29 罪の告白
「女王さま、わたしは、自分の犯した罪を、告白しなければなりません」
アデラがガブリエラに向かって、涙を流しながら言いました。その目は後悔と自分を責める気持ちに満ちていましたが、ガブリエラとエレナには、とても澄んだ、きれいな目に見えました。それはきっと、アデラが本当に、心の底から後悔し、反省していたからでしょう。
「わたしは、幼いころからの友達であるエレナに嫉妬をして、あろうことか、弓矢で彼女を狙ってしまったのです。この罪は、どんな償いをしても、ゆるされるものではありません。わたしは、どんな罰でも、うけるつもりです」
アデラは涙を流してはいましたが、その目は決して弱々しくありませんでした。むしろ、揺るぎない意志を感じさせる、とても強い目をしていました。
アデラの告白を聴き終えた女王は、何も言わずに右腕をゆっくりと肩の高さまで上げて、真っすぐ伸ばしました。そして、手のひらを開いて、アデラに向けました。それは女王が魔法を使うときにする動作であることを、エレナは知っていました。森の女王であるガブリエラが使う魔法は、本職の魔法使いが使う魔法よりもはるかに強力で、その気になれば町をひとつ吹き飛ばして消滅させることもできるのだと、エレナは精霊の友達からきいたことがありました。
女王が本気でアデラに重い罰を与えようとしている、もしかしたら殺されてしまうかも知れないと思ったエレナは、女王とアデラの間に割って入り、両腕をひろげて立ちはだかりました。とても気が小さくて、川に入ることすら怖がっていた幼年時代のエレナを知っているアデラは、とても驚きました。しかしアデラは、女王の前に立ちはだかったエレナの脚がふるえているのを見て、今のエレナもあの頃と同じ、気が小さいままのエレナなんだと気づきました。それなのに自分のために勇気をふりしぼってくれたのだと理解した瞬間から、アデラは涙があふれて止まらなくなりました。
「女王さま。アデラを罰する代わりに、わたしを罰して下さい。最初に人間の男性に恋をして、一緒になるために森を出ることを許可してもらったという前例を作ってしまったのは、この、わたしです。その前例があるのに、自分は許可してもらえなかったから、アデラは女王さまや、わたしを憎むようになってしまったのです。女王さまは、アデラの想い人が悪い人であることを、見抜いていらっしゃいました。だから女王さまも、もちろん悪くはありません。アデラも、悪くありません。悪いのは、わたしです」
女王に向かってそう言ったエレナの目は、罪の告白をしたアデラの目と同じように、うつくしく、澄みきっていました。




