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第4話:正しさの余白

アルは独りで、いつものベンチに腰掛けていた。

ふと、先日の青年を思い出す。


「大丈夫、だったよな……」

そう呟くと、頭をガシガシ掻いて立ち上がる。

軽く背伸びをすると、暗くなった港を後にした。


ネオンの街に溶け込みながら、アルは取り留めなく歩き続ける。

ざわめく街がアルを人々に紛れ込ませる。

 

薄暗い場所に垣間見える揺らぎに、人々は気づかず共存していた。


ふと、目の端に何かを捉える。

小悪魔にも見えたが、心がざわめく。

アルはそこへ足を向ける。


そこには、先日の青年がしゃがみ込んでいた。

「ちっ、またかよ」

アルは頭をガシガシ掻きながら青年へ近づいた。


しかし、その瞬間、何かが心をざわりと撫でる。

「ミツ……ケた……」


その声に、アルはぴたりと足を止める。

「こいつ!」


立ち上がった青年の目は精気がなく、傀儡のように動いていた。

「中に入ってやがる」

アルはじりじりと後退る。


「ミツ、ケタ……ニオイ……オマ、エ……」

中の者はアルに一気に襲ってくる。


「……くっ!」

アルは瞬時に身をかわす。

しかし、傀儡となった青年に反撃できない。

アルは上げた手を、ぴたりと止めた。


しかし傀儡の青年は、立て続けにかぎ爪のようなもので襲ってくる。


騒ぎに気づいたのか、通りから一人の男が近づいてくる。

傀儡の青年は、近づく男に気づく。

ニヤリと笑い、男に爪を振り上げる。


「ひぃっ!」

男は腰を抜かしたまま気を失った。

爪が男をえぐる瞬間、アルはとっさに傀儡の青年に手を振り上げた。


「ぎゃっ!」

傀儡の青年の服は大きく裂け、みるみる血が滲んでゆく。


「マタ……コロ、ス……」

青年の身体から、黒い影のようなものが抜け落ちる。

影は、揺らぎの中へと溶けるように去っていった。

残されたのは、倒れた男と、傷ついた青年のみ。


アルは、青年に急いで近寄り、しゃがみ込む。

青年の顔は血の気を失い、滲んだ血は広がってゆくばかり。


「あ……」

アルは青年の顔を触ろうとしたが、手が震える。

「あ……、そん……な……」

心臓が高鳴り、冷たい汗が頬を伝う。


アルは、通りから近づいてくる声にハッとする。

混乱しながらも、ふらふらとその場から立ち去っていった。



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