第2話:ぬくもりの余白
路地裏に、微かな歪みが静かに揺れている。
普段通りの小さな歪み。
そこに、一人の青年がしゃがみ込んでいた。
歪みに当てられたのだろう。
アルは足を止めると、サングラスをずらし、じっと見つめる。
青年と何かが被って見えた。
アルはその青年に声をかける。
「大丈夫か?」
「あ……はい、ちょっと気分が……」
アルは青年の元へと近づいた。
「そこは、空気もよくねぇ。こっちに来た方がいい」
手を差し出すが、青年はふらふらとして立つこともままならない。
「……ったく、しょうがねぇな」
そう言って青年の腕を引き上げる。
肩を貸しながら、片手で、微かな歪みをそっと握り潰す。
路地裏から出た青年は、少しスッキリした顔をする。
「ありがとうございます」
アルはそばの自販機で水を買い、青年に軽く投げ渡す。
「……気をつけてな」
頭を下げる青年に、アルは軽く息を吐き、じっと見つめる。
そして再び、ネオンの街へ静かに溶けてゆく。
ちらつく雪の中、その足取りは少し重かった。
◇◇◇
アルはいつものように、静かにベンチに腰掛ける。
咥えたタバコの火は消えていた。
彼はいつもの通り隣に腰掛け、そっと紅茶を差し出した。
「珈琲じゃねぇのかよ……」
ぶつぶつ言いながらも、アルは静かに紅茶を受け取る。
口をつけながら、小声で「サンクス」と呟いた。
彼はそれ以上、何もしない、何も言わない。
ただ、二人は海を静かに眺める。
紅茶は甘く、温かかった。
吐く息は白かった。




