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35 星の輝き

「女王さま!星のようなものがたくさん輝いていますけど、あれは何ですか?星ですか?」

 ラクラミキオアラがガブリエラの顔を見て、ききました。

「それが物語よ。わたしがこの宝石箱に本を入れると、その宇宙空間のような暗闇に吸い込まれて、輝く星のようになるの。この宝石箱は、わたしの祖母である先々代の女王コドルツァが、ラドゥという天才的な魔法工芸職人に命じて作らせたものなのよ。それをわたしの母が受け継ぎ、母からわたしが受け継いだ。つまり、わたしは三人目の所有者なの。祖母も母も、長い歳月のあいだに、たくさんの本をこの宝石箱に入れてきたのよ。あの無数(むすう)の星の輝きは、数え切れないほどの物語の輝きなの。ひとつひとつの物語には、それぞれの作者が、必死に生きる中で味わった喜び、悲しみ、悔しさ、誰かを愛する気持ち…そういう全ての想いが込められているの。届けたい想い、届かなかった想い、想いが届いたときの喜び…物語の中では、全てが輝きなの。だけどね、ラクラミキオアラ。同じ夜空の星を見上げても、"わあ、きれい!"って言う人もいれば、何も感じない人、そもそも夜空を見上げない人だって、いるでしょう?物語も、同じなの。全ての人を感動させる物語なんて、ひとつも存在しない。ある人にとっては最高の物語であっても、ある人にとってはくだらない物語だったりするの。だからこそ物語は素敵なんだって、わたしは思ってる。心の底から大好きになった物語はね、親友そのものよ。しかもそれは、いつも静かに、一番近くにいて、自分を見守ってくれる親友なの。苦しいときには励ましてくれるし、寂しいときには抱きしめてくれる…温かい親友なの。なぜ、物語がそんな存在になれるのか、分かる?それはね、人間が作ったからよ。不器用で、失敗することもある。ときには罪を犯してしまうことすらある。生きるというのは、とても大変なことよね、ラクラミキオアラ…。それは、ひとつずつ、いろんなものを失い続けていくということ。人間は生きていく中で、いろんなことを諦めなければいけないわ。諦めたくなくても、諦めなければいけなくなるの。それでも物語を書く人間には、共通して言えることが、ひとつだけあるわ。それは、誰かに、何かを伝えたいという想いだけは、まだ捨てていないということ。自分以外の全ての人に対して"どうでもいい"と思ってしまった人は、物語なんて書かない。全てを諦めてしまった人に、物語は書けないの。たとえ一人だけでも、何かを伝えたい相手がいれば、書ける。それが物語なのよ、ラクラミキオアラ…」


 ラクラミキオアラは、暗闇の中できらきらと輝く、数え切れないほどの物語の星を見つめながら、森の女王ガブリエラの言葉をきいていました。きき終えたラクラミキオアラは、同じように宝石箱の中を覗き込んでいたドロシー、モモ、ドイナの顔を見ました。彼女たちの間から首を突っ込んで「お、おれにも見せてよ〜!」と言っていたペイズリー3世の顔も見ました。そのとき、ラクラミキオアラは思いました。一人ひとりが、みんな、きらきら輝く星なのだと。わたしが大好きなこの星たちの、輝きを、笑顔を、守るために生きていきたい。ラクラミキオアラはそう、思いました。

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