2 冒険したい!
ラクラミキオアラはある日おじいちゃんに、
「このおうち、もっと、ふんわり軽く、できないかなあ」
と言いました。おじいちゃんは笑って、
「ほほほ。ラクラミキオアラ、それは、さすがに無理じゃよ。喜ばせてあげたいけれど、できなくて、すまないね」
と言いました。ラクラミキオアラは、しょんぼりした顔になりました。おじいちゃんはその顔を見て、胸がとても痛みました。おじいちゃんはラクラミキオアラのことをとても大切に思っていたので、残念そうな顔を見るのは辛いことだったのです。
なんとかしてラクラミキオアラを喜ばせてあげたいと思ったおじいちゃんは、ラスノフの町にある本屋さんで、一冊の本を買ってきました。それは、ドイツの作家ミヒャエル・エンデが書いた『モモ』という物語の本でした。その物語の主人公は、人の話をきくことで、その人を幸せにする、不思議な力をもった女の子、モモです。モモの年齢は、「まだ八つくらいなのか、それとも十二くらいになるのか、けんとうもつきません」と書いてあるだけなので、読んでも分かりませんでした。服はボロで、髪はくしゃくしゃと書いてありました。
ラクラミキオアラは、読んでいくうちに、これまでに読んできた物語の主人公たち、ドロシーやアリスとはまったく違うモモに、興味しんしんになりました。どんどん、ひかれていったのです。『オズの魔法使い』のドロシーや『不思議の国のアリス』のアリスは、自分に近いような気がして、自分と重ねながら読むことができたのですが、モモは、自分とは違う、不思議な、謎めいた女の子だとラクラミキオアラは思いました。そして、ドロシーやアリスとはまったく違うモモのことが、ドロシーやアリスと同じくらい大好きになりました。ラクラミキオアラはおじいちゃんに、「おじいちゃん、この本、とってもとっても面白い!ありがとう!」と、お礼を言いました。おじいちゃんは笑顔になったラクラミキオアラを見て、とても嬉しく思いました。おうちを軽くすることができなかったおじいちゃんは、ラクラミキオアラのしょんぼりした顔をいつも思い出して、ラクラミキオアラよりもしょんぼりした気持ちになっていたのです。だから、おじいちゃんは、『モモ』という物語を書いてくれたミヒャエル・エンデに、心の中で「ありがとう」と何度もお礼を言いました。
ラクラミキオアラは、モモという新しい友達ができたことで、毎日が前よりも楽しくなりました。自分の部屋の机のうえにラクラミキオアラは『モモ』『オズの魔法使い』『不思議の国のアリス』などの本を並べていたのですが、少しさみしい気持ちになったときは、本をひらけば、いつでも、そこにいる友達に会うことができたからです。みんなそれぞれ性格がちがうのですが、ラクラミキオアラは、一人のこらず、みんな大好きでした。
本の中にいるラクラミキオアラの友達は、みんな、不思議な冒険をしていました。だから、ラクラミキオアラも、冒険がしたくてたまりませんでした。『モモ』を読んでいるあいだは、そのことに夢中になっているし、自分も冒険している気分になるので、「冒険がしたい」という気持ちは出てこないのですが、読み終わると、「ああ、やっぱり私も、冒険したい!」と思ってしまうのです。でも、あんまりそれを言うと、またおじいちゃんが気にしてしまうので、顔には出さないようにしていました。




