5 ドイナとの出会い
本屋さんに着いたラクラミキオアラは、本棚に並んだたくさんの本の背表紙を、ながめていました。本には、ひとつひとつ、タイトルがつけられています。それを順番に見ているだけで、いろんな想像がふくらんで、楽しいのです。
ラクラミキオアラは本棚に並んだ本のなかの一冊に目をとめ、本屋さんが背のひくい子供のために置いている台のうえに乗り、手を伸ばしました。背表紙のてっぺんに人差し指をかけようとしたとき、横から同じ本に向って誰かの指が伸ばされました。おどろいたラクラミキオアラは、ぱっと指を引っこめました。
「あっ…ごめんなさい」
そこにいたのは、ラクラミキオアラと同じくらいの背たけで、年齢も同じくらいに見える、可愛らしい女の子でした。その子がごめんなさいと謝ったので、ラクラミキオアラはあわてて、
「こちらこそ、ごめんなさい。この本、ほんとうは私、もう、もってるの。おうちにあるんだけど、大好きだから、本屋さんにもあるのを見ると、つい読みたくなっちゃうの」
と言いました。
二人が同時に指を伸ばしたその本は、デンマークのハンス・クリスチャン・アンデルセンという人が書いて1837年に発表した『人魚姫』という本でした。ラクラミキオアラはあまりにもその本が好きで、アンデルセンという人がどんな人なのか、学校の先生にきいたことがありました。本にもすこし、書いた人について紹介している文がのっていましたが、もっとくわしく知りたいと思ったのです。
先生は、アンデルセンがとても貧しい家で育って、たいへんな苦労をした人であると教えてくれました。それを知って、ラクラミキオアラはますます『人魚姫』という本が大好きになりました。とてもつらい思いをしている人が、きらきらしたお話を書くなんて、なんて格好いいんだろう、なんて素敵なんだろうと思ったのです。
「…そうなの?私も…同じ。私も、もってるんだけど、ここに来るとつい、読みたくなっちゃうの」
ラクラミキオアラに謝ってきた女の子は、少し恥ずかしそうに言いました。そして、にっこり笑って、
「わたし、ドイナ。よろしくね」
と言ってラクラミキオアラに手を差し出しました。ラクラミキオアラは少しびっくりしましたが、すぐに手を伸ばして、握手しました。
「わたし、ラクラミキオアラ。よろしくね」
握手をしたとき、ラクラミキオアラは、ドイナとすごく仲良くなれるような予感がしました。




