表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
62/63

62 それぞれの物語

 ペイズリー3世とバズムはブランの森の上空を通過し、家々が立ち並ぶラスノフの上空に差し掛かりました。そのころには高度を下げ速度も落として飛行していたので、地上を眺めていたラクラミキオアラは自分の家を通り過ぎてしまったことに気づきました。

「あっ!いま公園が見えた!てことは、わたしのお(うち)、通り過ぎちゃってるよ!」

 ラクラミキオアラの身体は魔法でとても小さくなっているうえ、飛行中で風の音もおおきいので、彼女の声は普通の状態であれば3世の耳に届くはずはありませんでした。しかし3世は三人を魔法で小さくしたときに、声が届くようにする魔法もかけていたので、ラクラミキオアラの声をしっかり聞き取ることができました。

「えっ!?通り過ぎちゃったの?そういえば、ラクラミキオアラの家を空から探すときに目印になるものとか、きいておくの忘れてた!!」

 3世が目を丸くしてそう言うと、ラクラミキオアラも、

「わたしも、言うの忘れてた!!」

 と言って、二人は爆笑しました。ドイナとエレナも一緒になって笑いました。

「上から屋根を見て見つけようとしても、ほとんどの家が同じような赤茶色だから、無理だよ!それに着陸した後、魔法で身体のおおきさを元に戻したりしなきゃいけないでしょ?いきなりお家の前に着陸するより、一度別の場所に降りて、そこからお家に向かう方がいいと思う。昨日待ち合わせた、ラスノフの公園でいいんじゃないかな。あ、昨日って言っても、こっちの世界では"今日"だけどね!」

 ラクラミキオアラはそう言って、笑いました。

「了解っ!!じゃあ、とりあえず少し戻るか…Uターンするよ!」

 ペイズリー3世はそう言って、ゆるやかなカーブを描いてターンしました。バズムもその(あと)を追ってターンしました。

「公園、公園…」

 3世は視線を地上に向け、公園を探しました。

「あっ!あった!あれだよね!」

 3世の人差し指は地上の一点に向けられていました。

「うんっ!あれっ!あの公園っ!」

「よしっ!真っすぐ降下しないで、たくさん円を描く感じで高度を下げていくからね!昔じいちゃんに教わった、螺旋降下(らせんこうか)っていう方法なんだ!」

 3世は説明した通り、いくつもの円を描くように、ゆっくりと降下していきました。うつくしい石畳(いしだたみ)の通りを歩く人たちの姿が、だんだんおおきく見えるようになってきました。肩を寄せ合い、手を繋いで歩く老夫婦。抱っこ(ひも)を使って赤ちゃんを抱きかかえている若い女性。ネクタイをしめて、一人で少し寂しそうに歩いている男性。楽しそうにはしゃぎながら歩く中学生くらいの男の子たち。様々な人たちが同じ空の下で、今という同じ瞬間を生きていました。

"一人ひとりの心の中に、かけがえのない過去、忘れたい過去、悔やんでいる過去、輝いている過去があり、おそれている未来、夢見ている未来、どうしてもつかみたい未来…そして、無限の未来がある。一人ひとりが、それぞれの物語を大切に抱きしめて、いっしょうけんめい生きているんだ"ラクラミキオアラは通りを歩く人たちを眺めながら、そう思いました。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ