7 魔法使いペイズリー
「ちょ…ちょっとお〜。ラクラミキオアラ、びっくりさせないでよ〜」
ドイナがそう言うと、ラクラミキオアラは、
「何言ってるの、ドイナ。おどろいたのは、わたしの方だよ。知り合ったばっかりの女の子が、鳥になったんだから!」
と言い、不思議でたまらないという感じで、立ち上がってドイナの腕や顔をさわりました。
「う〜ん…ほんものの腕だし、ほんものの顔だ!」
とラクラミキオアラは言いました。鳥になったり、人間のすがたに戻ったりしたので、ラクラミキオアラは、ドイナの身体が本当に人間の身体と同じなのか、確認したくなったのです。ラクラミキオアラが顔をペタペタ触ったので、ドイナは、
「キャハ!キャハハハ!ちょ、ちょっと!ラクラミキオアラ!くすぐったいよ〜!」
と言いながら、顔をしかめて、笑いました。顔をしかめているのに笑ってもいるのが面白くて、ラクラミキオアラはとちゅうから、確認するためではなく、ただ単に面白くて楽しいから触っている状態になりました。ラクラミキオアラがやっと満足して触るのをやめると、ドイナは、
「ほんもの…と言っていいのかな。あのね、わたしは妖精なの。だから、人間の身体とまったく同じでは、ないと思う。見た目はそっくりだけどね」
と説明しました。
妖精という言葉をきいて、ファンタジーが大好きなラクラミキオアラの目がさらにキラキラと輝いたのは、言うまでもありません。でも、すぐにラクラミキオアラの頭の中に、心配なことが浮かんできました。
「ねえ、ドイナ。ドイナって鳥の妖精なんだよね?鳥って、人間よりも、生まれてから死んじゃうまでの時間が、短いよね?わたし、せっかくドイナとお友達になれたのに、ドイナが死んじゃったら、やだ!」
ラクラミキオアラは泣きそうな顔になって、そのまま、ついに泣き出してしまいました。その顔を見たら、ドイナはラクラミキオアラのことが可愛くて仕方ない気持ちになりました。ドイナはラクラミキオアラを抱きしめて、
「だいじょうぶだよ。妖精はね、人間よりも長く生きるんだから。安心してね」
と、やさしい笑顔で言いました。ラクラミキオアラは、ひっく、ひっくと、しゃくり上げて泣きながら、
「ほんと?ほんとうに、ほんと?」
とききました。まだ、不安がのこっていたのです。ドイナは、
「ほんとうに、ほんとうだから、安心して」
と言って、抱きしめながらラクラミキオアラの頭をやさしくなでました。ラクラミキオアラはやっと笑顔になって、
「よかった…」
と言いました。それから二人は公園のベンチにならんで座って、大好きな本について、たくさん語り合いました。妖精であるドイナはお金をもっていないはずなのに、なぜ本をもっているのか不思議に思ったラクラミキオアラが「どうやって本を買っているの?」ときくと、ドイナは、くわしく説明しました。
「あのね、わたしは本屋さんでお金をはらって買っているわけじゃないの。ペイズリーっていう魔法使いの男の子に、本を魔法で作ってもらってるんだ。欲しい本があったら、ペイズリーといっしょに本屋さんに行くの。そしてペイズリーに、その本を触ってもらうの。彼は不思議な力をもっているから、触るだけで素材や中身まで、かんぺきに覚えることができるの。そのあと、公園に戻ってきて、彼がいつも持っているステッキのさきっちょを空中でくるくる回すと、ポンって本が出てくるの。でもね、それでわたしが本を手に入れるだけじゃ、なんだか本屋さんにわるいから、いつもペイズリーに二冊出してもらって、一冊はこっそり本屋さんの本棚に置いておくんだ。もちろん、最初にペイズリーが触った本は本屋さんから持ち出すわけじゃないから、本屋さんは一冊分、得してることになるの」
ドイナの説明をきいていたラクラミキオアラの目は、これ以上きらきらさせるのは無理というくらい、きらきらしていました。
「わたしも、魔法使いの男の子に会ってみたいっ!」




