表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
帝国を追放された第四皇子の俺は祖国を滅ぼし、全てに復讐ざまあします  作者: しぇりおん
第一章 帝国追放編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

45/52

第45話 国境門にて

 

 ハシムとソフィアを乗せた馬車列は、アンダルシア帝国とレークランド王国の国境門を目指して進んでいた。

 先頭を進むアンジェとスレイの背後に、ハシムとソフィアを乗せた馬車が続く。

 そこからさらに後ろには、帝国側の従者を乗せた馬車があった。

 屋根にフウカを乗せたその馬車の中には、ライラ、カタリナ、ラル、シシリーの四人が同乗していた。



「いやぁ……。三月に訪れてからもう半年かぁ……」


 ラルの対面に座るカタリナが外を見ながらそうぼやくと、「色々ありましたからね……」とラルが答えた。


「事件に次ぐ事件に、果ては戦争ですからね……」


 ラルの隣に座るシシリーがそう言って嘆く。そんな中、ライラはカタリナの隣で静かに話を聞いていた。


「まぁでも……、しばらくは政争から離れられそうで、一安心かな?」


 そう言ったカタリナに、「むしろ逆では?」とラルがツッコむ。


「帝国ほど、政争に塗れた国は無いと思いますが……?」


「うっ……、忘れかけてた……。たしかにそうだったわ……」


 そう嘆いて額を抱えるカタリナに、シシリーが言葉を掛けた。


「でも、カタリナさんに政争はあまり関係ないのでは?」


「ぐっ……、それはそうかもしれないけど……」


 言い淀むカタリナに、「たしかに、帝城の司書に政治は無縁ですね」とラルがトドメを刺す。


「ちょっと、そんな好き勝手に言わないでよ……。これでも一応、司書見習いの時から政治は得意分野なんだから!」


 カタリナがそう言って声を張り上げると、「ですがその()()が、貴女の首を締め掛けた事をお忘れですか?」とライラが吐き捨てる。


「うっ……。その事は言わないでよ……、ライラ……」


「あれは貴女の自業自得です。反帝国主義などと……」


 ライラがそう言い掛けたところで、「だからやめてって!黒歴史なんだから!」と、カタリナは慌てた様子で取り繕った。


「なんとなく聞いた事はありましたけど……、カタリナさんって……」


 シシリーが隣のラルに小声でそう尋ねると、「はい……、なんというか……」とラルが言い淀む。

 その後、ラルはさらに小声で返した。


「処刑されかける程の、過激な主張をしたそうです……」


「ちょっと!そこ!小声で話さない!」


 カタリナはシシリーたちのやり取りを見て、思わずそうツッコむのだった。


「とにかく、此度の外遊で貴女の役割はありません。帝都で存分に本に塗れると良いでしょう……」


 ライラがそう言ってカタリナを突き放すと、「そんな……、わたしにも出来る事の一つや二つ……」と言い掛ける。

 しかしライラはそれを遮った。


「ありません」


 とだけ返して黙らせる。

 辛辣な対応をするライラに、ラルが尋ねた。


「本当に何も無いんですか?」


「ありません。そしてこれは、殿下からの命令です。カタリナ、貴女は帝都にて待機です」


「そしてラル、貴方も補佐として待機するようにと……、殿下が仰せです」


 ライラの話を聞いたシシリーは、「殿下の名指し……」と呟く。


「殿下の名指しなら、仕方ないですよね……?」


 ラルはそう言ってカタリナの顔色を伺う。するとカタリナは大きく息を吐いた。


「わかったよ……。それが()()……、なんでしょ?」


 諦めた様子のカタリナに、「はい、殿下の命令は絶対です」とライラが返す。

 馬車内でのそんなやり取りを知ってか知らずか、フウカは欠伸をしながら寝転ぶのだった。



 それから数時間経った頃、一団は国境門へと到着した。簡易的な手続きを終えたハシム一行は、帝国側へと足を踏み入れる。

 そしてしばらく馬車を進めたハシムの前に、帝国軍が立ちふさがった。


「うそでしょ……」


 先頭にいたアンジェがそう声を漏らし、隣のスレイは信じられないものを見たように驚く。

 その後、アンジェは後方に馬を走らせ、ハシムの馬車に横付けした。


「殿下……、その……。帝国から迎えの者が来ております……」


 神妙な様子でそう話すアンジェに、「その様子……、また兄上か?」とハシムは問う。


「いえ……、なんと言いますか……。近くはあります……」


 歯切れの悪い返答に、「分かった……、会おう」と言ったハシムは馬車を出た。


「殿下?」


 ソフィアが心配そうな様子を見せると、「大丈夫です、ご心配なく」とハシムは言うのだった。



 その後、馬車を降りたハシムはアンジェを伴い、列の先頭へと向かう。

 そして列の先頭へとたどり着いたハシムは、馬に乗るある人物を見つけた。


「あ、あなたは……」


 その者を見たハシムは思わず声を漏らす。その者はハシムを見ると、馬を降りてハシムの前に跪いた。


「お待ちしておりました、ハシム皇子殿下」


 そう言った大男は顔を上げて、その()()()を見せると続けて言う。


「ジダン・()()()()()、只今参上仕りました」


「ジダン教官……。いや……、第三軍団長自ら迎えに来たのか……?」


 跪くジダンを名乗る大男にハシムが思わずそう言うと、ジダンは応じた。


「フッ……、教官か……。そう呼びかけるという事は、士官学校時代の教訓を、今でも覚えているという事ですな」


 そう言ったジダンは上機嫌な様子で、その長身を見せつけるかのように立ち上がる。

 すると、アンジェは小声でボヤいた。


「こっちの気も知らないで……」


 そう言ってハシムの後ろに隠れ続ける。


「ふふ、久しいなアンジェ。今でも槍の稽古は怠っていないだろうな?」


「ぐっ……、当然ですよ……。あなたには血反吐吐くほど鍛えられましたから……」


 アンジェのその答えに、「はは、そうかそうか」と、上機嫌な様子をジダンが見せる。


「スレイも久しいな、殿下の近衛への配属を聞いた時、流石に驚いたが……。だがその様子だと、順調な様だな?」


「は、はい!教官の教えの賜物です!」


 緊張した様子のスレイが声を張り上げて敬礼すると、ジダンもニヤリと笑った。


「しかしなぜ……、ジダン団長自ら此処へ……?」


「ふふ、簡単な話だ。送迎を任されたのだ、皇帝陛下の命でな」


 ジダンの話を聞いたハシムは、「父上自ら……」と呟く。


「まぁ……、それだけ重要視しているということだ。レークランドとの同盟をな……」


「ですが……、護衛なら我が近衛だけでも……」


 ハシムがジダンにそう尋ねると、「ああ、その辺りは当然お前達に任せる。我らはあくまで、帝都までの護衛だ」と返される。


「お前も知っているだろう?我が第三軍団は帝都への駐屯を禁じられている。第一と第二の役割を奪わない為にな」

「おぬし達が帝都内に入れば、そこからは他の軍団任せになる。そして、これが式典の計画書だ」


 そう言ったジダンは、側に立つ部下から書類を受け取り、ハシムに差し出した。


「ジダン、これは?」


「帝都での歓迎式典の段取りとなります。ちゃんと覚えておくようにと、()()()()殿()()()()()言伝です」


 その言葉に動揺したハシムは、「ま、まさか……、この計画書……。兄上が……?」と、思わず聞き返す。


「はい、クラーク殿下の創案です。そして、蔑ろにしない様に……、と皇帝陛下からのお言葉です」


 しばらく沈黙したハシムは、「なんという事だ……、もっと静かな帰郷と思ったが……」と嘆く。


「はは、良いではありませんか。国賓の歓迎なのですから、多少は派手でないと」


 ジダンはそう言って上機嫌に笑う。頭を抱えるハシムに、背後から声が掛かった。



「で、殿下、その御方は……?」


 ソフィアはキュリーを伴い、背後からそう声を掛けた。


「ソフィア様、この者は……」


 ハシムがそう言い掛ける前に、大きく一歩前に出たジダンが胸に手を当てて、頭を下げる。


「アンダルシア帝国軍第三軍団を率いている、ジダン・ヒシャームと申します。どうぞお見知りおきを……」


 呆気に取られたソフィアはハッとすると、挨拶を返した。


「レークランド王国の第三王女、ソフィアと申します……。よ、よろしくお願いします……、ジダン団長」


 そう言って差し出されたか細い手を、ジダンの無骨な手で握り返す。

 握手を終えて背を伸ばしたジダンを見たソフィアは、「帝国の皆様は誰もがあの様に、背が高いのですか?」と、思わず聞いてしまう。


「い、いえ……。一部の者だけで、大した違いは無いかと……」


 そうハシムが言うと、「それに、この者は血筋が特別ですから……」と、続けて言う。


「たしかに褐色の……」


 ソフィアがそう言ってジダンを改めて見ると、ハシムと見比べるように視線を動かした。


「はは、お察しの通り、わたしもハシム殿下と同じ血族となります」


 視線を見て察したジダンがそう言うと、「そ、そうなのですね……」とソフィアが返す。


「ハシム殿下は、我が姉の子……。つまり殿下と自分は、甥と叔父という関係です」


「そうなのですね……。殿下のご実家に関して、あまり聞いていなかったもので……」


「はは、そうでしたか。どうやら殿下はご実家の事が、()()お嫌いのようで……」


 ジダンがそう皮肉めいた言葉を発すると、ハシムは「フッ」と笑い、口を開いた。


「ライラを監視役の様に送り込む者達など、好きになれるわけあるまい?そうだろう、ジダン?」


 怒気を若干含んだ声色でそう話すハシムに、「はは, それは耳の痛い話ですな」とジダンは半笑いで答える。

 複雑な関係を匂わせるハシムの姿に、ソフィアは一抹の不安を覚えるのだった。



「さて……、これ以上の長話は不要でしょう……。そろそろ、参りましょうか、殿下?」


 そう言ったジダンに、「ライラに挨拶せぬのか?」とハシムが問う。


「はは、それこそ不要というもの。これ以上殿下の気持ちを逆なでする程、愚かではありませぬ故……」


 ジダンはそう言って、わざとらしく一礼を返すと馬に乗った。

 睨みつけるような視線を送ったハシムは、背を向けて馬車の元へと戻る。


「殿下……、その……」


 何か言い掛けるソフィアに、「申し訳ありません、ソフィア様」と返すと、ハシムは続けて言った。


「我が実家の事に関して、これ以上の詮責は無用です。これ以上先は、わたくしの在り方そのものに関わる事柄」

「もし知りたいというのであれば、一生破棄できぬ()()()()を立てる必要があります」

「申し訳ありませんが、ここは婚姻止まりにしておくのが無難でしょう……」


 ハシムにそう言われ一線を引かれてしまったソフィアは、それ以上何も言えなかった。


 心配そうに見つめるライラを横目に、ハシムはソフィアを先に馬車へ入れた後、改めて列の先頭へと振り向く。

 ハシムはその視線の先に映るジダンの姿を見て、いずれ越えるべき壁だと認識していた。

 そしてハシムはジダンという壁を、いずれ壊さなければいけない事を()()()()()()()()


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ