9 おそろしい真実
「み…見えてるって…ほんとうに見えてるのかっ!?この、おれの姿がっ!」
ペイズリーが、信じられないという顔でききました。
「うん。見えてるよ。だって、ドイナだって妖精なんでしょ?ドイナを見ることができるなら、ペイズリーを見ることもできるのは、当たり前なんじゃないの?よく知らないけどさ」
ラクラミキオアラの言葉をきいて、ペイズリーとドイナは顔を見合わせました。そして、ドイナが口をひらきました。
「たしかにね、普通は妖精というのは、人間の目では見ることができないものなのよ。でもわたしは、本屋さんで本を読んだりしたかったから、ペイズリーに頼んで、人間にも見ることができるようにしてもらったの。だって、見えない状態でわたしが本屋さんに行って、本を棚からとったら、本だけが宙に浮いて動いてるように見えちゃうでしょ?それじゃお店の人がびっくりしちゃうから、ペイズリーにお願いしたのよ」
「なるほど〜。そうだったんだね。じゃあ、ドイナの姿が見えるのはおかしくないってことね。ペイズリーの姿が見えるのは、どうしてなんだろう」
ラクラミキオアラが口にした疑問に、こんどはペイズリーがこたえました。
「これはおれの推測なんだけど、君の心がめちゃくちゃ綺麗だからじゃないか?むかし、じいちゃんから、きいたことがあるんだ。心がとんでもなく綺麗な人間は、妖精も魔法使いも、目で見ることができる、って」
ペイズリーの言葉をきいて、ラクラミキオアラの顔はたちまち赤くなりました。
「ちょ、ちょっと!!ペイズリー!いきなり、恥ずかしくなるようなこと、言わないでよ!わたし、いっとくけど、全然そんなんじゃないからね!?けっこう腹黒いんだからねっ!?わたしっ!!」
ラクラミキオアラの、とつぜんの「腹黒宣言」に、ペイズリーとドイナは吹き出して大笑いしました。
「分かったよ、分かったから落ち着けよ、ラクラミキオアラ。べつにおれは、君に善人キャラを押しつけてるわけじゃないから、安心してくれよ。アハハハ!」
ペイズリーがそう言うと、ドイナも、
「ラクラミキオアラの腹黒エピソード、ちょっときいてみたいかも〜!」
と言って、にやにや笑いました。
「もうっ!そんなの、ぜったい話さないからねっ!!」
ラクラミキオアラが笑いながらこたえました。そのときペイズリーが、地面に落ちていた何かを拾い上げました。ラクラミキオアラは、それがさっき消えたと思っていたペイズリーの巨大懐中時計が小さくなったものだということに気づきました。今は普通の懐中時計と同じ大きさになっていて、ペイズリーはジレのボタンホールから出ている金属の細いチェーンの先にそれを取り付け、ジレのポケットに入れました。なるほど、普段は普通の懐中時計として使っていて、移動するための円盤として使うときは大きくするわけか、とラクラミキオアラは思いました。しかしラクラミキオアラの頭の中には、疑問がひとつ残っていました。
「ねえ、ペイズリー、ひとつ、きいてもいい?」
「え、なに?」
「さっき、その懐中時計を小さくする前に、いちど、起き上がらせたでしょ?そのあと縮めたよね?どうしていちど、起き上がらせたの?」
「え?君、気になるポイントが独特だね!」
ペイズリーが笑いました。
「わたし、ファンタジーの物語を読むのが大好きなの。だから、そういう細かいポイントは気になっちゃうのよ」
「アハハハ…!そうだったんだね。じゃあ、特別に君にだけ、教えてあげよう。なぜ、円盤をいちど、起き上がらせてから縮めたのか…。その、おそろしい真実を…!!」
ペイズリーは目を見開いて、わざと怖い顔をしてラクラミキオアラの顔を見ました。ラクラミキオアラは身をすくませて、ドキドキしながらペイズリーの次の言葉を待ちました。
「…ただ単に、いま何時か知りたかったからですっ!!」
ラクラミキオアラとドイナは、同時にずっこけてしまいました。




