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4 大好きなもの

 つぎの日は日曜日で学校がお休みだったので、ラクラミキオアラは朝ごはんを食べ終えると、さっそくボロ(ふう)の、つぎはぎだらけの服を着て、散歩(さんぽ)に出かける準備(じゅんび)をしました。


 朝ごはんを食べ終えてから着がえたのは、つぎはぎの服が、いまや、もっている洋服の中でも一番(いちばん)のお気に入りになっていたからです。いくらボロのように作られている服だからと言っても、やっぱりチョルバ(※ルーマニアの伝統的なスープ)のしみ(・・)がついたりしたら、立ち(なお)れないくらいの大ショックを受けてしまうとラクラミキオアラは思いました。ぜんたい(てき)に汚いのは素敵(すてき)だけど、作りたてなのに、一箇所(いっかしょ)だけしみ(・・)がついているのは、なんか(いや)だなあとラクラミキオアラは思ったのです。


「いってきまーす!」

 ラクラミキオアラはお母さんに向かって元気にそう言って、外に出ました。よく()れていて、とても気持ちのいい朝でした。お母さんが作ってくれたつぎはぎの服は、夏のはじめのやさしい風に吹かれて、ふんわりふわりとなびいていました。


 つぎはぎの服は、ワンピースとよばれる種類(しゅるい)の服で、上と下に分かれていません。それだけ着ていれば、出かけられるのです。その(てん)もラクラミキオアラは、とっても気に入っていました。らくちんだし、ほかの洋服のふんいきが()ざらないので、完全(かんぜん)に、モモになった気分にひたれるからです。だけどラクラミキオアラはどんなときでも、自分は自分なのだという気持ちも、ちゃんともっていました。そのうえで、モモになった気分にひたるのを楽しんでいたのです。


 まずはじめにラクラミキオアラは、ラスノフの(まち)にある本屋(ほんや)さんに行きました。物語を読むのが大好きなラクラミキオアラは、本屋さんが大好きです。もちろん、長い時間、立ち読みをしたりはしません。お店の迷惑(めいわく)にならないように、気になった本だけを手にとって、すこし読んでみて、これはわたしの好きな感じだ、とか、挿絵(さしえ)がとっても可愛い本だ、とか思うのです。そして、どうしても欲しくなった本があると、おうちでお母さんのお手伝(てつだ)いをたくさんして、ひと月に一冊(いっさつ)くらいは、買ってもらえることになるのです。


 お母さんは、ラクラミキオアラにいろんなものをたくさん買い与えたりはしません。ぜいたくをさせるのは、良くないと思っているのです。がんばって、やっと買ってもらえた(もの)なら、大切(たいせつ)にしてくれるだろうと、お母さんは思っていました。そしてラクラミキオアラはお母さんが期待(きたい)した通り、買ってもらった本を、それはそれは、とても大事(だいじ)にしていました。


 汚れた手で本にさわることは、まず、ありません。読む前には手を(あら)って、手がしっかり(かわ)いてから本にふれるようにしていました。お母さんはそれを見て、この子はいったい、どれだけ本が大好きなのだろうと、びっくりしていました。


 ラクラミキオアラはよくお母さんに、「わたしは、おもちゃはいらないから、そのかわり、たまに本を買ってね」とおねがいしていました。そのあと必ずラクラミキオアラは、「お手伝い、ちゃんとするから」と、つけくわえて、言っていました。お母さんは、そんなラクラミキオアラのことを、とてもとても、(あい)していました。

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