58 女王の助言
「そ、それはね、ちょっと事情があってね!たいした事情じゃないんだけど。アハ、アハハハ…!」
ラクラミキオアラは女の子なので、あらゆることを乙女心で感じ、思い、判断して生きているのです。なので、"シャワーを浴びずに寝てしまった"と、男子に対して正直に言うのは、ちょっと嫌だったのです。
「ふ〜ん、そうなんだ。まあ、どうでもいいけどさ」
ペイズリーは特に何も考えずにそう答えたのですが、"どうでもいい"は、乙女に対しては決して使ってはいけない言葉でした。たとえ恋愛感情がなくても、それなりに仲良くしている男子に"どうでもいい"などと言われると、イラっとするのが乙女なのです。
「ちょっと、ペイズリー」
「えっ」
ペイズリーは、急に低音に変わったラクラミキオアラの声をきいて、ぎくりとしました。一瞬で、"ヤバい、地雷を踏んだ"と察したのです。
「"どうでもいい"って何よ!?」
「えっ!?だって、事情を話したくなさそうだったからさ…!」
ペイズリーはアタフタしながら答えました。
「そりゃ確かに話したくないけど、"何かあったの?"とか、ちょっと心配そうな顔で、きいてくれてもいいじゃん。"どうでもいい"とか言わないでよねっ!まったくペイズリーは、乙女心をぜんぜん分かってないんだからっ!」
「えっ?ご、ごめんごめん!!え〜と、じゃあきくけど、何かあったの?」
「言えるわけないでしょ!!」
「え〜!!」
そのときペイズリーの頭に浮かんだのは、"どういうことだよ"という八文字と、大量のクエスチョンマークでした。
「やっぱり話したくないんじゃん!!」
「そうですけど!?何か!?」
そのときペイズリーは思いました。"乙女心とか女心をおれが理解できるようになることは、一生無いかも知れない…!謎過ぎる…!!"
女王ガブリエラやエレナ、アデラも含め、みんなが席について、朝食を食べ始めました。ラクラミキオアラは、女王とアデラが何も食べず水ばかり飲んでいるのを見て、"やっぱり森の女王さまや樹の精霊は、人間が食べるようなものを食べたりしないのかも…"と思いました。
食事が終わりに近づいたころ、ラクラミキオアラは女王に、こう言いました。
「女王さま、ごめんなさい。わたし、この食事が終わったら、お家に帰ろうと思います。向こうの世界とは時間の流れ方が違うから、わたしの家族が心配することは無いっていうのは分かっているんですけど…お母さんやお父さんは、きっと、わたしのために誕生日パーティーの準備をしてくれていると思うんです。それを考えていたら、なんだかソワソワしちゃって、落ち着かないんです。それに…」
「会いたくて仕方ないんでしょう?」
女王が、やさしく微笑みながらききました。
「…はい!」
女王はゆっくりと椅子から立ち上がり、みんなの顔を見回しました。
「みんな…遠いところから、わたしが暮らしているこのお城まで、わざわざ来てくれて、本当にありがとう。執事たちはいつもわたしにやさしくしてくれるけれど、こんな亜空間のおおきなお城で女王として暮らすのは、やっぱりとても寂しくて、孤独なの。だから、みんなが来てくれて本当に嬉しかったし、楽しかったわ。エレナやアデラと再会することもできたし…本当にありがとう。絶対にまた、遊びに来てね」
女王の瞳は涙で潤んでいました。
「また来ても、いいんですかっ!?」
ラクラミキオアラは嬉しそうに、目を輝かせて言いました。
「もちろんよ、ラクラミキオアラ。わたしは森の女王だから、正直言って、人間に対してはいつも警戒心をもっていたわ。人間は、いつまた森を破壊し始めるか分からない。油断しちゃいけない…いつも、そう思いながら生きてきたの。でもね、ラクラミキオアラ…あなたは、そういう悪い人間…森を破壊してお金を儲けることしか考えていないような人間とは、まったく違う。あなたとは昨日初めて会ったばかりだけど、わたしには分かるの。あなたには、さっきペイズリーと話していたときのような小悪魔的な一面もあるけれど、本当はとても真っすぐな心をもっている女の子だわ。辛いときでも、決して笑顔を忘れない。そしてその明るい笑顔で、周りの人達を笑顔にしていく。あなたは、太陽そのものよ、ラクラミキオアラ。みんなを明るく照らして、みんなの心を温かく包みこむ、太陽そのものよ」
女王の言葉をきいたラクラミキオアラの瞳にも、涙が輝いていました。
「ありがとうございます…。あの、わたし…小悪魔的なところは、なるべく直すようにします…!」
ラクラミキオアラがそう言うと、女王は少し慌てた表情になりました。
「それはダメよ!ラクラミキオアラ!直しちゃダメ!」
「えっ!?」
ラクラミキオアラは、きょとんとした顔になりました。
「小悪魔的なところは、あなたのおおきな魅力よ!それを直すなんて、もったいないこと、絶対しちゃダメよ!!小悪魔的な女の子って、モテるのよ!?」
まさか森の女王がそんなことを言い出すとは思っていなかったのでラクラミキオアラは驚きましたが、その言葉をきいて、女王ガブリエラのことが前よりもっと大好きになりました。
「女王さま、ありがとうございますっ!!わたし、これからも小悪魔路線でガンガン攻めます!!」
「その意気よっ!ラクラミキオアラ!」
女王は笑いながら言いました。




