出る。


 久々に浴びる日光を眩しく感じながら、世界を救う為に新たな一歩を踏み出した。


(第3章、完)








 ここからは弔も、聖刃も知らないその後の話。


 突如、第5研究室から大きな爆発音が聞こえてきた。


「な、何だ!?まさか弔のやつ!!」


 弔の父親と飛香は第2研究室から急いで爆発音のした第5研究室へと向かった。

 道中、同じく爆発音を聞いた研究員達が消化器を持って第5研究室へと向かっていた。

 第5研究室の扉を開けると、そこは火の海と化していた。そして、そこには弔と、弔と同い年くらいの女の子が倒れていた。


「弔ぁ!おい!しっかりしろ!!」


 弔の父親は弔へと駆け寄るが、抱きかかえた時に気付いてしまったのだ。

 …ああ、死んでいる。


 わかっていたのだ。

 自分が息子、弔を幸せにしてやれていない事も。

 今の妻に虐待されている事も。

 だからすぐに離婚をして、飛香と再婚して幸せに暮らそうと思っていた。

 でも妻は離婚届を書いてくれなかった。

 研究室に誘ったのも、本当は弔に飛香の事、今の妻の事、全て話そうと思っていたのだ。


「うぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!」


 弔の父親は泣いた。

 自身の無力さに、愚かさに、情けなさに。

 

「愛ちゃん!愛ちゃん!!」

「僕達はあの女の子の両親です!通してください!」

「危ないから下がっていてください!」


 女の子の両親だろうか。

 とても不安そうな顔で倒れている女の子の方を見つめていた。

 母親に至っては泣いていた。

 弔の父親は弔と女の子を抱えて火を避けながら火の海となっている第5研究室から脱出した。


「ありがとうございます…ありがとうございます…!!」

「貴方が…弔くんのお父さんですか」

「弔を知っているんですか!?」


 女の子の両親から弔の事をたくさん聞いた。

 女の子の名前は愛、というらしい。

 愛は弔の友達だったらしい。

 第2研究室へ入ってきた時は一人だったからてっきり一人で来ているものだと思っていた。

 その後警察が来て、弔の父親は逮捕されてしまった。

 しかし、証拠不十分だったのと、愛の両親が訴えなかった事もあり、数日後に釈放された。

 

 あれから愛ちゃんは記憶喪失となってしまい、身内の事を全く思い出せないのだそうだ。

 釈放された数日後に弔の葬式が開かれた。

 葬式には愛ちゃんの両親も出席した。


 葬式以来、父親は狂ってしまった。

 それから数年間、死んだ者を蘇らせる物を作り出そうとして、後に死体蘇生生命体、ブレートを発明し、研究室にて寄生され、ブレートはそこから寄生連鎖をし、響飛香により研究所内で起こったブレートによるパンデミックに終止符を打たれた。

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