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3 素敵なボロ

 『モモ』という物語を読んでから、モモに興味(きょうみ)しんしんになったラクラミキオアラは、いつもは(いや)だけど、たまにはモモみたいな(ふく)を着て、散歩をしてみたいと思うようになりました。つまり、ボロを着てみたくなったのです。ラクラミキオアラが想像したボロというのは、ぜんたい的にうす汚れていて、あちこち(あな)があいていたり、あちこちから糸が飛び出ていたりするような服でした。


 ラクラミキオアラは、キッチンでとんとん音をたてながらにんじんを切っていたお母さんのエプロンの(すそ)を二回引っ張って、

「おかあさん、ボロがほしい」

 と言いました。はじめ、お母さんはラクラミキオアラが何を言っているのか分からず、

「え?なあに?ぼろ?」

 と、ききました。ラクラミキオアラは、

「うん。ボロ。ぼろっちい、お洋服(ようふく)

 と説明(せつめい)しました。お母さんはびっくりして、

「ラクラミキオアラ。なんで、そんなものが欲しいの?きれいなお洋服の方が、いいんじゃない?」

 とききました。ラクラミキオアラは、

「それじゃ、だめなの。きれいなのと、ふつうなのは、もうもってる。ボロだけは、もってない」

 と言いました。お母さんは、相変(あいか)わらず、さっぱり分からないという顔をしていました。困ったお母さんは、とりあえず、

「どうしてもボロが欲しいなら、同じやつを、ずっと着続(きつづ)けていたら、そのうち、ボロになるよ」

 と、ラクラミキオアラに教えてあげました。

「でも、ちゃんと(あら)わないとだめよ。くさくなっちゃうからね」

 とお母さんがつけ足して言うと、ラクラミキオアラは、

(あら)ったら、きれいになっちゃうから、だめ」

 と言いました。お母さんはいよいよ困って、

「なんで、ボロが欲しくなったの?」

 とききました。ラクラミキオアラは、

「モモといっしょだから」

 と言いました。そして、モモというのは、おじいちゃんに買ってもらった本に出てくる女の子だということを、説明(せつめい)しました。お母さんは笑って、

「ああ、そういうことだったのね。そのお話は、お母さんも子供のころに読んだわよ」

 と言いました。お母さんが分かってくれたので、ラクラミキオアラはとても(うれ)しそうな顔になりました。

「じゃあね、お母さんが、作ってあげる。洗っても、ボロみたいなふんいきがあって、しかも、可愛(かわい)いお洋服を」

 お母さんはそう言って、その日の夜から、三日(みっか)ほどかけて、ラクラミキオアラのために特別(とくべつ)洋服(ようふく)を作りました。


 完成した洋服を見て、ラクラミキオアラは大喜(おおよろこ)びしました。それは、いろんな小さい(ぬの)を、(あな)を隠すために()いつけたように見える洋服なのですが、本当は穴はあいていないのです。ひとつひとつの小さい当て布は、わざと目立つ色の糸で、わざと少し雑に縫いつけてありました。それが、かえってとってもおしゃれに見えるのです。おしゃれなのに、モモみたいなボロにも見えるので、ラクラミキオアラは大喜(おおよろこ)びしました。その日の夜は、その洋服をぎゅっと抱きしめたまま、ベッドにもぐって寝ました。明日はこの素敵(すてき)なボロを着て散歩をしよう、とラクラミキオアラは考えながら、(ねむ)りにおちました。

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