51 六枚の壁
ペイズリー3世は右の手のひらを、さっき作った長方形のバリアに向け、
「ズドゥレ、インムルツェシュテ・テ・イン・シャセ!!」
と叫びました。すると、バチバチとものすごい音がして、バリアから放たれている稲妻のような光の激しさが増しました。次の瞬間、五つのおおきな丸い光がバリアから放たれました。それらは空中に浮遊してから一秒の半分も経たないうちに正方形に変形しました。それと同時に、最初に3世が作ったバリアも長方形から正方形に変形しました。その時点で、3世が呪文を唱えてから三秒も経っていませんでした。全ての変化が、ものすごい速さで起きたのです。
「ズィドゥリ・デ・シャセ、ズブラツィ!」
3世はそう叫んで、空に向けて真っすぐ伸ばしていた右腕を、勢いよく振り下ろしました。すると、稲妻のような光を放つ六枚の正方形の壁が、東の魔女に向かって、すさまじい速さで飛んでいきました。バチバチと激しい音をたてながら、彗星のように光の尾を伸ばし、魔女に向かって突き進む六枚の光る壁を見たラクラミキオアラは、
「ひえ〜っ!ペイズリー、ただの子供じゃないわ、やっぱり!」
と言いました。ドイナも、
「あんな子供が学校にたくさんいたら、一日もたずに学校、破壊されるね…」
と言ってドン引きしていました。
魔女に接近すると、六枚の壁は電光石火の速さで上下左右に分かれ、東の魔女を囲む陣形になりました。このままだと立方体の中に閉じ込められると気づいた東の魔女は、両腕を左右に振りながら、同時に上下にも激しく振りました。すると泉の底の光る石が、またしても大量に跳ね上がり、魔女を守ろうとするかのように、魔女と壁の間に割り込みました。しかしペイズリー3世が作った壁から放たれる稲妻のような光の威力はすさまじく、割り込んだ石を全て粉々に砕いてしまいました。その次の瞬間、稲妻が全て消えたかと思うと、六枚の壁は一斉に魔女の方にすばやく動きました。その動きは完璧に構築された精密機械のように正確で、迅速でした。東の魔女は一瞬で、六枚の壁によって作られた立方体の中に閉じ込められてしまったのです。
ペイズリー3世は、右腕を高く上げ、手招きするような動きを見せました。すると魔女を閉じ込めた箱は、ゆっくりと泉の上からペイズリーがいる砂地の方へと、動き始めました。浮遊しながら移動する箱を見ながらラクラミキオアラは、
「ペイズリー!!すごいね!!閉じ込めたの?」
と3世に向かって叫びました。
「うん!マンチキンの人達を奴隷にしていたわけだから、ちゃんと罪を償わせないと!魔界裁判所に引き渡そう!」
と言いました。
「ま、魔界裁判所って…そんなのあるの!?」
ラクラミキオアラが目を丸くして、小さな声でドイナにききました。
「わたしにきかれても困るよ!わたし、ただの鳥の妖精だよ!?」
「た…ただの、って!十分、レアな存在だよっ!!」
ラクラミキオアラがツッコミを入れると、ドイナは笑いました。
「ねえ、裁判にかけられた後、どうなるのかな?東の魔女さん」
ラクラミキオアラにそうきかれたドイナは小首をかしげて、
「う〜ん…わたしもよく分からないけど…判決が死刑じゃなければ多分、牢屋に入れられるんじゃない?本屋さんで見た『ブレーメンの音楽隊』の絵本に、そういう場面があったもん。泥棒が警察に捕まって、牢屋に入れられるの。元になったグリム童話の方には、そんな場面は無いんだけどね」
と答えました。
「なるほど…牢屋ね…。あっ!でもさ、東の魔女って、魔女なわけだから、魔法使えるでしょ?魔法で牢屋から逃げたりしないかな?」
「分からないけど…きっと今、ペイズリーがやってるみたいに、相手より強力な魔法で閉じ込めれば大丈夫なんじゃない?」
「でもさ、魔女が牢屋の中で修行して、もっと強力な魔法を身につけちゃったら…まずいよね」
「牢屋の中で修行なんて、できるかな?」
「腕立て伏せなら、できるよ!あと、腹筋!」
「……。えっと…腕立て伏せと腹筋で、魔法の力が高まるものなの?」
「…それは私にも分かりませんっ!」
そんな会話をしているうちに、東の魔女を閉じ込めた立方体は、砂地の上まで移動して、ゆっくりと砂地の上に下ろされました。




