10 空中キャッチ特訓
「ちょ、ちょっと〜!ペイズリー!それのどこが、おそろしい真実なのよっ!!」
ラクラミキオアラの突っ込みに、ペイズリーは頭をかきながら、
「おそろしいほど、ふつうってこと!アハハハ…」
と言って笑いました。
「ねえ、ペイズリーにひとつ言いたいことがあるんだけど」
ラクラミキオアラがそう言うと、ペイズリーは、
「えっ!?なに?…あ、分かった!…ふふふ。はじめて会った日にいきなり告白だなんて、なかなか大胆だね、ラクラミキオアラ」
と言いました。ラクラミキオアラは"やっぱりこの人、すぐ調子にのる人だ。この人を恋愛対象にすることだけは、天と地がひっくりかえっても、絶対にないわっ!"と強く思いました。
「は?ちょっとペイズリー、何をバカなこと言ってるのよ!なんでわたしが、あなたに告白しなきゃならないのよ。そんなことじゃなくて、あなたの、かっこ悪いところをひとつ、直してあげようかと思って。あなた、ぜんぜん気づいてないみたいだから」
ラクラミキオアラにそう言われたペイズリーは、ぷんぷん怒って、こう言いました。
「お、おいっ!このペイズリー3世さまに向かって、なんてことを言うんだ、君はっ!このペイズリー3世さまに、かっこ悪いところなんて、あるわけないだろっ!」
「いや、普通にあるよ。めちゃくちゃかっこ悪いところ」
「め…めちゃくちゃかっこ悪い…って…」
ペイズリーは苦々しい顔をしましたが、ラクラミキオアラはまったく気にせず、どこがかっこ悪いと思ったのか、説明しました。
「ペイズリーさっき、小さくした懐中時計を地面から拾い上げてたでしょ?あれはダメだよ!!物語に出てくる魔法使いが、あんな夢の無い動きしちゃ、ダメっ!!"よっこいしょ"みたいな」
「ゆ…夢の無い動き…って…」
ペイズリーは思わぬ指摘をされて、再び苦々しい顔をしました。
「え?地面にあるんだから、拾い上げるしか無いだろ。…あ、魔法で浮かせて取れよってこと?」
「違うのよ。一度地面に落ちた時点で、もうダメなのよ。いい?説明するから、よくきいてね。ステッキを振ると、巨大な懐中時計が小さくなるでしょ?そのとき、小さくなった懐中時計を地面じゃなくて、空中に出現させるのよ。それ、できる?」
「できるけど、乗り物として使った後の懐中時計は浮くための魔法が解かれてるから、そのまま地面に落ちちゃうよ。壊れたり傷がついたりしたら嫌だよ」
「だから、空中キャッチするのよ。ステッキをくるっと回す。巨大な懐中時計が小さくなって空中にあるのが見えたその瞬間、片手でパッと、かっこよく取るのよ!当たり前のことをしてるだけです、みたいな顔で!あなた、見た目はそれなりに…いや、ほんの少しは、とってもとってもほんの少しだけど、かっこいいんだから、それくらいやらないとダメだよ」
ラクラミキオアラの説明をきき終えたペイズリーは、ドイナの顔を見ました。ドイナは何も言いませんでしたが、ペイズリーには、"…ってラクラミキオアラは言ってるけど、どう?できそう?"と言っているような表情に見えました。
「それ、練習ができないよね?落としたら壊れて終わりだから…」
ペイズリーが困った顔でそう言うと、ラクラミキオアラは、真剣な顔で、こう言いました。
「もう〜!魔法ばっかりじゃなくて、頭も使わないとダメだよ、ペイズリー!いい?わたしが下で両手を広げて、懐中時計を受け止められるようにしておいてあげるから。だから失敗しても大丈夫!勇気を出してやってみて!男の子でしょっ!」
「なるほど…分かった。じゃあ、やってみる」
ペイズリーはポケットから懐中時計を取り出し、チェーンを外して、まず懐中時計を巨大な大きさに戻しました。
「じゃあ、いくよ?ラクラミキオアラ。失敗したら、ちゃんと受け止めてよ!」
「うん、分かった!わたしを信じてっ!」
ペイズリーは少し緊張した顔で、ステッキのさきっちょを空中で回しました。懐中時計が光につつまれ、ラクラミキオアラが指示したとおり、小さくなって今度は空中に出現しました。
「えいっ!」
ペイズリーはキャッチに失敗して、ラクラミキオアラの手のひらに懐中時計は落ちました。
「ペイズリー、惜しいっ!あと少しで、できるよ!あ、あとね、"えいっ!"とか言っちゃダメ!無言で、すました顔でやらないと意味が無いの!」
そう言われたペイズリーは、ジト〜っとした横目でラクラミキオアラを見ました。"注文が多すぎるだろ…"と言いたそうな顔でした。
「惜しいっ!あと少し!」
「わあっ!さっきより、さらに惜しい!!」
何度も練習を繰り返して、二十三回目のときでした。
バシッ!!
ついに、ペイズリーは空中で、小さくなった懐中時計を片手で華麗につかみ取りました。無表情のままペイズリーは、それをポケットに突っ込みました。
「…いいっ!!さいこうっ!!ペイズリー!!今の表情と、あえて雑に突っ込む感じ!!めちゃくちゃ、かっこ良かった!!!」
苦々しい顔で練習をはじめたペイズリーでしたが、女の子に「さいこう」「めちゃくちゃかっこ良かった」と言われ、さすがに嬉しくなってしまった様子で、鼻の穴を広げて得意気にこう言いました。
「へへんっ!どうだっ!これが、ペイズリー3世さまの、かっこ良さだっ!!君たち、惚れるなよ?おれは女の子にモテモテなんだから、惚れたら大変だぜっ!」
「それは一億パーセント無いから大丈夫!!」
ラクラミキオアラが即答しました。




