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【第六夜】 ヒドゥンウッドの迷子たち(1)

いろんな夜を通り抜けて、ふたりの迷子は深い森に差し掛かりました。

けれどまだ夜は明ける気配がありません。

この森と同じく、深いふかい夜が続きます。

 ぼくらはずっと歩いてきた。

 ひとりきりで。ふたり連れで。

 遠いとおい道行くぼくらを、影法師だけがついてくる。

 長いながい旅行くぼくらを、お日さまとお月さまが交互に照らしていく。光を投げかけながら問いかける。

 辛くはないかい?

 辛くはないよ。

 どこまでいくのだい?

 ふたりでいけるところまで。

 ぼくはぼくと声をそろえる。

 ぼくらがぼくらでいられるように。

 でも。

 つかれたね、とぼく。

 つかれたよ、とぼく。

 遠いとおいみちのりは、白い一本のリボンになって、ぼくらの前に、ぼくらの後ろに、どこまでもどこまでも繋がっている。

 この道はどこに続いているのかしら。

 この道はどこまで続いているのかしら。

 暗いくらい夜の道、深いふかい森の奥は、くろいさかなに呑まれたようで。


 あ、あかり。


 外灯がひとつ寂しく点っていた。

 その灯の下で、派手なチョッキのおにいさんが立っていた。

 こんばんは。チョッキのおにいさんが先に話しかけてきた。

 こんばんは。ぼくらもあたまを下げてあいさつした。

 おにいさんはほそい目でぼくらを見下ろすと、ちょっと首をかしげてきいてきた。

「坊ちゃんはどこから来たのだい? これからどこへいくのだい?」

 ぼくらはお日さまに答えたように、お月さまに教えたように、チョッキのおにいさんに返事した。

 ぼくらは遠くから歩いてきたよ。ぼくらは遠くまで歩いていくよ。

 おにいさんは驚いたようにほそい目をいっぱいに見開いた。

「おやおや、これは失敬。ひさかたぶりのお客さまが、こんなにかわいい坊ちゃん方とは」

 おにいさんはチョッキのポケットから鎖のついた懐中時計をとりだしてちらりと見た。

「あぁほんとうだ、ふたりの迷子の到着予定になっている」

 そうつぶやいてひとりうなずいていたけれど、あの文字盤にそんなことが書いてあったのかしら?

 ぼくらが見上げていると、おにいさんは白てぶくろの指で森のおくを指さした。

「さぁさ、坊ちゃん方。あっちで待っているひとがいる。早くお行き」

 待っているひとにこころあたりはなかったけれど、ぼくらはおにいさんにお礼を言ってまた歩きだした。

 おにいさんは、たったひとつの外灯のしたでずっと見送ってくれた。

 ぼくらは道を進んでいった。

 森はどんどんふかくなる。

 道はどんどんほそくなる。

 空をあおいで見ても、お月さまさえかくれたままだ。

 ぼくはちょっぴり心細くなった。

 ぼくもちょっぴり泣きそうになった。

 どうしよう、とぼく。

 どうしよう、とぼく。

 ぼくらは道をまちがえたのかしら。

 派手なチョッキのおにいさんが言ったように、まいごになってしまったのかしら。

 でも。

 ぼくらには決まった道も行き先も、なんにもなかったはずなのに。

 ひきかえして道を聞きなおそう、そう思って振り返ったのに。そこには道なんか残っていなかった。

泣きそうになって立ち止まったぼくらは、ふっと耳をそばだてた。


 いま、なにか。

 遠くとおく、きれぎれに。聞こえてくるのはなにかしら。

 遠くうすく、ほの明るく。見えてくるのはなにかしら。

 それはまるで。


深い森に街燈がひとつ。

…ナルニアの森みたいですが、出会った相手はフォウンではありません。

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