61 森の輝き
ペイズリー3世は、小さくなったラクラミキオアラたち三人を手のひらに乗せ、バズムの背中に移動させました。
「落ちないように魔法をかけたから、飛んでいるとき、バズム君にしがみついたりしなくても大丈夫だよ」
「ありがと〜!」
ラクラミキオアラたちは3世にお礼を言いました。3世はジレのポケットから四センチくらいの、小さな棒のようなものを取り出し、
「ヌイェルシャ、イントアルチェ・テ・ラ・トヤグ!」
と呪文を唱えました。すると小さな棒は光につつまれて、光が消えたときには八十センチくらいの杖になっていました。それは祖父であるペイズリー1世から2世へ、2世から3世へと受け継がれてきた、スネークウッドの杖でした。
「この杖は、じいちゃんの魔法のほうきみたいに、またがって飛ぶことができるんだ。もちろん、おれの姿と同じように、普通の人間からは見えない。まあ、たまにラクラミキオアラみたいな、魔法使いの姿が見えてしまうほど純粋な心を持った人がいたりするから、そういう人には見えちゃう可能性もあるけどね」
3世がそう言うとラクラミキオアラは少し顔を赤くして、
「いやいや!言っとくけどわたし、ぜんっぜん純粋じゃないからね!?めちゃくちゃ腹黒いよ!?」
と口を尖らせて言いました。ペイズリーは大笑いしながら、
「本当に腹黒い人は自分でそんなこと言わないよ!純粋っていうのはね、つまり無邪気ってことなんだよ」
と答えました。ラクラミキオアラはジト〜っとした目で3世を見てから視線をそらし、とても小さな声で、
「ふ〜ん…ありがと」
とつぶやきました。
「よし!じゃあ、出発するよ!バズム君、ついて来てね!!」
3世はおおきな声でそう言って杖にまたがりました。杖はまず三メートルくらいの高さまで垂直に浮き上がり、そこからものすごい勢いで空に向かって飛んでいきました。バズムもすぐに翼を力強くはばたかせ、3世の後を追いました。3世の加速がすごかったので、ラクラミキオアラは最初、"バズム君、追いつけるかな!?"と心配になりましたが、バズムも一回はばたくごとに3世の杖に負けないくらいの加速をしたので、一分も経たないうちに追いつくことができました。
空は、よく晴れていました。眼下にひろがるブランの森を見たラクラミキオアラは、心の底から感動しました。太陽に照らされてきらきらと輝く、あの豊かで、うつくしい森。その森をかたちづくっている、あれらの樹の一本一本に、命が宿っている。その森を守っている女王さまが、あんなにも、わたしにやさしくしてくれた。樹の精霊だったエレナさんや、今も樹の精霊であるアデラさん。彼女たちは恋をして、森の樹が雨に打たれるように悩んだり、太陽に照らされて輝く葉のように喜んだり、風に吹かれて揺れる梢のように迷ったり、ときには間違ったりしながら、それでも必死に生きているんだ。そう思うと、涙があふれてきて止まりませんでした。
"雨に打たれているとき、もしかしたら樹は、少し痛いのかも知れない。すごく痛いときも、あるかも知れない。だけど、雨が降らないと生きていけないんだ"
ラクラミキオアラは、青い空の下にひろがるブランの森を見つめながら、そんなことを考えていました。




