34 開けられた物語の宝石箱
「あら、ごめんなさい。わたくしとしたことが、うっかりしていましたわッ!モモちゃんたちに会わせることばかり考えて、あなたたちに『物語の宝石箱』の実物を見せることを忘れてしまうなんてッ!見たいに決まってますわよね!!」
女王の言葉をきいたラクラミキオアラとドイナは、
「はいっ!!見たいですっ!!」
と、同時に言いました。
「よろしいっ!それでは、ご案内致しますわッ!」
女王がそう言ってくるりと背中を向け歩き始めたので、ラクラミキオアラとドイナも、後ろからついていきました。ペイズリー3世があわてた様子で「あの、女王さまっ!!おれたちも、見ていいですかっ!?」ときくと、女王は背中を向けたまま「もちろんですわッ!!」とおおきな声で言いました。
女王とラクラミキオアラたちは、大広間を出て長い廊下を真っすぐ進み、エントランスホールから階段上がって二階へ上がりました。そして再び長い廊下を進み、一番奥にある部屋の扉の前で女王ガブリエラは足を止めました。
「ここですわ」
そう言って女王はラクラミキオアラたちの顔を見ました。女王の横にいた執事が扉を開け、
「さあ、みなさん。先にお入り下さい」
と女王が言いました。ラクラミキオアラはドキドキしながら、足を踏み入れました。その部屋に敷かれている絨毯は、大広間の真紅の絨毯とは違うもので、色がミッドナイトブルーでした。部屋は大広間よりもずっと狭く、でも自宅のラクラミキオアラの部屋よりは広い…8メートル四方くらいでした。
その部屋の中央に、うつくしい彫刻が施されたウォルナットのおおきなテーブルが置かれていました。天板は単純な長方形ではなく、流れるような曲線を描いており、尖っている部分が全く見当たりませんでした。それは脚の部分も同じで、脚先は猫足のデザインになっていました。
そのテーブルの上に、『物語の宝石箱』は置かれていました。大きさは横幅が 1.5 メートル、奥行きと高さが1メートルくらいに見えました。杢目がうつくしい赤褐色の分厚い木材と、彫刻が施された銀の縁取りが醸し出す重厚な雰囲気は、まさに物語の世界から飛び出てきたもののようで、ラクラミキオアラたちは思わず歓声を上げました。
「わ〜!!!想像していた通り!!!すごい!!!」
ラクラミキオアラが興奮しながらそう言うと、ペイズリー3世も、
「宝石箱っていうか、大きさも見た目も、完全に"宝箱"だな、これは!片目のウィリーが海賊船インフェルノ号の部屋に置いてたやつだよ、これ!」
と言って目を輝かせました。
「ペイズリー、それ『グーニーズ』よね?あなた、どこでそんな映画を観たのよ!?魔法使いなのに!」
ラクラミキオアラが驚いてきくと、ペイズリーは、
「それは秘密だよ!」
と言って笑いました。
『物語の宝石箱』の鍵穴に、女王ガブリエラが鍵を挿し込み、回しました。がちゃりと重い音がしました。
「じゃあ、開けるわよ」
女王はそう言って、宝石箱の重いふたを両手で持ち上げ、開けました。ラクラミキオアラたちは歩み寄り、中を覗き込みました。かぎりなく黒にちかいミッドナイトブルーの闇の中に、きらきらと星のようなものがたくさん輝いていました。その様は、まさに夜空そのものでした。




